天使の骨が掻き出してくれた文章

天狼院書店と言う、
とても面白い本屋を知ったのは、
一昨年くらいだったと思う。

ちょうど京都に月数日通っていて、
いつか立ち寄ってみたいと思いつつ、
ようやく行けたのが、今年のお盆。

行くまで随分と助走が長すぎたが、
社長の三浦さんともご縁が出来て、
天狼院愛好者の末端におじゃましてる。

先日、社長みずから講義する
「最強の読みつぶし術」と言う講座を受けた。
社長みずからと言っても、
以前に講義した時の映像を使ったものなので、
超多忙な三浦さんのお時間を有効活用した形式だ。

講座の内容は、お伝え出来ないけど
その受講者特典で、
月4回1カ月間の
リーディングハイ参戦権をいただいた。

良い文章は、天狼院書店公式ページに
リーディングハイシリーズとして
掲載してもらえる。

さて、どの本を選ぼうか。

自宅、実家に積み上げられている
私の好きな本を思い浮かべようとして、
ふと、脳内本棚から選んだのが、


中山可穂さんの初期作品
劇作家王寺ミチル3部作、第2作目の
「天使の骨」だった。


中山可穂さんの作品に出逢ったのは、
「白い薔薇の淵まで」だ

そして、2作目に出逢ったのが、「天使の骨」

王寺ミチルの魅力に捕まってしまってから、

「猫背の王子」、「ジゴロ」、「サグラダファミリア」と

可穂さんの書く、

女が女をごくごく当たり前に恋し愛する小説に

自分の干からびそうなセクシャリティの一部分を
甘露のように潤してもらった。


ミチルさんの作品をどう紹介するか?

LGBTを前面に押し出すことは簡単でインパクト有るけれど、
それはミチルさんの生きざまと違う。

私にとって、「天使の骨」は、旅行日記である。
ミチルさんが、まだ書いてもいない戯曲の原稿料として
いきなり贈られた100万円を使いきる為に出た、
宛もない漂流の旅。

旅は、人をダメにもする。
旅先で突然帰らぬ人になる場合は多い。
ミチルさんも、最初はそれを願っていた。
けれど、天使の亡霊を連れたまま、
宿命的に恋して、過去を昇華する復活の旅になった。

そうだ、旅をしたい。
ミチルさんの日記とともに。

そう思い付いたら、自然と
最初の書き出しが浮かんだ。

私の脳内を天使の骨がそっと掻き出してくれたのだろう。


画像1


中山可穂さんが美しい言葉で織り成す主人公たちは、

自分たちのセクシャリティに正直だ。

正直なせいで、時に嵐がやってくる。

恋愛が、骨身を削るほど
エネルギーを使いきる感情だからこそ、
これ以上無い、歓びがある。

そう、教えてくれる。


自分のセクシャリティを自覚することは、
本当はとても簡単で自然なのだ。

でも、世間の「ふつう」が
その自覚を「無かったこと」にさせてしまう。


LGBTも、他のセクシャリティも
ただの人間だ。


あなたと違う部分は、色々有る。
でも、同じ人間だ。


一人の人間が恋して、感情に突き動かされる。

そんな小説を是非読んでほしい。


にじの青


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