切ない告白
もう随分前、まだ私が訪問看護師として駆け出しの頃の出来事です。
(あれから、Hさんとご両親はどうされたのか)
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難病で寝たきりの40歳代の女性、Hさんのお宅に週1回お伺いしていました。
徐々に進行していく病気で、自力での呼吸もままならず、顔にマスクを取り付けるタイプの人工呼吸器を使用されていました。
ねたきりの状態で、食事も排泄も、すべての生活について援助が必要でした。
Hさんはご両親と3人暮らしで、もうすぐ80歳を迎えられるご両親がHさんの介護をされていました。
Hさんにはお姉さんがいらっしゃいましたが、お姉さんも同じご病気で、すでに他界されていました。ご両親はお姉さんの介護もされたそうです。
Hさんは、少し気ままにマイペースで過ごされることが多かったので、人工呼吸器を外され、身体の酸素濃度の値が正常値を下回ることが度々ありました。
私は毎回訪問のたびにHさんの血液データなどを示しながら、少しでも良いコンディションが保てるよう、生活の注意点や、人工呼吸器の使用法についてお話をしてきました。
ある日、Hさんのお父さんが私に向かって静かに言われました。
「あなたがこうして家まで来てくださって、
娘のことを思って、いろいろしてくださるのはよくわかる。
本当にありがたいと思っている。
でも、私たち夫婦も歳をとって、二人共もうすぐ80歳です。
長女も看取りました。
もう、私たちは毎日この子の世話をしていくことが本当につらい。
いっそ、早く死んでもらいたい・・・。
とさえ思ってしまうことがあります。
だから、
どうか、
もう、私たちをそっとしておいてください。」
Hさんは、お父さんの話を黙って聴いておられました。
Hさんのお母さんは、黙って下を向いておられました。
『これが現実なのだ』と。
その後、しばらくしてHさんの訪問看護は終了となりました。
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「看護師として求められる役割を果たすことに一生懸命だった自分。
何が正解だったのか。
本当は何をすべきだったのか。」
私には宿題が残されました。
Hさんご家族の事を思い出すたび、未だに私はその宿題の答えを出せていないことに気づかされます。明確な答えはないのかもしれません。
それでも、
今までも、今も、これからも。
あの時の
「自分の未熟さと答え」
自分自身に問い続ける事を忘れてはならないと思っています。
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