生き直す わたしのおじさん
나의 아저씨(邦題:マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~)を見返した。
※ネタバレ注意です⚠️
昨日の夕方から今日の昼間までに一気見で。我ながら미친 놈と思いながら、このタイミングで見なきゃいけないと感じた。
ちなみに昨日の朝から昼まで、辻仁成とコンジヨンの共作かつ原作の愛のあとにくるもの(사랑 후에 오는 것들)を一気見して、韓国ドラマを摂取したくなったのもある。このドラマについては、また別で思っていることがあるけど、書くまで覚えていられるかな...という感じです。
それはそうとこのドラマですが韓国では2018年の3月からtvNで放送され、
私の記憶では日本ではその年の肌寒い季節にMnetにて放送が開始された。2018年当時は、実家でスカパーを契約していたため、帰省するたびに録画したわたしのおじさんを視聴していた。その当時は、マイ・ディア・ミスターというタイトルではなかったと思う。ただの私のおじさん。
2018年の私は、修士課程2年で就職先は決まっているけど、修士論文のデータ分析と本文執筆、実習に終われる毎日だった。朝9時に大学に行き、17時まで実習や研究、それらがない日は論文執筆をそ、18時からは院の授業に出席して、夜間の授業が終わったのち、同期や教授たちとの食事(という名の飲み会)で家に着くのは0時を回った頃。
日々の気分転換は、合間に聞くBTSのアルバム(LOVE YOURSELF結 ‘ANSWER')と、息抜きに遊びに行く新大久保での韓国料理とタピオカ、そして喫茶店での喫煙。
修士論文指導の叱責が続き、修正の繰り返し、自分のアイデンティティとなるもの、簡単にひとに言及されたくない核となることに口を出され続ける日々で疲れ果てていた。ご飯も喉を通らず、どんどん痩けていく。元々痩せ型ではないし、太ってる方だから倒れないだけで、どんどん思考力は落ちていくし、ズボンのウエストが緩くなってずっこけて、ブラウスもブカブカになっていた。元々の骨太の骨が見えてて、同期にはよくいじられていて日々。
自分の毎日がしんどくて、他者に温かい言葉をかけたり、気遣う態度を取りたくてもできなくて、もどかしさを感じていた。それでも、見守ってくれる人がいたのに、それすらも見ないふりをしていたような気がする。
そんな時に視聴し始めた私のおじさん。
1度目に視聴した時は、
IU演じるイジアンの日々の生活や生い立ちがとてもしんどく食いしばって生きているもので、心にずんと重いものが残ることや、
イソンギュンさんが演じるパクドンフン(おじさん)がとても温かい人であり、口数も少ない故に家庭や会社で起きることに対して、目に見えるように怒らず悲しまず喜ばず、こころを動かさないように生きていること、ただ毎日進んでいくだけ、という仮面を被った生活を親しい人に囲まれた中でも送っていく、言葉にならない、生きづらさを毎週見ること、
また彼らの周りにいる悪意を持った人々によって引き起こされる暴力や暴言、ひどい態度で
どきどきハラハラして毎週毎週なにか足枷をつけている気分で見続けていた。
イジアンは精神的金銭的苦しさや過去の経験によるトラウマから出会う人々に対して無礼な態度を取ったり、周囲と協調して必要以上の波風を立てずに日々交流するような行動や言動を取っていたけど、
おじさんの情の深さ、優しさ、あたたかさ、懐の大きさ、彼の周りにいる情のある人々との関わりにより、なにより自分に対して見捨てず粗を探さずあたたかい視線や注意を向け続けてくれる存在があることで、彼女の凍ったこころや体が徐々に解れてゆき、辛い過去は過去でしかなく、今後幸せに生きていこうと生き直していくストーリーになっていったため、ただしんどく辛いドラマ視聴ではなく、自分自身もおじさんに癒されていく日々になった。
そして、わたしの人生ドラマの1つになった。
その後、NetflixやAmazonプライムでの配信が始まり、2020年3月頃からコロナで自粛生活のために仕事以外の時間は家の中で過ごすことが増え、生身で会う人間関係の希薄さや地元生活への懐かしさをとても感じる数年間となった。その間、何度も私のおじさんを視聴し、今回視聴するまでに5〜6回は見返したと思う。その都度、お気に入りのシーンを見返し、おじさんの言葉を盗聴しているアプリから聞くイジアンの気持ちのように、励まされたり、おじさんの足音や息の音で生きている感覚を再認識したりした。
コロナも収束してドラマを見返すことも減り、職場のパワハラや仕事量で悩み、休職しようかと精神科の受診に備えていた昨年、2023年の12月27日におじさん役のイソンギュンさんの訃報がニュースで届いた。奇しくも、イソンギュンさんの大ファンである妹の誕生日だった。
自分が何度も頑張って生きようと、しんどいけどそれだけではない、日々救われる人との交流があると再認識し、演技力の高さからドラマや映画で非日常へ連れて行ってくれる俳優の自死による逝去は痛く衝撃だった。必ずしも、努力や我慢で生き続けることができる世の中ではないこと、この社会の冷たさを感じたようだった。
