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テーマを掘り下げてボードゲームを作るレシピ 【保存版】 《ボードゲームの作り方 vol.2》

こんにちは、ボードゲームデザイナーの山田空太といいます。このnoteでは、主にボードゲームの作り方について書いています。

今回は《ボードゲームの作り方 保存版》第2弾となります。

⬇️大きな反響のあった第1弾も、お時間のあるときにぜひ。

まだまだおうちで過ごす時間が長くなりそう。そこで、おうち時間の過ごし方として、ボードゲーム制作はどうでしょうか?

ボードゲーム作りは、巣ごもりとの相性は抜群!なぜなら制作のほとんどを一人でできてしまうから!(…とは言え、ボードゲームはテストプレイが必要なのですが。)

この期間に、とにかくコツコツとテストキットを作るのです。

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ということで、ここからが本題です。

先日、Twitterに連続投稿した【テーマからボードゲームを作る手順】を再編集して、【テーマからボードゲームを作る方法】としてまとめました。

これまで、ぼくは『枯山水』『江戸職人物語』(後に『IKI : A Game of EDO Artisans』として英語版にアップデート)という日本文化・日本の歴史をテーマにしたボードゲームを作ったことがあります。

この2作は、完全にテーマ→ルールの順番で、ゲームデザインをしました。

もともと枯山水には詳しかったですが、江戸職人に関しては全く知識ゼロの状態からの勉強。なので、自分の経験がお役にたてるのではないかと思います。

これより以降で解説するボードゲームの作り方のレシピは、失敗を重ねながらブラッシュアップしたものです。

ボードゲームだけではなくて、デジタルゲームやアニメ、漫画、映画作りにも応用できるんじゃないかと思います。ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。

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はじめに:

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よくある議論として、ボードゲームを作るとき、

・ルールが先か
・テーマが先か

という話があります。

音楽のジャンルでいうと、作曲からするか、作詞からするかに近いかもしれません。

いわゆるドイツボードゲームでは、ルールが先にある方が多いかなという印象です。ルール先行では、あるメカニクス(ルールの骨組み、ルールの要素)を先に思いついて、それに見合うテーマを当てはめていく。もちろん、テーマがないゲームもあります。

ルールが先か、テーマが先か、どちらが良いかという話ではなく、最終的にテーマとメカニクスが融合している状態が理想。

さて、本noteではテーマをがっつり掘り下げてからルールを考えるという方法に絞って解説します。

1:テーマを決める

まず最初にすることは・・・

そりゃそうなのですが、テーマを決めること。

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好きなことをテーマにしちゃいましょう。ゲームにしやすい、ゲームにしにくいはあまり考えず。ここは好きを優先していいところ。

しかし、誰も知らないことや誰も興味がないことになると、テーマが遊びを邪魔することも。あくまで、プレイヤーをゲームに没入させるようなテーマ選びが大事です。

意外と、日常生活に身近なものをテーマにしたり、ボードゲームに近いものをテーマにするのは難しい。ボードゲームと離れているテーマの方が良いんじゃないかなと思います。

小説や映画で使い倒されたテーマでも、ボードゲームではまだまだ空いています。ニッチなところにいくよりも、王道の方がチャンスが多いんじゃないかなとも。当たり前ですが、すでに有名なボードゲームで使われたテーマは避けた方がいいでしょう。

ドイツゲームでは、中世、魔法、宇宙、農場、都市、歴史イベントなどは比較的多いテーマですね。

もしこれから何か新しいことを学びたいという人は、そのことをゲームにしてしまえばいいかもしれません。楽しみながら、知識も増えるし、ゲームも作れるし。良いことづくめ。

テーマに愛着があり過ぎると、ゲームの面白さよりもテーマの再現に引っ張られてしまう。それには気をつけて。

2:調べる

最初に、入門書を10冊読みます。ここでの目的は、概略把握。

もちろん、漫画やアニメ、映画も大歓迎。ムック本のようなものもいいですね。大まかな筋が分かると、理解がスピードアップしますよね。

どの本でも触れられている、オーバーラップしている部分があります。大切なところ。ひとまず抑えておきましょう。

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【ザ・秘策!】
本選びに迷ったとき、松岡正剛, 千夜千冊, (調べているテーマ)でググりましょう。松岡正剛さんの千夜千冊は、そのテーマにおいて読むべき本を探すための最高のツールです。

