<「中禅寺先生物怪講義録 先生が謎を解いてしまうから。」7巻 感想>前京極謎解話
Amazonにレビューしたものです。
★★★★☆
ご存知京極夏彦氏の「百鬼夜行シリーズ」を、志水アキ氏が漫画化したシリーズ。
姑獲鳥から絡新婦までは順番が変わりながらも漫画になったのだが、塗仏にはいかず。
時間を遡って、京極堂が京極堂になる前の、高校教師をしていた頃の話になった。
ある意味新作になるのだろうか?
こちらももう7巻となって、すっかり木場さんもお寛ぎのご様子となっている。
主人公は、このシリーズで初めて出てくる(と思われる)栞奈ちゃんという女子高校生。
彼女は、色んな意味で癖の強い原作からの一味に比べると、くるくると表情の変わる感情豊かで好奇心の強い、明るい女の子である。
京極堂のくりなす怒涛の蘊蓄は少なめで、漫画でイラストもついているのでわかりやすい。
女子高生と高校教師が謎を解くという学園推理ものという感じで、原作の凄惨奈事件よりは軽い内容が多い。サイコロ本と称されるいろんな意味で凶器となりうる原作本と比較すると、全体的に読みやすくとっつきやすくなっている。
京極堂も和装ではなく仕事でスーツに髪も後ろにまとめていて、仕事のできそうなビジネスパーソンだったり。
原作と続いてはいるものの、少しテイストの違う番外編といったところだろうか。
舞台は戦後まもない日本。
原作はどうしても字だけなので、着物や道や建物といった当時の生活がビジュアル的に見ることができてありがたい。
今年で令和も5年となり、昭和も遠くなりにけり。
とは言え、私の亡くなった父方祖父は従軍しており、おそらく中禅寺たちの世代になる。昭和25年生まれの父が生まれたのはこの頃だろうか。
私の知っている人たちが生きて生活していた、私の知らない時代。
今より少し命が儚かったと聞いている時代。
だが、
笑い泣き怒り、食べて飲んで、学び働き遊び、恋をして、子を産み育て、子は親に甘えて育つ。
人々の、今と変わらない、いや、むしろ、だからこそ、生き生きした生活を過ごし、人生を生きていた。(最後の粘菌告白はウケた)
そして、時に謎を解いていた、、、かもしれない。
さて、私が京極堂に出会ったのは、今を去ること20年以上前の学生時代。
面白くて面白くて夢中で朝まで読み耽ったものである。
おそらくこの漫画を読まれる方は原作を読んで好きでこちらに来られた方だと思われるが、もし未読の方がいらしたら、ぜひ読んでいただき一緒に朝まで過ごしていただきたい。
私を推理小説好きにした二大作家の一人に感謝(もう一人は森博嗣氏)しつつ、原作シリーズを生きている間に完結させていただきたいと最後に希望しておく。
そして、敦子さんと一緒に大人になった栞奈さんに会わせてほしい。