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訪問看護〜回想録〜

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訪問看護歴20年あまり。訪問先での出来事、思い出、学び。訪問看護いまむかし。
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#新人看護師

大切にされていることを、大切にしたい。

Mさんは消化器系のご病気で、病気が分かってから1年以上、ずっと奥様と二人三脚で闘病をされてきました。口からの食事がとれない為、24時間の持続点滴は欠かせません。 先日、知的で穏やかなMさんにしては珍しく、スタッフとの電話の際Mさんが語気を強めたやり取りをされたと聴き、私は少し気になっていました。 抗生物質の点滴の追加指示が出たため、私は久しぶりにMさんのお宅へお伺いしました。 他愛のない話の後、私が抗生物質の点滴の準備をしていると、Mさんがぽつりぽつりとお話ししてくださいま

何が正解なのか その②

「何が正解なのか①」その後のお話です。 前回のnote はこちら→ https://note.mu/bochibochimaka/n/nba1f194a2b07/edit **************************** I さんは食事がとれなくなり、 医師より点滴の指示が出ました。 ご家族は迷っておられまたが、週末を挟むため、まず週末の数日間は点滴を行い、週が明けてからのIさんのご様子でその後の方針を決めましょうということになりました。 私たちがご家族と初め

眺めのいい部屋

Tさんのお宅に伺うと、いつものように娘さんが待っておられました。 Tさんの部屋は、窓から遠くに海が見える一番眺めのいい部屋。 部屋に入ると、いつものようにTさんお気に入りのBGMが流れ、壁にはTさんが好きな花の写真やポスターがたくさん貼ってあります。窓からの景色がTさんからも見えるよう、窓の近くに介護用ベッドが置かれています。 いつものように、私は娘さんと向かい合わせにベッドを挟むように立って、娘さんと一緒にTさんの身体をホットタオルで清拭し、お通じの具合を確認し、おむつ

くやし涙

訪問看護部門の中でも、あまり感情を表に出さず、冷静に淡々と仕事をこなすKさんが事務所に戻ってきたとき、珍しく涙をためていました。 どうやら悲しいのではなく、くやし涙のようです。 主治医の先生とこんなやり取りがあったようです。 彼女の受け持ちの利用者さんは微熱が続いており、経過観察していたのですが、血液検査の結果炎症反応が悪化していました。 ご家族も微熱が続いている事、検査結果が悪くなっている事、 「このままでは身体が弱ってしまうのではないか」と心配をされていました。

お別れまでの時間

休日。 利用者さん宅にお伺いし点滴の準備をしていると、オンコールの携帯電話が鳴りました。 数日前に訪問看護利用の契約が済んだばかりのTさんの奥様からです。 「昨夜から夫の調子が良くない。朝トイレに行こうとしたけれど、途中で動けなくなりベッドに戻れない。起こしに来てほしい。」という内容でした。 早々に点滴を済ませ、急いでTさんのお宅にお伺いました。すると、Tさんはリビングの床に横になっておられました。 側で奥様と兄弟の方が心配そうに待っておられました。 私はTさんの顔を覗

答えの無い問い

Sさん。 武道を趣味とされ、戦後生まれの男性らしく無口で無骨な感じの方。週1回、状態チェックと、自宅での入浴の介助でお伺いしていました。 がんと診断され、余命3ヵ月と医師より宣告をうけてから、1年半が経ちました。 浴室でも自分からはほとんどお話しされないのですが、時々、自分からお話をされます。 「どうしてこんな病気になったのだろう?」 「余命3ヵ月と言われてから1年以上も生きているのはどうしてだろう?」 「もし、あなた(私に向かって)のご主人が同じ病気になったら、ど

一杯の紅茶

私が訪問看護に従事して、数ヶ月たった頃の、訪問看護師としては駆け出しの頃の話です。 Mさんは、自宅で在宅酸素をしながら過ごされていました。 徐々に食事が減り、うとうとされることが多くなり、いよいよ水分も取れなくなりました。 自宅にて点滴をすることになり、お伺いした時のことです。 ご高齢で、しかも数日食事をされていないので、脱水状態。点滴できそうな血管が見つかりません。 (この日、私は自宅での点滴の実施は初めてでした) 1回、2回と試みるも失敗。3回目も・・・すぐに漏れて

怒りの向こう側

Mさん。70代・男性。 呼吸器の病気があり、在宅酸素を使用。奥様が仕事をされているため、日中は1人自宅で過ごされていました。 病気がすすみ、少しの動作で呼吸苦が出現するようになり、今までは何とか1人で出来ていた事が1人で行うのが難しくなりました。 また、奥様の手を借りながらの入浴も、動作に伴う呼吸苦の為に困難となりました。 Mさんは、今まで1人でやってこられた方法や、こだわりが強くありましたので、ヘルパーさんの対応では身体のケアに関する援助は難しく、看護師の対応を希望され

4×12×5=240回!

週1回、Kさんのお宅に通って2年ほど経った頃の話です。 ご病気がありますので、 「あっちが痛い」「調子が良くない」 と言われながらも、毎週お伺いして、自宅での入浴のお手伝いをしていました。 そんなある日、介護されている娘さんがしみじみと私に言われました。 「昨日、計算してみました。看護師さんに月に4回来ていただいて、1年で48回、2年で96回! 100回近く、来ていただきました。親戚でも親しい友人でも、そんなにうちに来ませんよね!」 私も改めて回数を数えたことがなかっ

切ない告白

もう随分前、まだ私が訪問看護師として駆け出しの頃の出来事です。 (あれから、Hさんとご両親はどうされたのか) ・・・・・・・・・・・ 難病で寝たきりの40歳代の女性、Hさんのお宅に週1回お伺いしていました。 徐々に進行していく病気で、自力での呼吸もままならず、顔にマスクを取り付けるタイプの人工呼吸器を使用されていました。 ねたきりの状態で、食事も排泄も、すべての生活について援助が必要でした。 Hさんはご両親と3人暮らしで、もうすぐ80歳を迎えられるご両親がHさんの