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言葉のひとひら『あなたのための短歌集』
少し疲れたとき、わたしには詩や短歌が効く。
心も体もいっぱいで、もうこれ以上何も入らないと思うとき、詩や短歌をただ眺める。
なにが書かれているのか、意味は考えない。
ただ眺め、その言葉のもつ音が、頭の中を流れるままにする。
ぼうっとした頭を、言葉はただやさしく通り抜けていく。
ひらひらと通りすぎていく言葉たち。
考えることを要求しない言葉たち。
ふいに、言葉のかけらが反射する。
わたしの中のなにかが呼応し、言葉がひとひら、きらりとひかる。
なぜ光ったのか、何に呼応したのか、そんなことも考えない。
ひかる言葉はただひかる、そのままゆるゆる続きを眺める。
ときどき涙が出たりもするけれど、それもこれも放っておく。
出たい涙は出ればいい、そのままゆるゆる続きを眺める。
言葉のひとひらひとひらがいつの間にか降り積もり、ひかる言葉でわたしは満ちる。
まぶしいような気持ちになって、まぶたが落ちる。
わたしは短い眠りにおちる、ひらひらひかる言葉の中で。
目が覚めたとき、わたしは少し、回復している。
詩や短歌の効能だ。
* * * *
最近わたしに効いたのは、
『あなたのための短歌集』。
歌人・木下龍也さんが個人販売した短歌だ。
依頼者からメールで届くお題をもとに、木下さんが短歌をつくり、便せんに書き、封書にして届ける。
そんなとても個人的な短歌の中から、依頼者からの提供があったもの100首を集めた短歌集。
とてもとても、素敵だった。
胸に響く短歌にふせんをつけていったら本がふせんだらけになってしまったのだけれど、その中から少し、ご紹介します。
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お題:
教室を生き抜くための短歌をください。
お返事の短歌:
違いとは間違いじゃない窓ひとつひとつに別の青空がある
お題:
好きなものや好きな人をずっと大切にできる、やさしい祈りような短歌がほしいです。
お返事の短歌:
宝箱あけっぱなしにしておくよこわれたままで帰ってきてね
お題:
まっすぐに生きたい。それだけを願っているのになかなかそうできません。まっすぐに生きられる短歌をお願いします。
お返事の短歌:
「まっすぐ」の文字のどれもが持っているカーブが日々にあったっていい
お題:
長い間、片想いしていた相手がいます。もう前に進もうと決めました。背中を押してくれる短歌をください。
お返事の短歌:
ふりむけば君しかいない夜のバスだから私はここで降りるね
お題:
バナナが好きな娘(現在、1歳7か月)が将来、落ち込んだときに読み返す短歌をお願いします。
お返事の短歌:
実家にはいつもバナナがある きみがふいに帰ってくる日のために
お題:
特別に幸せでなくてもいい、平凡でありきたりだけど穏やかな暮らしがしたいという気持ちを短歌にしてください。
お返事の短歌:
ゆらしてもそめても君という海がかならずとりもどす凪と青
お題:
自分を否定することをやめて、一歩ずつ進んでいくための短歌をお願いします。
お返事の短歌:
きつく巻くゆびを離せばゆっくりときみを奏でてゆくオルゴール
* * * *
お読みいただき
ありがとうございました。
どうぞ素敵な一日を!