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【小説】Emile

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自作小説「Emile」をまとめています。
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2024年6月の記事一覧

【Emile】12.Emile【完】

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罅が入った天井の隙間から、一筋の光が、彼らを照らしました。

太陽が登ってきたのです。人々は [ 女王の愛 ] を捨て、醜い塊を受け入れ、この地を踏みました。

それは、一人の人間として生まれたことを表していました。母親の守りを失った子供たちは、不安や苦しみに苛まれ、この醜い世界を生きていかなければならなくなったのです。

「よく断ち切ったね、オヴ。君は、大人になったんだ。大丈

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【Emile】11.愛

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オヴは、 泥の中を駆け抜けました。走れ、走れと、女王が急かすのです。

オヴがたどり着いたのは、あの子が死んだ場所。
あの時みた、枯れた花が一面に広がっていました。あの綺麗な白い花は一切咲いていませんでした。

女王の心臓が中心で脈打っていました。
そして、その側に一つの影を見つけました。
その影は手を広げて近づいてきました。
オヴは女王の愛を握り。その、影に突き刺しました。

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【Emile】10.覚悟

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「オヴ、今日も練習?」 ご機嫌で鼻歌を歌う少年がいました。
赤土色の少年。新品の綺麗なピアノ、足のつかない椅子。

「うん、私、ピアノが嫌い。でも、練習しなきゃ」
「そっか、僕は好きだよ。ピアノ。そうだ。ねぇ、いっぺん好きなように弾い
てみてよ、オヴ」

「好きなように?」
「そ、心のままにさ、音楽は、僕とオヴを繋ぐものだから、離れ離れになっても思い出せるだろ?」

「離

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【Emile】9.女王

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「女王はあなたは我が子の幸せだけを願えばいいのです。」

「生まれながらにみんなから愛される女王
オヴ。」

彼女はいつも、とてもたくさんの人に囲まれていました。たくさんの人が彼女の元を訪れては、豪華な貢物を持ってくるのです。

眩いアクセサリーや、決して枯れない花などでした。しかし、女王はわかっていました。それが自分に送られたものではないということを。

誰も彼女のことなど、

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【Emile】8.真実

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「やぁ、久しぶりだね。大きくなったんだね。」
オヴが楽譜から顔をあげると、目の前には、背が高く、髪の長い男の人が立っていました。

「おかえり、オヴ。」
「パパだよ。オヴ。ほら。エルドット。」
エルドットの顔を見て、オヴは固まっていました。

「あれ、わからない?ようやく目を逸らさなくなったと思ってきたのに。」

「君を頂点とするこの世界は、完璧な理想の世界だった。だけど、

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