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さまざまな自主提案で「見やすい・分かりやすい・使いやすい」にこだわった、とことん使い手目線のバリアフリーガイドブックを制作

一般社団法人千代田区観光協会が2019年4月に初めて発行した「くるりんちよだ」は、千代田区内全6コースのバリアフリー情報が掲載されているガイドブックです。ブックマークのデザイナーが企画・編集からアートディレクション、デザインまでを一貫して行いました。車いすやベビーカーなどを使用する人が千代田区をスムーズに移動しながら楽しく観光できるよう、とことんコンテンツにこだわって制作しました。

[designers]





このプロジェクトはコンペ案件だったかと思いますが、提案内容のどこがどのようにクライアントに響き、受注に繋がったと思いますか?

観光に関する基本的なコンテンツはしっかり伝えつつも、車いすやベビーカーを使用する人たちにとって見やすいレイアウトや色使い装飾を意識し、分かりやすく使いやすいコンテンツが詰まったガイドブックにするための企画を提案しました。
ひとつは「課題解決のためのコンテンツ」です。ガイドブックのサイズを、ユーザーが持ち歩きしやすいような形状のサイズに設定しました。また、当時別のプロジェクトで携わっていた2種のフリーアプリが観光をサポートできるのではと考え、ガイドブックと連動させた企画を提案しました。
もうひとつは誌面上での「楽しい仕掛け」です。必要な情報を平然と並べて装飾をつけるだけでなく、観光スポットへの訪問意欲を向上させるような楽しい仕掛けを考えました。


デザインをするにあたり、バリアフリーについての専門的な知見や情報が必要だったと思いますが、気をつけていたことや意識したことはありますか?

各観光ルートの担当者から受領した観光情報を元に、バリアフリー情報を発信しているNPO法人と密に連携し監修していただいた上で、ビジュアルをラフにおこして校正と修正を繰り返すなど、発信する情報に齟齬が生じないよう徹底しました。
進行の終盤ではガイドブックの使いやすさや正確さを確認するために、車いす利用者と現場検証を行いました。実際に観光ルートを歩いてみて、ちょっとした傾斜や段差などが大きな障害になりかねないことがよく分かったので、そういった気をつけるポイントなども、ガイドマップに反映させています。


テーマにある「見やすい・分かりやすい・使いやすい」にこだわったところを、具体的に教えてください。

一冊を通してユーザーニーズを満たすようなコンテンツの組み立て方になるよう設定しています。また、前述で述べた「課題解決のためのコンテンツ」や「楽しい仕掛け」が結果的に「見やすい・分かりやすい・使いやすい」に繋がっていくのですが、ここでいくつか具体的にご紹介します。

「インフォグラフィック✕簡潔なコンテンツ」で特定情報を目立たせ、ポイントを分かりやすく伝える

多くの情報を文字資料としてだけ紹介すると、文字を読み込むのに時間がかかったり、読み違えるなど、観光に支障をきたしかねないのに対し、インフォグラフィックは、多くの情報を短い時間で視覚的に伝えることができます。地図については元データを見やすいように全体調整し、その上に食事やトイレなど各種スポットのアイコンや、起伏チャートなどユーザーにとって有益な情報や、注意事項などを記載しています。

2つのフリーアプリと連動し、観光をサポート

YORIPアプリを起動させ、「くるりんちよだ」で検索すると、
ルートと現在位置が確認できる

車いすやベビーカーの利用者がガイドブックを開きながら移動することが難しいときなど、スマホでアプリを開きながら観光できると良いのでは?と考えた時にできた企画です。ひとつは「YORIP(ヨリップ)」といって、現在位置とルートが分かるアプリで、もうひとつは「@AR(アットエーアール)* といって、ルート上の実際の映像動画を、スマートフォン上で確認できるアプリです。映像については車いす利用者の目線で撮影しており、マップ上で複雑に見えるルートも事前に確認することで、より安心して観光できる仕様になっています。
*@ARは2023/03/31をもってサービスを終了しています。

観光客の行動・場面に適した観光情報を得られる楽しい仕掛けづくり

ガイドブックの巻頭では千代田区全体の魅力を伝えつつ、旅行診断で楽しみながらお好みのルートをチェックできる仕掛けをつくりました。初めての観光でもわかりやすいよう、各エリアの特徴やポイントを紹介しています。
巻末では、バリアフリー対応がされているご当地グルメやお菓子や雑貨の名店、由緒ある神社のお守りなどをご紹介しています。
各ルートのならではや食やショッピングの楽しみ方などが分かることで、観光への興味がぐっと深まるのではないかと思います。


実際にバリアフリーガイドブックを使って観光した方や、ガイドブックを目にしたり読んだ方からの反応などあれば教えてください。

主に「楽しい仕掛け」として提案した企画内容は自主提案になるのですが、お客様からは高く評価していただきました。
当時はバリアフリーガイドブックのニーズ自体が高いというわけではなかったようですが、時代の変化とともにその必要性が高まっている現状があり、最近では「くるりんちよだ」を目にしてくださった企業さまからお問い合わせいただく機会が増えてきていますね。

─ F I N ─

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