#1 僕らはいつか自分のなかに何かを見つける
「そうさ、もう、何かのためになんか働かないんだ。」
そう言って、マシューは仕事を辞めた。電話1本で。
あんなに将来を不安がっていたのに。いきなり。
「まだ何にも、本当に何にもやってないことに気づいたんだよ。でもさ、感動したいっていうのは、まだこの地球を楽しみたいってことになっちゃうのかな。地球というか、一応、目に見えるところの世界ってことだけど。」
感動したいって・・・
「ああ、そうだね、日常じゃなくて。
単なる刺激が欲しいんじゃなくて、本当に心から、魂から、身体ごと感動したいよね、たっくさん。僕もそうしたい・・・」
「お金のために働いちゃったな。もう、そんなことしたくないんだ。
病気になるのは、身体がもう無理したくないよって言ってるからだよ。
心が誤作動するのは、魂が、その生き方違うよって言ってるからだよ。
やりたくないこと、嫌なことはもうやるの止めようよ。
もう、何も心配なんかするもんか。可能性は無限大だぜ。」
「そうだ。行けよ。どこまでも行きたいところへ。
マシュー。行けばいいさ。明日死んでも後悔しない人生を生きるべきだよ。」
「お前は臆病だから、ずっと引きこもってウダウダしてろ。ここだって思えるどこかにたどり着いたら手紙でも書くよ。メールやLINEじゃないぜ。手紙を出すよ。」
「マシュー・・・。僕は臆病なんか卒業するんだ。
いつか、マシューをびっくりさせるよ。
僕はもう臆病な引きこもりじゃないんだ。
もっと自分を真っ当に愛することに決めたんだ。」
「それじゃ。もう行くよ。
お前も楽しい人生を生きろよ。
後悔なんかするなよ。
何も心配はいらない。信じろ。ただ信じればいいのさ。」
それから、その日はあまりにも夕焼けが赤かったよ。
あんなに青かった空が。
マシューの好きなオレンジに輝いてから
真っ赤に染まったよ。
マシュー、今はどうしてる?
まだ、ここだって思える場所にたどりついてないの?
旅をしていても幸せ感じてるなら、それでいい。
手紙は書かなくてもいいよ。
信じてる。マシューの幸せを。
そして、僕は僕自身をも。
信じれば、そうなるんだよね。
マシュー。