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【最近読んだ本】「本屋大賞2025」ノミネート作品を読んでいく
トップ写真は、「本屋大賞2025」ノミネートの10作品だ。今のところ7作品を読了。
先日、最近読んだ本の感想を一気に書いたが、その中にもノミネート作品が4冊入っている。
この記事はかなり雑な感想になってしまった。本を読み終えてから時間が経っているものもあったし、冊数も多いから丁寧に書けなかった。
夫にも「ちょっと16冊は多くてしんどかった。2つの記事に分けてもよかったんちゃう?」とダメ出しをされたし、自分でも読み返してみるとそう思う。
とはいえ、いまさら書き直す気力もなし。
とりあえず反省を生かして、読み終わったらすぐにnoteの下書きに感想を書いておくことにした。そして3冊たまったら投稿する。
うん、これはいい方法だ。
ということで、早速3冊分たまったので、アップしよう。
酒も飲まず、仕事もしなくなったら、私は本を読むくらいしかすることがないんだな。なんとも贅沢な生活だ。
ちなみに今回読んだ3冊のうち2冊は「本屋大賞2025」ノミネート作品だ。
⚫︎野﨑まど『小説』
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なんだか不思議な世界へと引き込まれていくようだった。
まるで昭和初期の文豪のような文体。細かな章立てなどなく(なんなら1行も空けず)、急に話が変わったりして戸惑う。
それでも読みにくいということはなく、むしろ心地よいリズムで読み進められた。
それとは別に、途中からずっと心がヒリヒリしていた。そういう物語だった。
内海修司という少年が、立派な父に褒められたい一心で幼い頃から本を読み始める。いつしかそれは「褒められたい」ではなく、ただ「小説を読みたい」の欲望へと変わっていく。
内海修司は小説を読み続ける。ありったけの時間を使い、小説を読みまくる。そのうち、外崎真という友達ができる。彼は勉強も身の回りのことも何もできないが、本だけは集中して読める。「読書」を介して2人は目に見えない友情を築き、共に成長してゆく。
ある時、2人は興味本位から、有名な小説家だという「髭先生」の屋敷に入り込み、その書庫での読書を楽しむようになる。髭先生の正体はわからないまま、親しくなっていく。
2人は大人になるが、大きな分かれ道にさしかかる。内海修司は小説を読むだけだが、外崎真は小説を書ける。そのことに気づき、外崎真は小説を書き、新人賞に応募する。
しかし、内海修司は……。
ざっくりしたあらすじはそんなところだ。
前半は理解しながら読めるが、後半になると突然ファンタジーのような世界になり、それがどうしても理解できなかった。何度か読めばわかるのかもしれないが。
「小説」というものが何なのか。何のためにあるのか。それを追求した作品だと思う。
忘れられない作品にはなったが、誰にでも勧められる本ではない、というのが正直なところ。
⚫︎宮島未奈『婚活マエストロ』
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同じ作者の「成瀬」シリーズを読んで面白かったので、これも手に取ってみた。
40歳になっても結婚せず、大学生の頃から同じマンションに住み続けている猪名川健人。職業は在宅ライター。と言っても、100%「こたつ記事」を書くWEBライターだ。月収は20万円ほど。なんとか一人で暮らしていける程度で、結婚も望めないし将来も明るくはない。
変わり映えのない毎日を送っていると、ある日、大家の田中から知り合いの社長がやっているビジネス「婚活パーティー」のホームページを書き直す仕事をしてくれないかと頼まれる。
流れで引き受けてしまい、まずは自分でその「婚活パーティー」に参加してみることにした健人。
その会社には「婚活マエストロ」と呼ばれる女性社員、鏡原奈緒子がいて、彼女の真剣な仕事ぶりを見ることになる。
さらに流されるまま、婚活バスツアーにサクラで参加したり、パーティーの手伝いをしたりするうちに、健人はだんだん婚活に興味を持ち始める。そして、いろんな人と出会ううちに、人との交流を楽しみ、少しずつ外に出ることが楽しくなってくる。
婚活パーティーってこんな感じなのか!と知ることもできるし、健人の心の変化や婚活マエストロの鏡原さんの仕事っぷりも興味深い。
登場人物が優しい人ばかりで、ほっこりとあたたかい気持ちにもなれた。
あと、これは読んだ人しかわからないことだが、『こち亀』のところが面白くて吹き出した。漫画のセレクトが絶妙!
