『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』(ほぼ日刊イトイ新聞・編)を読みました
#『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』はこんな本です
任天堂の元社長で、ニンテンドーDSやWiiを世に送り出した岩田聡さん。
その発言をまとめた書籍が『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』です。
「ゲーム人口の拡大」というミッションを掲げ、
老若男女問わず、インタラクティブに遊んで楽しめるようにと、
直感的で新鮮な操作ができる仕組み/構造を追求していったのは、
じつに革新的な試みであったわけですが、
そんな岩田さんのクリエイティブに対する思いや
経営理念、価値観、ポリシー、哲学など、
ほぼ日刊イトイ新聞に掲載されたインタビューや対談、
そして任天堂公式ページに掲載された「社長が訊く」シリーズをベースとして、ひとり語りのかたちに再構成された1冊となっています。
編集者の永田氏の記事がほぼ日にありましたが、まさに!という内容でした。
こういう人だったという「岩田さん」を、
過度にドラマチックに演出することなく、
見せたい姿にデフォルメすることなく、
そのままのことを知ってもらいたくて、つくった本です。
(4. こういう人だったんだよ。 - 岩田さんの本をつくる - 岩田さん - ほぼ日刊イトイ新聞)
https://www.1101.com/books/iwatasan/editor/2019-07-11.html
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#きっかけ
仕事をしていくなかで、組織の創造性をいかに高めるかに問題意識があり、
ピクサーやApple、あるいは任天堂といった、形式は異なるもののいずれも世界水準でクリエイティブな組織の事例というのが気になっていました。
加えて、『ゲームの企画書①②③』(電ファミニコゲーマー)を読んでから、ゲーム開発ってじつは参考にできることが多いんじゃないかと思っており、自然と手が伸びました。
#本の感想
世界中のゲーマーから愛されていた岩田さん。
(亡くなった際、追悼として次のような素敵な動画が寄せられたそうです。)
この本では、岩田さんの人々への愛と、岩田さんへの愛の双方を感じました。なのですごく温かい本になっています。
そして、岩田さんは生きるように学び、学ぶように生きていらっしゃった方のように伝わってきて、
本当に、素敵な方だったんでしょう!
印象に残ったフレーズを3つ挙げます。
いずれも、素朴な問いを自身の周囲を紐解いていくなかで深みのある考察まで仕立てているもののように感じられます。
1つ目は「得意なこと」について。
自分たちはなにが得意なんだっけ、ということを自覚したうえで、「なには、なにより優先なのか」をはっきりさせること。順番をつけること。それが経営だと思います。
(中略)
自分たちがすごく苦労したと思ってないのに、妙に評価してもらえる時というのは、放っておいても、どんどんいい結果が出て、いい循環になって、どんどん力が出ていく状態。それが自分たちに向いている得意なこと。そうじゃないことは向いていないことだ、というふうにわたしはだいたい判断していますね。
2つ目は「驚き」について。
自分たちがつくるものに対して、最初、お客さんは、たいして興味がないどころか、まったく興味がない。いつもそこから、はじまる。
そしてそこから、愛してもらうというか、わたしたちのつくったものに触れてニコニコしてくれる状態にまで線をつないでいかないと、自分たちの負けだって思ってます。
(中略)
けっきょく、自分たちのミッションは、「いい意味で人を驚かすことだ」ということがすごくはっきりしたんです。「人を驚かす」ということができなければ、新しいお客さんの数は増えないんです。
人を驚かせるというのは、お客さんの予想を裏切ることでもありますから、強い決断が必要です。たとえば、ニンテンドーDSというゲーム機に、当初は多くの人が戸惑いました。
(中略)
わたしたちからしたら、現在の延長上に未来はない、と思って決断したんですが、ふつうに考えている人にしてみれば、ただの常識外れに思えるんです。
そして3つ目は「才能」について。
人ってあることを続けられるときと、続けられずにやめちゃうときってあるじゃないですか。
