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訪問看護〜回想録〜

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訪問看護歴20年あまり。訪問先での出来事、思い出、学び。訪問看護いまむかし。
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2018年12月の記事一覧

くやし涙

訪問看護部門の中でも、あまり感情を表に出さず、冷静に淡々と仕事をこなすKさんが事務所に戻ってきたとき、珍しく涙をためていました。 どうやら悲しいのではなく、くやし涙のようです。 主治医の先生とこんなやり取りがあったようです。 彼女の受け持ちの利用者さんは微熱が続いており、経過観察していたのですが、血液検査の結果炎症反応が悪化していました。 ご家族も微熱が続いている事、検査結果が悪くなっている事、 「このままでは身体が弱ってしまうのではないか」と心配をされていました。

おみおくりのあとに

Kさん(女性)にお会いしたのは12月の初めでした。 「最期は自宅で過ごしたい」 という思いで退院され、自宅に戻られました。 2回目にお伺いした日、帰り際に私を追ってご主人が玄関先まで出てこられ、 「先生から、妻は余命あと1ヵ月と言われています。年越しはできないかもしれません。どうぞよろしくお願いします。」 そうおっしゃいました。 Kさんはお話を長くされると苦しくなるので、あまりお話はされませんでした。 それでも、 「○○がしたい。」「○○したくない。」 とはっきり意思

笑顔の贈り物

私が初めて担当したお子さん、Sちゃん。 生まれつきの心臓の病気で上手にミルクが飲めず、鼻から胃まで通した管でミルクを注入していました。 身体が小さく育ちもゆっくりですから、声をかけたりあやしたりしても、いつも知らんぷり。 ある日、Sちゃんは私に向かって、にっこりと笑ってくれるようになりました。 この仕事に携わっていると、 「人のために大変なお仕事ですね」 「こうやって看護師さんに来てもらって、本当に助かります」 などと、お言葉をいただくことがあります。 在宅療

答えの無い問い

Sさん。 武道を趣味とされ、戦後生まれの男性らしく無口で無骨な感じの方。週1回、状態チェックと、自宅での入浴の介助でお伺いしていました。 がんと診断され、余命3ヵ月と医師より宣告をうけてから、1年半が経ちました。 浴室でも自分からはほとんどお話しされないのですが、時々、自分からお話をされます。 「どうしてこんな病気になったのだろう?」 「余命3ヵ月と言われてから1年以上も生きているのはどうしてだろう?」 「もし、あなた(私に向かって)のご主人が同じ病気になったら、ど

一杯の紅茶

私が訪問看護に従事して、数ヶ月たった頃の、訪問看護師としては駆け出しの頃の話です。 Mさんは、自宅で在宅酸素をしながら過ごされていました。 徐々に食事が減り、うとうとされることが多くなり、いよいよ水分も取れなくなりました。 自宅にて点滴をすることになり、お伺いした時のことです。 ご高齢で、しかも数日食事をされていないので、脱水状態。点滴できそうな血管が見つかりません。 (この日、私は自宅での点滴の実施は初めてでした) 1回、2回と試みるも失敗。3回目も・・・すぐに漏れて

怒りの向こう側

Mさん。70代・男性。 呼吸器の病気があり、在宅酸素を使用。奥様が仕事をされているため、日中は1人自宅で過ごされていました。 病気がすすみ、少しの動作で呼吸苦が出現するようになり、今までは何とか1人で出来ていた事が1人で行うのが難しくなりました。 また、奥様の手を借りながらの入浴も、動作に伴う呼吸苦の為に困難となりました。 Mさんは、今まで1人でやってこられた方法や、こだわりが強くありましたので、ヘルパーさんの対応では身体のケアに関する援助は難しく、看護師の対応を希望され

めざせ、笑顔美人。

初めてSさんにお会いした時、Sさんは長い髪の毛で顔を隠すように下を向いてうつむいたままでした。 お話をしていると時々顔を上げられますが、表情は硬く、どこか瞳はうつろで目を合わせようとされませんでした。 Sさんは、メンタル科に通院し内服治療をされていました。 職場の人間関係のトラブルから不眠などの身体の症状が見られ、仕事を休みがちになり、やがて出勤ができなくなり退職されていました。 自宅にお伺いするようになって間もない頃の事です。 私がSさんとお話しをしていると、Sさんは自

4×12×5=240回!

週1回、Kさんのお宅に通って2年ほど経った頃の話です。 ご病気がありますので、 「あっちが痛い」「調子が良くない」 と言われながらも、毎週お伺いして、自宅での入浴のお手伝いをしていました。 そんなある日、介護されている娘さんがしみじみと私に言われました。 「昨日、計算してみました。看護師さんに月に4回来ていただいて、1年で48回、2年で96回! 100回近く、来ていただきました。親戚でも親しい友人でも、そんなにうちに来ませんよね!」 私も改めて回数を数えたことがなかっ