彼が出ている作品で見たいものはいくつもあったけど、その訃報の次の日から休職していたし、抑うつ気分と体のだるさでテレビは見れないし、字幕を追うことも韓国語を聞き取ることもできなかったから韓国ドラマから離れていた。
最近は復職や転職を具体的に考えはじめ、仕事生活だけではなくこれまでの人生を振り返ってジャーナリングをしたりする中で、
心の機微や生活、人間の描写が細かくされている作品を見たくなった。新しく作品を見るよりも、確実にストーリーを知っている作品で台詞を改めて咀嚼し直したかった。
改めて見直すと、忘れているシーンや細かい伏線などもあったが、過去に見た時よりもそれぞれの立場を理解したり感情を感じることになった。
その中で1番衝撃的だったのは、以前はイジアンの立場から見ることが多かったが、今回はおじさん、パクドンフンに感情移入することが多かった。おじさんの立場を理解して、感情を追体験する、というよりも、自然に引き込まれていくような。
大きい違いとしては、以前は学生で周囲には皆同じような学歴かつ立場、また気が合う人と関わってばかりいた。今回は、社会人生活と仕事を経て、色んな経歴や背景がそれぞれある中で、それぞれの苦しみや地獄があること、そんな中でもあたたかい視線を送り続けたり、救ってくれる言葉をかけてくれる人と出会ったこと、こちらが誠意を尽くして接してもいつまでも悪意を向ける人もいるということを実体験として得たということがある。そんな経験はない方が良いような気もするけど、自分を一回り大きくする、人としてしっかり芽吹くためには必要な経験だったとも思う。
そんなことを見ながら考えていた。
おじさんは、これまでの人生の中で幾度となく、自分が大切だと思う人々に対して言葉少なくとも、情をかけ愛情を持って関わってきていた。社会生活でも、他者の尊厳は侵害せず、多くの人が見過ごすちょっとした無礼や、人を軽んじる態度を自分自身が改めかつ周りにも改めさせていた。それでも、彼を馬鹿にして軽んじる人はいるし、彼が人から愛されていることに嫉妬して、足を引っ張ろうとする人もいる。
また、彼が言葉足らずも仕事帰りに妻に「なにかいる?」と電話をすることが、最終話まで彼の愛からくる言動と行動と妻が認識していなかった寂しさや食い違いに寂しくなった。最終的に気づいてもらえて、見ていた私は救われたけど。
彼は他者や周囲に情をかけるけど、他者に期待しないわけではない。しっかり、お互い様だから、とイジアンにも伝えるし、彼のフゲ(おじさんの地元)の友達たちもお互い様だからと声をかけることも、自分が生きていく中で人に支えられていくことが当たり前、迷惑をかけてもお互い様であると安心ができた。
そんなおじさんでも、会社での扱いや妻との関係で、こころをできるだけ震わせず、怒らない泣かない喜ばない、ペルソナをつけた生活を送っており、ひどい閉塞感だった。それらがイジアンとの出会いにより、交流により、ペルソナを外し、なによりも、
自分が理解している人が知っていてくれることは大丈夫(すごいまとめた)とイジアンに語るシーンで、
自分を理解してくれる人がいること、自分が理解しようと思う人がいることで、強くなれるし、こころを柔らかくして自由に感情表現ができる、それは生き直すことができるってことだよなと感じました。
私はよく、情が厚く、言わなきゃいけないことを適切なタイミングで言う、年長者に助けられてきた。また、それと同じくらい、自分の仲間だと思っている人以外は人と思っていないような態度を取る人とも出会ってきた。
そんなことから、ドラマの中で、何度もおじさんとおじさんのフゲの仲間たちに何度も癒され、
また周囲の自分が理解できる人理解したいと思う人の力になれるように声をかけたり足を運びたいと感じた。
人との関わりが面倒だと思っていた私に、再びひととして生きる希望をもらった。
また辛い状況にいるなら、なにも見ない聞かない感じないと身体を硬直させ、こころを動かないように過ごしていたけれど、やっぱりよりよく幸せに生きるためにはこころを柔らかく、感じていることを表現することも、必要だよな、生き直そうと強く感じさせてくれた。
見る時によって、見方や感じ方は状況に左右されてしまうけど、何度見ても生きる力をくれる作品。
いつも文面には残さないけど、
リハビリのためにもアウトプットしてみました。
大好きなostです。
また、最終話の最後の制作陣のメッセージと、
おばあちゃんとイジアンの会話もとても好きなシーンです。
おじさんの兄が兄弟旅行に行くための資金で、ジアンのおばあちゃんの葬儀に花輪を出してくれたことが個人的な情の厚さを感じてジーンときたシーンでもあります。
やっと好きなドラマについて書けて、よかったぁとすっきりしました。
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