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3:もっと調べる

さてもう少し掘り下げて調べます。ポイントを箇条書きにしました。

・最低 20-30冊
・お気に入りの著者を見つける
・中心となる本が見つかれば最高
・図書館、資料館は関連本が並んでいるので探しやすい
・図鑑、図録はゲーム作りに使いやすい
・飛ばし読みOK
・気になるところはメモや付箋、コピー

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この段階では、今調べているテーマについて人に語れるかどうかが一つの基準ですね。

さあ、次のステップであるコンセプト作りにいく前に確認です。

 -中心となる著者は見つかりましたか?
 -「へー」と唸る発見はありましたか?
 -誰かに伝えたく仕方がなくなるようなことはありましたか?

すなわち、人に伝えたくなるような感動・熱情が自分の中に湧いてきているかどうか?

まだ見つかっていない場合は、もう一度資料調べのやり直しです。

『江戸職人物語』では、九鬼周造氏の『「いき」の構造』、江戸の絵巻である『熈代勝覧』、三谷一馬氏の『江戸職人図聚』『江戸商売図絵』『彩色江戸物売図絵』に影響を受けました。

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4:コンセプトを1行で書く

よし、ここで一旦、立ち止まりましょう。テーマ側から深掘りして、コンセプトを1行で書きます。ここでのコンセプトは、メカニクスやルールのことは含めなくて大丈夫。

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補足ですが、テーマ側のコンセプトは、企画コンセプトよりも一つ下位の話です。どういった人に届けたいかとかではなくて、ゲーム世界で表現したいことですね。

勉強したことを凝縮して自分の言葉に翻訳しておくことが、テーマからゲームを作る場合は重要。

例えば、『江戸職人物語』では江戸の町人の春夏秋冬のくらしを描くです。

5:プレイヤーの立ち位置を決める

ここからは、テーマをゲームに落としこむ工程です。

まず考えておきたいことは、プレイヤーが何者であるかを明示すること。つまり、そのゲーム世界の中でプレイヤーにどういう役割をもたせるか。プレイヤーの立ち位置が決まると、他の設定を決めやすいですよ。

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例:『アグリコラ』では、プレイヤーは17世紀のヨーロッパの農民になり、農場を開拓します。
例:『アラカルト』では、プレイヤーは料理人になります。
例:『枯山水』では、プレイヤーは禅僧になります。

プレイヤーが人物ではなく、ゲーム世界の中で神的な視点をもつようなゲームもあります。

6:目的を決める

次はゲームの目的です。プレイヤーがゲームの中で目指すことですね。

目的は、直球が良いです。奇を衒う必要はありません。そのテーマから、誰もがカンタンに思い浮かべられるものにしましょう。目的があいまいであったり、不可解なものだったら、ルール説明の入り口でつまづきやすくなるので注意。

2014年に作った『江戸職人物語』では、ゲームの目的を、江戸の日本橋を舞台に、春夏秋冬を通して最も粋な江戸っ子になることを目指す、としました。勝利点を粋で表現したケースでやや変化球ではありますが、日本人なら「江戸=粋」の構造は納得しやすいかなと思います。

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7:要素を箇条書きにする

コンセプト、プレイヤーの役割、目的を設定したら、もう一度資料にもどりましょう。

さあ、ゲームに使える要素をどんどん集めるのです。手順4から手順6までを設定したことで、優先順位がはっきりとしているはずです。

集めるものは、写真・イラスト・文章・メモ・コピーの切れ端など。全てを1箇所にまとめてから、ゲームに詰め込みたいものをリストアップして、箇条書きにします。写真やイラストも、一旦言語化しておいた方が後から探しやすいですね。

僕は、PC上ではなく、スケッチブック1冊に整理しています。1つのゲームに、1冊のスケッチブック。一旦エクセルに書き出す場合もありますが、それもプリントアウトしてスケッチブックに貼りつけています。

8:要素を取捨選択する

ここでは、箇条書きにした要素をストーリーと紐づけていきます。いきなりここでストーリー?と思われるかもしれません。

コンセプト、プレイヤーの立ち位置、目的を決めて、要素を整理しました。ここまでの過程で、自分の中でゲームのストーリーが自然と醸成されているはずです。

ルールブックの最初のページに書かれているようなゲームの概要の文章は、もう書けるのではないでしょうか。

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ここで、ちょっとしたコツですが、テーマの中の小さな嘘はNG、です。

小さな嘘はダメ!