作者のユーモアのセンスは健在だった。
婚活に興味がなくても面白く読めたが、未婚の人が読んだら婚活パーティーに行ってみたくなるかもしれない。
⚫︎阿部暁子『カフネ』
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小説を読んで泣いたのは久しぶりだった。「世之介」以来かもしれない。
悲しいというより、胸をかきむしられるような苦しい気持ち。せつなくて、やるせなくて、涙があふれた。
最初はこれがどういうジャンルの物語なのかよくわからなかった。
法務局に勤める国家公務員の野宮薫子が、急逝した弟、春彦の元カノである小野寺せつなとカフェで待ち合わせるところから物語は始まる。
春彦の遺言書に財産の一部を小野寺せつなにも渡すと書かれていたため、薫子はその手続きをしたくて、せつなを呼び出したのだった。
一瞬、ミステリーなのかな?と思う。法的な難しい話も出てきて、相続の裁判もの?とも思う。
しかしどちらでもない。
しばらく読み進めると、薫子が不妊治療の末に子どもができず離婚したことがわかり、「不妊治療がテーマ?」と思う。
それが、物語は予想もしない方へと進む。薫子はせつなが勤めている家事代行会社「カフネ」のボランティアに参加することになるのだ。
二人はコンビを組んで、さまざまな事情を抱えた家庭を訪問しては、2時間のボランティアを行う。薫子は掃除、せつなは料理。
二人は次第に打ち解け、一緒にご飯を食べたり、死んだ春彦の思い出を語ったりもする。
そういうバディもの?と思えば、春彦の死に関する意外な真相や生前の思いを知ることになり、物語はもっと奥深くへと進んでゆく。
いろいろな要素が詰め込まれているが、ブレずにあるのは、「人が思うように生きていくのは難しい」ということ。この「生きにくさ」というのは、例えばシングルマザーや老々介護などの目に見えるような「家庭環境」に限ったことではない。
周りの人の顔色を伺って、自分を押し殺して笑顔でいる人もいれば、周りに認められたくて努力の塊になって無理をする人もいる。
感情表現が下手でぶっきらぼうになる人もいれば、幼くて反抗的になってしまう人もいる。
親やパートナーの期待に応えようと必死になったり、性癖を隠そうとしたり。
多くの人が、というか、誰もが何かしらの「生きにくさ」を抱えて、それでも人は生きているのだ。
生きる、というのは、たぶんそういうこと。
でも、少しでも自分らしく生きようともがく。認められると嬉しくて安心し、誰かの役に立ちたいと思う。手を伸ばせば助けてくれる人もいる。
そうやって人は、誰かを助けたり助けられたりしながら生きていく。
これからの社会は、いわゆる「血のつながり」などは、価値がなくなっていくのかもしれないな、と思った。結婚して子どもを産むという「家族」ではない、いろいろな形の「コミュニティ」をつくり、そこで助け合いながら生きていくことが大事になっていくのではないだろうか。そんなことを感じさせられた。
この本のタイトルになっている「カフネ」とは、ポルトガル語で「愛しい人の髪に指を絡める仕草」のこと。日本語に訳すのは難しいニュアンスの言葉だとか。
この物語の中では家事代行の会社名にもなっているが、口に出してみると、優しい響きの言葉だなと思う。
「カフネ」
母が子に、あるいはパートナーや友人同士で、愛しい人の髪に指を絡める姿を想像してほしい。
それは尊いけれど、どこかせつない。
人は愛しい誰かの髪に指を絡める瞬間を強さに変えて、明日も前を向いて生きるのだ。
今回読んだ『小説』と『カフネ』は「本屋大賞2025」にノミネートされている。
まだ全作品は読んでいないが、もし私が本屋さんなら、今のところ『カフネ』に1票!
残り3冊も近々読むつもりだが、『カフネ』を超える作品に出会えるかな?