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最近の記事

【小説】ねこの山

私の職場には、ねこがやってくる。 気づけば、どんどん。どんどん。 オフィスの端っこで団子になっている。 「すみません。ねこが溜まってきているのですが、 どうすればいいでしょうか。」 私は、総務部の人に話しかけた。 「うーん。まぁ、そのうちどっか行くでしょう。」 そう言われたので、一旦見過ごすことにした。 私は、企画部に所属しており、商品のカタログを 作成している。 先輩の山西さんとは、昼食を一緒に食べるくらいの仲だ。 「そういえば、営業の黒田さんいるじゃないです

    • 箱庭づくり2

      「なんて、幸せなんだ!」 私は、真っ白な砂の上に大の字に寝転がり 叫んだ。 「私は、先生を超えるかもしれない!」 そう言って、クスクスと笑っていると 影が降り注いだ。 「これを望む君は、完璧にはなれない。」 そう言って、先生は微笑んだのだ。

      • 箱庭づくり

        私は、庭をつくっていた。 目の前の箱には、真っ白な砂だけが 敷き詰められている。 「先生、できました。」 呼ばれた先生の目には、 青空のように澄んだ髪色の私が 映っていた。 「それは、完成ではありません。 私のを見てみなさい。」 先生は、自分の箱を私に見せてくれた。 私の青い瞳には、目も当てられないような 汚い箱が映っていた。 あぁ、これは、いけない ──── 「私のは、もっと綺麗なのに。」

        • 【小説】あおいし、赤い。

          校舎の隅に追いやられる、埃っぽい美術室。 白目を剥いた複数の頭部が、一人の生徒に 目を奪われていた。 私は、どうしてここに辿り着いたのだろう。 締め切った窓の外からは、ざわめき立つ 蝉の声が聞こえてくる。 教室の扉を開けた手には汗が滲んでいた。 入り口に立ちすくむ私とは対照的に 一人の女子生徒が教室の真ん中で 熱心に何かを描いていた。 「ここにはいたくない。」そう思いながらも 私の足は吸い込まれるように美術室の中に 踏み入れていた。 その女子生徒を目掛けて 一歩、また

        マガジン

        • 【小説】Emile
          14本

        記事

          【Emile】12.Emile【完】

          前の話はこちら↑ 罅が入った天井の隙間から、一筋の光が、彼らを照らしました。 太陽が登ってきたのです。人々は [ 女王の愛 ] を捨て、醜い塊を受け入れ、この地を踏みました。 それは、一人の人間として生まれたことを表していました。母親の守りを失った子供たちは、不安や苦しみに苛まれ、この醜い世界を生きていかなければならなくなったのです。 「よく断ち切ったね、オヴ。君は、大人になったんだ。大丈夫。なんて変わりはない。ただ、一人の人間になっただけさ。」 「ありがとう。エル

          【Emile】12.Emile【完】

          【Emile】11.愛

          前の話はこちら↑ オヴは、 泥の中を駆け抜けました。走れ、走れと、女王が急かすのです。 オヴがたどり着いたのは、あの子が死んだ場所。 あの時みた、枯れた花が一面に広がっていました。あの綺麗な白い花は一切咲いていませんでした。 女王の心臓が中心で脈打っていました。 そして、その側に一つの影を見つけました。 その影は手を広げて近づいてきました。 オヴは女王の愛を握り。その、影に突き刺しました。 オヴは、手に赤い血が伝ってくるのを感じました。 そして、影はそのまま、オヴを抱

          【Emile】11.愛

          【Emile】10.覚悟

          前の話はこちら↑ 「オヴ、今日も練習?」 ご機嫌で鼻歌を歌う少年がいました。 赤土色の少年。新品の綺麗なピアノ、足のつかない椅子。 「うん、私、ピアノが嫌い。でも、練習しなきゃ」 「そっか、僕は好きだよ。ピアノ。そうだ。ねぇ、いっぺん好きなように弾い てみてよ、オヴ」 「好きなように?」 「そ、心のままにさ、音楽は、僕とオヴを繋ぐものだから、離れ離れになっても思い出せるだろ?」 「離れたくないよ…」 「僕もそうだよ。たとえの話だよ。でも、あの人たちは、僕のこ

          【Emile】10.覚悟

          【Emile】9.女王

          前の話はこちら↑ 「女王はあなたは我が子の幸せだけを願えばいいのです。」 「生まれながらにみんなから愛される女王 オヴ。」 彼女はいつも、とてもたくさんの人に囲まれていました。たくさんの人が彼女の元を訪れては、豪華な貢物を持ってくるのです。 眩いアクセサリーや、決して枯れない花などでした。しかし、女王はわかっていました。それが自分に送られたものではないということを。 誰も彼女のことなど、見ていなかったのです。 彼女はベールを身に纏っておりましたから。 彼女がいなく