フィクションを作る上で「大きな嘘はOK、小さな嘘はNG」というのは有名な話。小さな嘘がNGなのは、大きな嘘で作り上げられた虚構の世界が崩れてしまうからですね。

そのため、資料をたくさん読みこんで、細部をつめることは大切です。

さらに、知っておいて欲しいことがあります。テーマの要素をゲームへ落としこむ際に、名前を工夫することです。ここは見落としがちな点ので、もう一度言います。名前を工夫しましょう。

名前を工夫するというのは、「テーマの要素の名前をルールの用語に変換する」ということです。これができていないゲームが本当に多いです。

1つは、テーマからそのままモノの名前を使っているケース。ルールの中に急に難しい単語が出てくるのです。知らない単語や読めない単語が出てくると、ゲームへの没入感が薄れてしまいます。ただし、固有名詞ならOKです。

逆に、せっかく積み上げてきたフレイバーをルールの中で全消ししているケース。プレイヤーに2重の負荷をかけるので良くないですね。適当にテーマを考えているとそうなっちゃいます。

名前の変換はテーマとルールをつなぐ上で、きちんと時間をかけて考えたいところです。

例:『IKI 江戸職人物語』
・粋を表す勝利点⇨いきてん
・ワーカー置き場⇨生きざまトラック

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ここでもう1つ。詰め込みすぎ問題。

せっかく勉強したのだから、色んな要素をゲームに入れたくなるものですが、コンセプトや目的にそぐわない要素は、思い切って捨てましょう。

これまで勉強したことは、少なくともゲームの世界観の形成には役立つはずです。

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9:準備完了

一旦まとめます。

・プレイヤーの立ち位置を決める
・ゲームの目的を決める
・大まかなストーリーを作る
・テーマの要素を整理する
・要素をストーリーに紐づける
・テーマの言葉をルールの言葉に変換する

以上で、テーマ側の準備は完了です。

しかし、まだゲーム作りのスタート地点にすぎません。

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10:作り始める

「まだスタート地点?」と思うかもしれませんが、ここまでの工程をたどると、自然とゲームのルールができてきていると思います。少なくとも、ルールの上で実現したいことが明確になっているでしょう。

テーマの要素を整理し、自分の言葉に翻訳した過程で、ゲームの骨格ができているはずです。きっと面白いゲームが作れるでしょう。

最後に:

最後に、ちょっとした、でも結構重要なコツを2つお伝えします。

❶テーマの再現性よりも、ゲームの面白さが優先
❷詰め込んでから削る

❶テーマの再現性よりも、ゲームの面白さが優先

テーマについて時間をかけて調べたので、テーマの再現性を大事にし過ぎてしまうときがあります。その気持ち、よく分かります。分かるんですが、やはりゲームの面白さや、プレイアビリティを優先した方が良いです。

ここは一概には言えず、本当に難しいんですが…。自分でもよく葛藤するところです。しかし、テーマへの拘りは自己満足に陥りやすいということは覚えておいた方がいいでしょう。

❷詰め込んでから削る

テーマからゲームを作るのであれば、重量級のゲームの方が調整しやすいです。というのは、重量級のゲームであれば、とにかく要素を詰め込んでから、削って整えていくことができるから。というか、それが許容されます。

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逆に、軽量級・中量級のゲームでは、いかにテーマを要約して自分の言葉に翻訳するかがキーです。自分では意図していない小さな矛盾を避けるためにも、資料をたくさん読みこんで、細部をつめることは大切だと思います。

このnoteは以上です。最後まで読んでいただきまして、有難うございます。

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