自社の未来を見据え、リブランディングを実施。若手社員が中心となって進行し、その価値をカタチにするまで
自社サービスの変化に伴い実施された、ブックマークのリブランディングプロジェクト。エディトリアルデザインを中心とした制作会社から、体験やサービス全体に目を向けて設計していくコミュニケーションデザインを手がけるプロダクションへと成長を遂げたブックマーク。若手社員が中心となってプロジェクトを進行しながらブックマークの新しい価値(ブランド)の構築を図り、カタチにして社内外に発信するまでのストーリーをお届けします。
[designers]
リブランディングをするに至った背景として、自社のサービス内容の拡大に伴い、ステークホルダーへ向けてブランドイメージの刷新をしたかった
ブックマークは前身の制作会社である「株式会社正方形」から、正統派グラフィックデザインの技術を引き継ぐ形で2005年にスタートしています。主に印刷物のデザイン制作を行なっていましたが、紙媒体の需要減少が顕著となり、2014年からブランドコンサルティング、企画・編集を含めたツール制作の総合クリエイティブサービスを開始しました。
ブックマークのサービスは無形であるがゆえに可視化することが難しく、サービス拡大後も積極的な周知活動を行っていなかったことから、対外的に「印刷物のデザイン制作会社」のイメージからの脱却が図れずにいたことが課題となっていました。また社内でも人によって認識の違いが見受けられることもありました。
それらの課題に対して、市場における今のブックマークブランドの立ち位置やターゲットを見直し、社内外で浸透を図ることの必要性を感じ、リブランディング=新しい価値(ブランド)の再構築を行うこととなりました。
勤続年数は浅くても、リブランディングを進行することは、ブランドプランナーである自分のミッションのひとつとして捉えていた
リブランディングプロジェクトでメイン担当を拝命したことは、入社2年目の私にとっては大きな挑戦でしたが、入社当時からブランドコンサルタントと進行するプロジェクトに関わる機会が多かったこともあり、自社のリブランディングを遂行することは、ブランドプランナーである自分のミッションとして捉えていました。
むしろ社歴が浅いからこそ、目の前のことをがむしゃらに取り組めたと思いますし、勤続年数やポジションに関係なく挑戦する機会が与えられる社風であることも手を上げやすかった理由の一つです。
総力戦でブックマークの「らしさ」を追求し、カタチにしていく。目的を達成するために大切なことは、みんなが同じ方向を向いて一致団結すること
リブランディングの進行にあたっては、プロジェクトメンバーを選抜するのではなく、全員参加で行いました。一人ひとりが自分ゴト化できますし、みんなで同じ方向を向いて自社の存在意義やありたい姿を明確にしていくことで、結果的にモチベーションの向上や、自社の理念に沿った新事業の創造など、これからのブックマークの成長に欠かせない効果が期待できると考えたからです。
経営層へのヒアリングでブックマークの「らしさ」を引き出す
リブランディングの最初のステップでは、まず自社のブランドがどのように認知されているか、どのような強みや弱みがあるかなど、現状を把握するための事前準備を行いました。
次に、理念を再定義するための”要素出し”を目的として、経営層へヒアリングを行いました。事業についてや今後の経営計画、ブックマークが目指す未来などのビジネス面に加え、自身の生い立ちから現在に至るまでについても伺うなど、色々な切り口からブックマーク「らしさ」を引き出しました。
企業価値を高めるため、ブックマークの独自性やブランドイメージをメッセージ化
経営層へのヒアリングから引き出した要素を元に、まずは理念のたたき台をつくりました。ここから、より効率的かつ効果的なブランドの社内浸透を図るための具体的な実施プランを策定するため、グラフィックデザイナーとして長年の実績があり、現在ではコミュニケーションデザイナーとしても活躍している先輩デザイナーに参画いただきました。
こうして体制を整えた上で、全ての情報を共有し、それを資料に落とし込んでいきました。まずは理念の草案に対して社内アンケートを取りましたが、表現や本質的な部分に疑問を抱いている人の割合が半数を超える結果が出たことから、そもそも「なぜブランディングが必要なのか、何のために行うのか?」からの認識合わせからスタートしました。
当初、理念に関しては、ビジョンやミッション、行動規範など、合わせて11のメッセージを完成させる予定でしたが、”インナー目線だけで決めるのではなく、ターゲット側の目線にも立って、その効果を検証するべき”と、先輩デザイナーがステークホルダージャーニーを作成し、彼らの行動・思考・感情を時系列で可視化してくれました。その結果、ターゲットに届きやすく、十分な理解・浸透を図るために、明文化する数を整理した方が良いとの結論に達し、「コアバリュー(中核となる価値観/経営理念)」、「ビジョン(実現を目指すありたい姿)」、「ミッション(使命/存在意義)」の3つに集約することにしました。
