[Kayの読書]多様な社会はなぜ難しいか★★★★☆
企業におけるダイバーシティーとは
「企業におけるダイバーシティーとは、達成すべき目標ではなく、多くの人たちのより良い協業を可能にする『土台』である」という筆者の言葉が印象的なこの本には、日本のダイバーシティー&インクルージョン活動の現状、活動に対する日本人の反応、日本でなぜこの活動が進まないのか、について書かれています。
男性中心の職場編成が持続する理由
男性中心の職場編成が持続する理由についての著者の考察が印象的でした。
・日本では、育児や家事の手間数が多く、完璧さ丁寧さ美しさが求められすぎている
・そしてその育児や家事の大半は、言うまでもなく女性が担っているし、委託先(夫または親権者、託児所、行政サービス)が充実していない
・国政は女性の就労を推進しているが、上記理由から、女性が分身の術を使えない限りまともな就労は難しい、だからパートや有期契約社員としてしか働けない
・有期で変則的な働き方の女性は企業のメインプロジェクトにアサインしにくく、結果として男性中心の職場編成が持続する
・一方でメディアは、育児も家事もしながら進学したり起業した一部のレアポケモンみたいな女性の成功体験を取り上げて報道することで、働きたいすべての女性にスーパーキャリアウーマン化を求めてしまい、結果として多数の女性の気力を奪ってしまう
ダイバーシティー活動は本音では敬遠されている
ダイバーシティー活動が進まない理由を語る上で筆者は、キング牧師の「善意の人々による浅い理解は、悪意ある人々からの絶対的な誤解よりも腹立たしいものだ。生ぬるい受け入れは、はっきりした拒絶よりもはるかに当惑させる」という発言を引用した上で、日本人の多くはダイバーシティー活動についての理解が浅く、権力者ほど本音ではダイバーシティーを敬遠し、ダイバーシティー活動を許容するフリをして言葉による深い議論を避けてきたため、マイノリティーの言葉は議論前に圧殺されてしまい活動が進まない、と述べています。
どうやって解決していくか?
この本には、こういったダイバーシティー活動について日本が抱える問題や筆者が感じる不満が述べられていますが、一方で、じゃあどうすれば良くなるの?という解決策の提案はあまり多くありません。
これは著書の批判では決してなく、むしろこれだけ日本のダイバーシティー活動について深く理解され考察されている筆者でも、解決策が思いつかないほど深刻な状況にあるのではないか、と思わされてしまいまいした。
僕も家族を持つひとりの人間として、本当にいろいろと考えさせられる本でした。