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競争の激しい市場で新ブランドを売る

今回は「ブランドを売る」についてあらためて考えてみましょう。簡単に言うと、ブランドを売るとは「いままでにない新しさを認知させる」ことと説明できるかもしれません。先週の日経新聞で連載されていた「ユニクロ秘録」はとても面白い記事でした。そのなかにNYの繁華街ソーホーでユニクロが旗艦店を出した時の苦労話が書かれています。

『足元から頭の上まで1列を同じ色にそろえて服を積み上げる「ボリューム陳列」は、ユニクロが日本で始めた店舗デザインの基本だ。特に壁際は、タペストリーをイメージしてカラフルな服の色であえて手の届かないところまで積み上げる。一目で圧倒的な品ぞろえとカラーバリエーションを客に訴求する狙いがある。客が手に取った服を棚に戻すと、日本ではすかさず店員がその場で折り畳み直すが、ソーホー店では何度言ってもそれができない。それどころか店員たちにとって不満のタネだった。「お客さんは服を広げてまた棚に戻すだろ。それをまた折り畳まないといけない。なぜそんな無駄な作業を押しつけるんだ」。そう言われれば確かにその通りだが、服を売る前に「ユニクロ」を売らなければ周囲のアパレル店の間で埋没してしまうというのが日下の考えだった。そのためには整然と並ぶボリューム陳列は欠かせない(日経新聞4月17日)』壁際にタペストリーをイメージしてカラフルな服をあえて手の届かないところまで積み上げる。これはユニクロの「ブランドを売る」ことに他ならないと思います。

記事にもあるように、この陳列そのものは現地スタッフには困難な作業だったのも事実です。しかしNYのような競争の激しい市場で、新ブランドを売るヒントがあるように思います。ブランドを売るとは必ずしもコアバリューを訴求することではなく「いままでにない新しさ」を見せることでもありますね。イノベーションというとカッコイイですが、ちょっとした工夫やおもしろさ、価値あるこだわりなどでも良いでしょう。NYではユニクロの特徴や服の差別性以上に「陳列」という意外な、しかし直観的に違いが認識できるポイントを推した。おそらく当初、NYの顧客はユニクロというブランドには興味なかったかもしれないけれど、「タペストリーのようにカラフルな服が整然と積み上げられた店内」には興味をひかれたと思います。そして結果、ユニクロというブランドが認知され買われる。必ずしもブランドのコアバリューを訴求する(正面攻撃)わけではないけれど、ブランディング開始の「側面攻撃」をイメージすると上手く理解できそうです。

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