(中略)
そこに「自分が得意かもしれないこと」を見極めるヒントがあるような気がするんです。じつはこれは、ゲームを開発するときに発見したことなんです。
ゲームって、すぐやめちゃうゲームと「なんかやっちゃうんだよね」っていうゲームがあるんです。同じように丁寧に仕上げたゲームでも、本質的なおもしろさとは別の次元で、続くゲームと続かないゲームがある。このことと、いろんな習慣が継続するかということはすごく似ているんですよ。
共通することがなにかというと、人は、まずその対象に対して、自分のエネルギーを注ぎ込むんですね。時間だったり、労力だったり、お金だったり。そして、注ぎ込んだら、注ぎ込んだ先から、なにかしらの反応が返ってきて、それが自分へのご褒美になる。
そういうときに、自分が注ぎ込んだ苦労やエネルギーよりも、ご褒美の方が大きいと感じたら、人はそれをやめない。だけど、返ってきたご褒美に対して、見返りが合わないと感じたときに、人は挫折する。
(中略)
つまり才能というのは、「ご褒美を見つけられる能力」のことなんじゃないだろうかと。「なしとげること」よりも、「なしとげたことに対して快感を感じられること」が才能なんじゃないかと思うんですよね。いってみれば、ご褒美を見つけられる、「ご褒美発見回路」のようなものが開いている人。
#基礎情報
著者:ほぼ日刊イトイ新聞
発行:株式会社ほぼ日
定価:本体1,836円[税込]
ページ数:224ページ
ISBN:978-4-86501-422-8
イラスト:100%ORANGE
ブックデザイン:名久井直子
発売日:2019年7月30日(火)
もくじ
第一章 岩田さんが社長になるまで。
高校時代。プログラムできる電卓との出会い。/大学時代。コンピュータ売り場で出会った仲間。/HAL研究所黎明期とファミコンの発売。/社長就任と15億円の借金。/半年に1回、社員全員との面談。/もし逃げたら自分は一生後悔する。
◆岩田さんのことばのかけら。その1
第二章 岩田さんのリーダーシップ。自分たちが得意なこととは何か。/ボトルネックがどこなのかを見つける。/成功を体験した集団が変わることの難しさ。/いい意味で人を驚かすこと。/面談でいちばん重要なこと。/安心して「バカもん!」と言える人。プロジェクトがうまくいくとき。/自分以外の人に敬意を持てるかどうか。
◆岩田さんのことばのかけら。その2
第三章 岩田さんの個性。
「なぜそうなるのか」がわかりたい。/ご褒美を見つけられる能力。/プログラムの経験が会社の経営に活きている。/それが合理的ならさっさと覚悟を決める。/「プログラマーはノーと言ってはいけない」発言。/当事者として後悔のないように優先順位をつける。
◆岩田さんのことばのかけら。その3
第四章 岩田さんが信じる人。
アイディアとは複数の問題を一気に解決するもの。/宮本さんの肩越しの視線。/コンピュータを的確に理解する宮本さん。/『MOTHER2』を立て直すふたつの方法。/『MOTHER2』とゲーム人口の拡大。/糸井さんに語った仕事観。/山内溥さんがおっしゃったこと。
◆岩田さんのことばのかけら。その4
第五章 岩田さんの目指すゲーム。
わたしたちが目指すゲーム機。/まず構造としての遊びをつくる。/暴論からはじめる議論は無駄じゃない。/従来の延長上こそが恐怖だと思った。/もう一回時計を巻き戻しても同じものをつくる。/ふたりでつくった『スマッシュブラザーズ』。/『ワリオ』の合言葉は、任天堂ができないことをやる。/ライトユーザーとコアユーザー。
◆岩田さんのことばのかけら。その5
第六章 岩田さんを語る。
- 宮本茂が語る岩田さん「上司と部下じゃないし、やっぱり友だちだったんですよ」/得意な分野が違っていたから。/新しいことに名前をつけた。/違っていても対立しない。/一緒に取り組んだ『ポケモンスナップ』。/本と会議とサービス精神。/「見える化」と全員面談。/素顔の岩田さん。
- 糸井重里が語る岩田さん「みんながハッピーであることを実現したい人なんです」/会えば会うほど信頼するようになった。/みんなの環境をまず整えた。/どういう場にいてもちょっと弟役。/ずっとしゃべってる。それがたのしいんですよ/病気のときも、岩田さんらしかった。/「ハッピー」を増やそうとしていた。
第七章 岩田さんという人。
わからないことを放っておけない。
◆岩田さんのことばのかけら。その6
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