アルスラーン戦記 20巻 【ネタバレありマンガ感想文】 人を愛し民を想い国を創る
★★★★☆
Amazonでレビューしたものです
0.神と剣と魔の時代
中世ペルシャ風のパルス王国に、一神教を信じ他の宗教を頑なに認めないルシタニア王国の軍が攻め入った。繁栄をほこり強大な軍を有するパルスの圧勝と思われたが、アトロパテネ平原での戦闘で思わぬ大敗を喫する。その影にはパルス将軍のルシタニアへの寝返りと、怪しげな魔道を使うものたち、そしてルシタニアに協力する銀仮面の男の策略があった。国王と王妃は捉えられ王都は侵略支配されパルス国民の血の雨が降る。
国王の一子・王太子アルスラーンは、14歳。この戦いが初陣だったが、万騎長ダリューンとともに2騎で敗走して追手の手を逃れ、ダリューンの旧知である智将・ナルサスとその従者で元奴隷のエラムを仲間にする。その後も、女神官ファランギース、楽師ギーヴなどの頼もしい仲間たちを得てルシタニアの手をかいくぐり、まだルシタニアの手が及んでいない東のペシャワール城へ辿り着く。
東に残った将軍と兵たちと王都奪還を目指すが、パルスの状況を見た、インドっぽいシンドゥラ国、モンゴルっぽいトゥラーン国の攻撃を受け、それぞれを退ける。その中でたくましく成長しつつ、ナルサスに真の王とは政とは正義とは何かを教わり、奴隷制の廃止について考えるようになるアルスラーン。しかし、銀仮面の男は現王の兄の息子で、現王に暗殺されかけ生き延びたヒルメス殿下であり、アルスラーンは現王の血を引いていない可能性が浮上。己について思い悩み始めるアルスラーン。そこへ脱走した王と王妃が逃げ延び、アルスラーンは王によって5万の兵を集める指令を受け、事実上の追放されてしまった。わずかな仲間と共に南の港町へ向かい、再度兵を集めることに。
一方、王都を占拠したルシタニア軍の中でも、徐々に綻びが始まった。国王はパルス王妃にうつつを抜かし政を王弟ギスカールに丸投げ。大司教ボダンは国王や王弟に反旗を翻して遁走。さらに王弟と手を組んでいたヒルメスも、パルス将軍を味方にして兵を集め袂をわかった。ヒルメス軍は王都をルシタニア軍から奪取したが、都は水も壊され宝物も奪い取られ荒廃し切った状況にされていた。そんな、ヒルメス軍の占拠する王都へ国王軍が向かう。
一方、都から移動する王弟ギスカールの軍に対し、アルスラーン軍が、アトロパテネの平原で再度激突する。そこへ魔道にそそのかされたボダンの軍が両者に襲いかかった。
1.狂犬の最期と投げた王弟
ボダンは打ち取り、ギスカールは捉えられたが解放されました処刑しないのは甘いような気もしますが、ナルサスによるとアルスラーン軍もギリギリだったそうです。なんと言っても、ギスカール軍10万に、アルスラーン軍3万弱ですからねえ。
ギスカールの対応からルシタニア王がまだ生きていおり、そちらを捉えれば今後の交渉はできそうなこと、下手にギスカールを捕虜にして全力で取り返しにこらえたら対応できなだろうと予想しての解放なんだそうで。
久しぶりに黒衣に黒馬のダリューン卿の強さを見せつけられました。強いぞダリューン、格好いいぞダリューン。
2.王家の秘密、アルスラーンの秘密
そして後半は、王都に忍び込んだアンドラゴラス国王とヒルメス殿下の対話。パルスの血塗られた秘密について語られます。叔父と甥と思っていたのに、実は、、
時を同じくして、国王軍内にやってきたアルスラーン。タハミーネ王妃は、王子が自分の生んだ子ではないと告げました。
母親って残酷だな、と思います。自分の生んだ子については珍しく感情を露わにした王妃ですが、アルスラーンには一貫して冷たい対応。自分が産んだのでなければ当然自分の子ではないと。それでもここへきてやっと出生の秘密を打ち明けるのは、何らかの気持ちの変化が起こったからだと思いたいですね。
3.愚かな血統主義に風穴を
上のギーヴの言葉に私は全面的に賛成です。
最近の漫画は本当に血統主義が多くて、いい生まれでないといい主人公になれないと言わんばかりです。それはつまらないですね。
こちらの漫画は元々は前の作品ですが、そういった血統主義に一石を投じてくれると嬉しいです。
さらに現実の政治に対しても一石どころか、十石ぐらい投じてぶっ壊してほしいですね。
民主主義の良いところは、人が入れ替わるところです。なのに現実は、子孫へ引き継がれては、実質独裁になってしまっています。そんな血統かアホな有名人しかおりません。それを選ぶ国民も愚かということなのでしょうか。。。
生まれでも血でもなく、能力によって、国を創る理想によって、そして国民への思いやりによって、選ばれてほしいです。
また、人間は血によってではなく、能力により人格により尊重されるべきであり、そのように社会も変わっていってほしいですね。
よろしければこちらもどうぞ〜