先輩デザイナーの助言により、自分の中で”ターゲット目線”が欠けてしまっていたことに気付かされ、ハッとさせられました。当時のこの「気づき」は、現在自分が携わる全てのプロジェクトでしっかりと活かされています。
集約した3つのメッセージの中でも、コアバリューについては、企業が経営を行う上での中核となる価値観や信条になることから、候補案を複数作成しました。その中から1案を決定するにあたり、齟齬なく迅速に意思決定ができるよう、それぞれの方向性と、媒体に落とし込んだ時のサンプルイメージを可視化して提案しました。
候補の案ごとに作成されたサンプルイメージ
ビジョン、ミッションに関しては草案に対して社内アンケートを行い、従業員同士でディスカッションを重ね、都度ブラッシュアップをしながら完成させました。
ブックマークブランドの世界観を効果的に浸透させるために、自社の”強み”や”らしさ”を視覚的なデザインに落とし込む
理念のメッセージ化ができたところで、VI開発(企業の思想や理念を可視化したもの)のステップへ進みました。まずは企業にとっての顔となるロゴの検討から入りましたが、方向性やロゴの形態を検討するため、社内アンケートを取り、結果をポジショニングすることで構成要素を整理し、グラフィックデザイナーによるロゴデザインの制作と提案が行われました。
集まったロゴデザイン案に対し、主な方向性として3つに振り分け、改めて社内アンケートを行い、主となる方向性を決定しました。こうしていくつかに絞られたロゴデザインに対し、企業の「顔」となるシンボルマークについては、より多くの案出しを行いました。
シンボルマークについては100案以上集まりましたが、そこから4案に絞り込み、ロゴタイプとキーカラーについての検討へとステップを進めました。造形的な部分(見た目)と、ブックマークのブランドコンセプトを考慮することを判断基準として意見交換を重ね、最終的なロゴデザインが決定しました。
ロゴの決定後はレギュレーション(ロゴを使用するにあたってのガイドライン)を作成しました。ロゴは企業のブランドイメージの代表であり、理念や価値観などを表したもので、印刷物やWEBサイト、販促グッズなど、使用される媒体は多岐にわたります。レギュレーションに沿って掲載することで、ロゴを通して企業のイメージや魅力を最大限に引き出すことが可能となります。
レギュレーションでは、様々な使用状況を踏まえて縦形や横形などいくつかのロゴデザインパターンを設定したり、ロゴの縦横の比率やロゴ周りの余白(アイソレーション)、使用する色などを指定しています。
企業としての将来的な成長のために、刷新されたブックマークブランドを訴求していきたい
今回の自社のリブランディングでは、デザインの知見をフル導入して、ブックマークの”らしさ(ブランド価値)”を明確にし、見えるカタチにアウトプットすることができました。
社内的には、リブランディングのプロセスに全員参加したことで、一人ひとりが自分ゴトとして捉えることができ、ブックマークブランドの浸透を図ることができたと思います。従業員は自社に対して愛着や共感を持ちやすくなり、満足度も向上するでしょう。それがモチベーションや全体的な生産性のアップにつながり、企業価値向上に寄与します。人材の採用に関してもマッチング率の向上が期待できます。
このように、ブランドが社内にしっかり浸透することで、顧客の期待するブランド価値を提供できるようになり、顧客の満足度も高まるなど、対外的にも多くのメリットが生まれ、企業としての将来的な成長につながると思っています。
自社リブランディング経験をクライアントワークにも活かし、自分自身の成長にもつなげたい
自社のリブランディングプロジェクトのメイン担当として進行したことにより、先輩からのノウハウを学ぶ良い機会になったと同時に、多くの「気付き」を得ることができました。
ブランド構築においては、理念自体も大事ですが、理念を固めるためのフローの中で、企業の価値や大事にしていることを明確にしていくことが重要であり、その意義を広めていきたいと思いました。
ブランドプランナーと制作ディレクターを兼務しているため、ブランド構築をするプロジェクトばかりに関わるわけではありませんが、どのようなプロジェクトであっても、常に「ブランドの観点」を持つことを忘れずに取り組んでいきたいですね。そうすることでブックマークブランドの浸透を図りつつ、自身の成長に繋げていけると良いなと思っています。
─ F I N ─
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