見出し画像

「春の夢」宮本 輝

りえさんの記事を読んで早速購入。横浜に行った際の旅の友本にした。
すんばらしかった❤
宮本輝さんの本は好きで読んでいるが
「偶然出会った超お金持ちの人とのご縁で色々良いことが起こる話」が多いと思う。
だから私は昔から「誰かお金持ちな人と出会って私にレントゲンの器械を買ってくれないかな」と思ったりしていた。なんでそんな偶然を望むのか考えたら宮本輝さんの本が原因だとわかった。

今回も偶然出会ったお金持ちな人はいたし、その人が何かをもたらしてはくれたものの、いつもとちょっと様相は違った。

父親の借金を背負い借金取りに追われながら大学生活を送る昭和の話だ。
公衆電話で恋人と連絡をとる、低賃金で重労働のバイトをする、
宗教について本気で友達と論じる、猛烈に生きたかったり死にたかったりする。
暗闇で壁に釘を打ったときに蜥蜴をも一緒に打ち付けてしまい、その蜥蜴と
共に息も絶え絶えになりながらどうにか生きて行く。
宮本さんがあとがきで「携帯電話がなかった時代。待つということが若者の心を鍛えた時代の話」と書いていた。あとがきさえも素晴らしい💧

携帯がなかった時代も知っているけれど「待つ」ということをあまりせずに育った私は、なにで「待て」を仕込まれたかというと子育てで仕込まれた。
何事も途中でやめなければいけなかった子育て。じっと待たねばならないことを学んだ。
子供を産み育てなければそれができない、と言っているわけではない。私はたまたま子育てで学んだだけだ。
今時、昭和の話をすれば「時代は令和」だの「ハラスメント」だの言われ
なんとなく「昭和生まれ昭和育ち」を恥ずかしく思ってしまいがち。思わされてしまいがち。
でも「春の夢」に出てくる人たちは「希望、勇気、忍耐」を噛みしめながら
少しずつ前にすすむ。何十年も前の話だけれど、それは決してかっこ悪くなんかなかった。
今の子供たちはなにで「待つ」を学ぶのか。
自分で壁に打ち付けてしまった蜥蜴をどうしたらいいのか、それさえも
スマホで調べるのか。AIはなんて答えるのだろう。
「春の夢」という本に答えが載っているかもよ?と言ったら
読んでくれるような、せめてそんな子供であってほしいと願う。

今回出てきた「ふと出会ったお金持ちの人」は、たいてい宮本さんの本では「そんなことある?」ぐらい良い人なんだがちょっと色合いが違い
しかもその人の最期が怖い。
生き様、死に様を横浜の行き帰りで教えてもらった気持ちになった。

旅の友本は実はすごく重要。
りえさんに感謝♥


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集