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ボードゲーム作りに絶対必要な確率の話 【前編】

ボードゲームデザイナーの山田空太といいます。

今日はちょっと趣向を変えて、ボードゲーム作りに関わってくる確率の話です。ボードゲームと確率って、切っても切れない関係ですよね。確率が前面に出るゲームもあれば、ひっそりと裏方に回ってルールを支えているゲームもあります。

すごろくの確率(問題編)

さて、いきなりですが、問題です。

【問題】普通のすごろくがあります。普通のサイコロ1個を振り、その数だけ駒を進めることを繰り返します。このとき、最も駒が止まる確率が高いマスは、何番目のマスでしょうか。

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直感的にはいくつになるでしょうか?

計算での答えと違いはありましたか?

解答については後述しますので、是非一度考えてみてください。


ネットで調べてみると、過去に数学オリンピックで似た問題が出題されたこともあるようです。また、『バックギャモン』をプレイする方には周知の問題かもしれません。


ちなみに、この問題は、ハッピーターンすごろくのゲームデザインをしたとき、ふと生じた疑問です。

「何マス目に、ゲームの鍵となる効果のマスを置いたら、ベストだろうか・・・?」って。つまり、最も止まりやすいマスにプラスの効果を配置すると、ゲーム世界への誘導に有効なのではないかと考えたわけです。

🎲すごろくのゲームデザインの話はこちらから読めます(有料)👇


ボードゲームに現れる確率

サイコロを使うゲーム(ダイスゲーム)って、まさに確率のゲームですよね。サイコロの出目はどの目も1/6です。サイコロを2つ振ったときの和の中、最も確率が高いのは7であることも、誰でも知っていますよね。例えば、『カタンの開拓者』では、まさにその2つのサイコロの和の確率を土台としてボードが設計されています。

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『ブラフ』では、サイコロの出目の期待値がボード上に明示されていて、それを元にあなたはどう選択をするのかと迫ってきます。ブラフゲームですが、確率が前面に押し出されているゲームといえるでしょう。

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他にも、『マジック:ザ・ギャザリング』。ぼくは初心者で詳しくないのですが、デッキを組むために、確率を頭に入れておくことが大事なゲームだと思います。キーカードを何ターン目までに引けるかという確率であったり、マナ事故にならないために、土地枚数に応じた土地のドロー確率などがありますね。つまり、確率が表に立っていなくても、プレイヤーの頭の中に入っているというわけです。

『マジック:ザ・ギャザリング』の確率計算のnote、とても面白いです👇

ある程度確率を考えた上でデッキを組んで、実際のプレイの中でデッキを修正するという工程は、ゲーム作り方と似ていると思います。

では、最初の問題にもどりましょう。


すごろくの確率(解答編)

【問題】一本道の普通のすごろくがあります。プレイヤーは普通のサイコロ1個を振り、その数だけ駒を進めることを繰り返します。では、最も駒が止まる確率が高いマスは、何番目のマスでしょうか。

最も止まる確率の高いマスは何番目か、分かりましたでしょうか?


正解は6番目のマスです。

直感は正しかったでしょうか?

解説はこちらのブログに詳しいので、詳しく知りたい方はリンクに飛んでください。


以下、簡単に解説します。若干計算は面倒ですが、そんなに難しくはないです。

❶1のマスは、サイコロを1回振って1の目がでたときだけなので、1/6 ですね。

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❷2のマスは、サイコロを2回振って続けて1が出た場合が加わるので、確率は、
1/6 + (1/6)² = 7/36 ≒ 19.4%  ですね。

3から6のマスも以下同様に考えます。

3のマスは、1回振って3、2回振って(1,2)か(2,1)、3回振って(1,1,1)の場合がありますので、
1/6 + 2x(1/6)² + (1/6)³ 49/216 ≒ 22.7% です。

