【読書日記】『わたしたちの怪獣』久永実木彦
もはや心が死んでる。
本を読んでも、何も感じない。
毎週届く図書館の予約本を、ただの義務感で読む。
意味のない文字の羅列を目が追い、時にはそれすらできなくて飛ばし読みする。
面白いとはなんぞや? 面白いと感じる”心”はどこにあるのだ?
・・・という状態が半年以上続く中、久々に何かに惹かれて買ったのが、久永実木彦さんの『七十四秒の旋律と孤独』でした。
久々に自分の中に心を感じた。「これこれ!」と叫ぶ何かを感じた。
その後、同じ作者の作品ということで『わたしたちの怪獣』も買って、そのまま読む機会がなく、再びしんどいうつ状態へ・・・
今、SFを読んでる場合じゃない、と思いながらも、再び何かに惹かれて読み始め、やはり「ああ」と思う。
『七十四秒の旋律と孤独』が宇宙を舞台にしたSFらしいSFの連作短編であるのに対し、こちらは現代日本を舞台にした、ちょっとSFとファンタジーの間をうつろう短編集、という印象。
同じ単語や人名が出てくるので、同じ世界観なのかなと思いつつも、完全に同じ世界だとすると、起こった事件に矛盾が出るので、SFらしくパラレルワールド的なものと解釈したほうがいいのかも。
あくまで個人的解釈ですが。
怪獣が東京を襲う話や、タイムトラベルによる歴史改変が当たり前になった世界の話、吸血鬼の話に、ゾンビ襲来話・・・と、いろいろなSFを詰めた感じです。
吸血鬼を扱った「夜の安らぎ」だけは、ファンタジーといってもいいかな、という印象。
どれか一編、お気に入りを上げようと思ったのですが、どの話にもぶっ刺さりポイントがあり、一番が決められない・・・
どの話にも、作者さんの人間に対する想いが込められている気がします。
人間という愚かで残酷な生き物とそれらが生きる世の中への、深い憤りと憎悪、それらが限界突破して辿り着いた先にある諦念。それから、愚かで愚かで愚かすぎる生き物へのどうしようもない愛情・・・のような。
生きづらさを抱える者にとって、時にこの世界は憎むべきもので、滅びてしまえばいいものである。その願望と、それでも世界のどこかに、何らかの希望を見出そうとする、そんな必死の試みによって書かれたような作品ばかりでした。
これもあくまで、個人的な解釈、感想です。
ただ、わたしは『七十四秒の旋律と孤独』でも同じようなものを感じ、だからこそ心揺さぶられました。
残念ながらこの方の本は、まだ二冊しか出ていないようなのですが、ひとまず心の中の「新刊出たら即買い」作家さんリストに入れて、今後を待ちたいです。
それにしても、『アタックオブザキラートマト』なんて映画、本当にあるんですね。