          【Emile】9.女王

          【Emile】8.真実

          前の話はこちら↑ 「やぁ、久しぶりだね。大きくなったんだね。」 オヴが楽譜から顔をあげると、目の前には、背が高く、髪の長い男の人が立っていました。 「おかえり、オヴ。」 「パパだよ。オヴ。ほら。エルドット。」 エルドットの顔を見て、オヴは固まっていました。 「あれ、わからない?ようやく目を逸らさなくなったと思ってきたのに。」 「君を頂点とするこの世界は、完璧な理想の世界だった。だけど、 止まっていた時間は進み始めれ、ゆっくりと汚れ始めた。そして、無垢な子供は夢から覚

          【Emile】8.真実

          【Emile】7.楽譜

          「驚いたよ。優秀だね。オヴ、君には生きる価値があるよ。」 「ありがとうございます。」 帰り道、同じ電車に揺られながら帰っていきました。帰りの電車は余裕のある空間がありました。 時間が経つにつれて、景色はとても綺麗なものになっていきました。あちこちに咲き乱れる、花、歌う蝶。汚れが一切ないその世界は、さっきまで枯れた土地にいたオヴたちは、まるで、この世界そのものが幻想のように思われました。 帰宅後、オヴたちは制服を洗濯に出して、風呂に入りました。入浴後オヴは、施設を探検するこ

          【Emile】7.楽譜

          【Emile】6.戦場

          前の話はこちら↑ 電車で揺られながらたどり着いた目的地は、とても息苦しいところでした。 喉の閉塞感、心臓がとても痛むのです。喉から鳩尾に吊るされた錘が、振り子のように、死の時を刻むのです。自分の呼吸の音がよく聞こえること、目の前には、醜い塊が犇めき合っていました。何人も、何人も、倒れて行きます。醜い塊を前にして、ナイフを持つ手が震えるのです。ほとんどの子どもたちはこの醜い塊との戦いに負けて、立派な大人になれずに死んでいくのです。 赤ん坊のような風貌に、鮮やかな模様。ブク

          【Emile】6.戦場

          【Emile】5.約束

          前の話はこちら↑ 「なんで最後にお前とピクニックなんだよ。」 「いいだろ、最後くらい僕の後ろを歩くのも」 振り返ってヤタカは笑いました。 それから、流れる時間は止まることはなく、とうとう、巣立つ時がきたのでした。 明日になれば、彼らは黒い制服を纏い、戦場をかける兵士になるのです。オヴの首には、綺麗な赤い宝石がキラキラと輝いていました。 オヴの前でヤタカが軽快に歩いていました。オヴは長年付きまとわれ、一緒にいたものの、初めて 後ろ姿を見たかもしれない。とか考えていました

          【Emile】5.約束

          【Emile】4.イドの王

          前の話はこちら↑ 白い花園。女王が歩けば、花が歌い、輝きを増す。女王の心臓は未だ健在。 女王は嗾され、ナイフで風穴をあけた。 彼女は見てしまった。 奴は王となる。 女王の心は、奴に奪われた。 赤く染まり、枯れていく花達は、まるで私たちのよう。 女王の心を取り返さなくては、平和は訪れない。 汚れた女王は、心を探して彷徨い歩く。 「おとぎ話さ、これは。真実じゃない。だから図書館に並んでないだろ?」 青年はヤタカたちにある本を見せました。 「作者は、[L.]」ヤタカが本をまじ

          【Emile】4.イドの王

          【Emile】3.イドについて

          前の話はこちら↑ 茶色の短い髪の青年が、横たわる塊をしゃがんで見ては、紙に何かを描き写していました。 生まれたての赤ん坊のような姿をした塊が、潰れ、赤く染まり、 とても醜い姿をしていました。 青年は後ろに人影が現れたことに気づき、立ち上がりました。 「あ、すみません。邪魔でしたね。」 「…また君か。」 青年のそばに立っていたのは、黒い服を身にまとった大人の兵士でした。手に持つナイフは赤く染まっていました。大人の兵士は青年を見るなり、わざとらしく溜め息をつきました。

          【Emile】3.イドについて

          【Emile】2.女王のなくしもの

          前の話はこちら↑ 「ボケてきたんじゃないかな?」 お昼時、ヤタカの笑い声が食堂に響きました。数分前に、自習を終えた二人は食堂に向かいました。席に着くなり、ある噂話を耳にしたのです。 「まさか、なくした物が何かわからないなんてね。」そう、女王はとても大切なものをなくしたのです。しかし、なくなったことはわかるものの、それがなんなのか、女王本人にもわからないのだとか。 そして、その女王のなくし物を探して彷徨い、迷子になっているのだとか。そんな噂話を聞いたヤタカが、おかしくて

          【Emile】2.女王のなくしもの

          【Emile】1.ヤタカ

          前の話はこちら↑ 「母さんは、僕のことを愛してくれない。」 
赤土色の髪をした少年が、眼鏡の奥の青い眼を天井に向けて、不満そうに言いました。 目線の先に広がる天井は、この世界を包み込むように存在しています。天井には大きな絵が描かれており、中心には、心臓に大きな穴が空いた人のようなもの、真っ赤な色をしています。 その人間の近くには宙に浮く大きな丸。この絵は、とても昔から存在していて、何を意味するのか、誰も何もわかりません。 そして、このドーム状の天井は、まるて

          【Emile】1.ヤタカ