4のマスは、1回振って4、2回振って(1,3)(2,2)(3,1)、3回振って(1,1,1(1,1,2)(1,2,1)(2,2,1)、4回振って(1,1,1,1)の場合がありますので、
(1/6) + 3C1x(1/6)² + 3C2x(1/6)³ + (1/6)⁴ = 343/1296 (7³ / 6⁴)= 26.5% です。

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このように考えると・・・、
3C0x(1/6) + 3C1x(1/6)² + 3C2x(1/6)³ + 3C3x(1/6)⁴ = 343/1296

こちらの方が、計算式は綺麗ですね。

5のマスも、同様に考えて、
4C0x(1/6) + 4C1x(1/6)² + 4C2x(1/6)³ + 4C3x(1/6)⁴  + 4C4x(1/6)⁵=  2401/7776 = 7⁴ / 6⁵ ≒ 30.9%

6のマスは、同様に考えて、
5C0x(1/6) + 5C1x(1/6)² + 5C2x(1/6)³ + 5C3x(1/6)⁴  + 5C4x(1/6)⁵ + 5C5x(1/6)⁶=  16807/46656 = 7⁵/6⁶ ≒ 36.0%

ちょっと不思議ですが、
1≦n≦6のとき、7^(n-1) / 6^n が成立しています。

❼7マスになると、1回の試行ではたどり着けません。なので、確率はグッと低くなります。

「6の目かつ❶が起こる」「2の目かつ❺が起こる」・・・「6の目かつ❶が起こる」なので、❶から❻に(1/6)を掛けて計算すると、

70993/279936 ≒ 25.4% 

と答えが出ます。


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グラフにすると、上のように確率が動くようです。ぼくは6マス目と7マス目で止まる確率に10%以上もの差があるってこと、結構意外でした。サイコロ2つの出目の和は7が一番確率が高いということが頭に染み付いていたからかもしれません。

だから、確率計算はそういう思い込みを補正することにもなります。面倒臭がらずにちょくちょく確率計算をしておくと、いつもとは違う発見があるかもしれませんね。ちょっと強引ですが、、、。

そして、マスの数が無限大に大きくなると、2/7=0.2865‥‥ に収束していくようです。つまり・・・、

(1 / 3.5)

ということですね。3.5はサイコロの出目の期待値なので、これは直感的にも導き出せそうな数字ですね。面白いですよね。

それでは、上の結論をふまえて、実際のすごろくのゲームデザインではどうしたでしょうか。

まず、6マス目に「3マス進む」などのプラスの効果を設置するのが良さそう、と考えました。平均的に3回に1回は良いできごとが起こります。ゲームの序盤に嬉しいことがあると、もうちょっとゲームを続けたくなりますよね。

実際にテストもしてみました。しかし、最初の一投で6を出したプレイヤーが一気に差をつけることになってしまいます。他のプレイヤーは、出鼻をくじかれたような感じで、ちょっと不公平感を覚えてしまいました。結局、6マス目にプラスの効果を配置することはしませんでした。

そう計算通りにはいかず・・・。

逆に、6マス目に「スタートに戻る」の効果を置くと、3回に1回はスタートに戻ってしまうということにもなります。これはまたどこかで使えるかもしれません。


なので、実際のボードゲーム・カードゲーム作りの手順としては、

直感であたりをつけて → 確率計算で精査 → テストプレイで実験

という感じが良いのではないかと思います。

とは言え、今回のように単純なものなら自力で計算可能ですが、もっと複雑になればコンピュータでってことになりそうです。

まとめ

さて、今回はボードゲーム作りに絶対必要な確率の話でした。機をみて折をみて、確率を計算しておくと何かしらの発見があるぞってことです。

確率の話には、後編(実践編)もありますので、いつか続きを書きたいと思います。

今日の話が面白かったら、是非フォローしてくださいー。twitterでも更新情報をのせています。確率の話とは関係ないですが、いつかサイ富豪も遊んでみてください。



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