ハローキティ新幹線に乗って南仏の光の中へ|ふくやま美術館「芸術家たちの南仏〜ピカソ、マティス、シャガールたちの楽園と逃避」
🌼 芸術家たちの南仏〜Rendez-vous dans le Midi(南フランスでの邂逅)
地中海に面した南フランスは、風光明媚な土地柄から、多くの芸術家を惹きつけてきました。また、二度の世界大戦をくぐり抜けた歴史の荒波のなか、南仏に逃避し、また南仏から逃避した芸術家も多く存在しました。
ふくやま美術館《芸術家たちの南仏》では、そういった画家たちにスポットライトをあて、彼らの交流や共同作業、互いへの影響にも注目しつつ、ひとりひとりの芸術性の鮮やかな発露を味わうことのできる、とても良質な展覧会でした。
シニャックに始まり、ドラン、ボナール、デュフィなどおなじみの画家たちの作品を、南仏という切り口で改めて見つめていると、グラースやサント=マルグリット島で見た明るい日差しと豊かな花の色彩を思い出します。
パトリック・ジュースキントの幻想小説『香水 ある人殺しの物語』を読んだ影響で、南仏旅行の主目的のひとつとして訪れたことのあるグラースの香水工場は、やわらかな花の笑いさざめく声が聞こえてきそうな華やかさでした。それを、ボナールの絵に見かけたようで、心地よい懐かしさに気持ちがほぐれてきます。
ピカソの陶芸、マティスのタペストリー、レジェの陶板など、絵画平面とは違う素材は目新しく──特にピカソは、大胆な筆致と綺麗な発色を、陶器のつややかな釉薬が引き立てていて、相性の良さを感じました。
シャガールは、どの絵も基本的に好きだと思う画家の一人なのですが、彼らしい青、緑、赤が引き立つ大作『ダヴィデ王の夢』は圧巻でした。ふたつの世界大戦を抜けたあとの1966年の作品で、男女が子どもを抱く姿を中心に、それを取り囲む祝福と希望とが、2m×2.5mのカンヴァスに幻想的に描かれています。
人生に聖書を反映させたいと願い、また、愛を主題として描き続けたシャガール。そのため、世界とのつながり方も描く絵も象徴的で、自然を超えたところにある表現主義。想念のなかに光と夢とを充分に保っていてこそ成し遂げ得た生き方なのかもしれません。
(『ダビデ王の夢』は下記特設サイト内〈04 モダン・アートが南仏に遺したもの〉で閲覧できます。)
【展覧会概要】
ふくやま美術館 開館35周年記念特別展Ⅱ
芸術家たちの南仏
ピカソ、マティス、シャガールたちの楽園と逃避
2023年10月7日(土)~12月10日(日)
月曜休館
🎀 ハローキティ新幹線
新大阪〜博多運行の新幹線こだま号。
これまでなかなか機会がなく、今回初めて乗ることができました。
🌹ばらのまち 福山
薔薇の街・福山市は、駅の回りにお城や美術館が集まっており、短い時間でコンパクトに観光できる良い街でした。いろんな施設、通りに、思ったよりも少し広い"余裕"があって、気持ちのいい街です。
再来年には「第20回世界バラ会議 福山大会 2025」も開催されます。薔薇のお好きな方にもオススメです。