3月のライオン 17巻 【ネタバレあり読書感想文】 人になった零、鬼になる開
★★★★★
Amazonでレビューしたものです
前巻が2021年9月なので、2年弱経ってます。
さすがにお話を忘れてしまいました。
この巻は、
前巻から引き続き桐山VS二階堂戦と、島田研究会の島田さんを、あかりさんの料理でサンドした、辛甘辛甘構成になっています。
辛さが気になりましたので、それについて。
1.長生きしたい二階堂
彼女ができてフニャけた桐山に、疑念を抱きしっかりさせようと思う二階堂。
ライバルがいなくなると強くなれないから。
二階堂は病気を、桐山は孤独を、それぞれバネにして、子供の時から頑張ってきた同志でした。
しかし、人生が楽しくなった桐山は、将棋も楽しみ、二階堂の上を軽やかに飛び越えます。
二人とも将棋しかなかったはずなのに。
敗北し体調を崩し入院した二階堂は、長生きしたいと島田に語ります。長くみんなと将棋をさすために。
ちょっと二階堂が可哀想になりました。
が、なぜかますます仲良しになる二人。
なんのこっちや。
2.島田の微笑み
例によって島田研究会にみんなが集まって楽しくすごし、島田さんがみんなの面倒をみています。退院した二階堂に、なぜかスミスまで。
島田さんはいい人です。
今までずっと後輩の面倒を見て、入院した二階堂の面会に行って励まし、故郷の人々をサポートして、師匠の心配もしてきました。林田先生の介抱までして。
彼の周りにはみんなが集まり、みんなに好かれています。
いい人ぶりたい、だけでは続かないでしょう。
一方で、全てを捨てて全てを賭けてタイトルへの執念を燃やし続けてきた、執念の人でもあります。
彼女と将棋で、将棋を選んだ人でした。
自分のものだった女が、他の男のものになり愛の結晶をだいて幸せに微笑む光景。
いや、辛いよね、苦しいよね、憎らしいよね、わかるよ。
でも、山形から東京まで連れてきて結婚もせずほったらかしじゃあね。捨てられてもしょうがないよね。
そんな辛さを糧にがんばろうとする島田さん。どんだけMですか、貴方。
今、島田さんは、いい人の自分と、将棋への執念を、行ったり来たりして、そんな自分に密かに悩んでいます。
しかし、次の対局は桐山です。
彼女に牛乳を買って帰るラインをし、幸せそうに帰っていく桐山を見て、島田さんは喜びます。
よかった幸せそうで。
よかった人間らしくなって。
そして、ほくそ笑みます。
これなら、勝てる。
怖いねえ。
ゾクゾクしますよ、島田さん。
久しぶりにいいもの見ましたわ。
星5つですわ。
島田さんは、最初に頭に血が昇っていた桐山の頭をかち割って、目を覚させてくれたA級棋士でした。
それから桐山は研究会に入り、島田さんは、桐山を助け、成長を導き、見守ってくれました。
あかりさんを紹介したりもして、いい先輩後輩関係を築いてきました。
しかし、彼らは、決して仲良しこよしの先輩後輩ではなく、奪い合い競い合う競争相手であり、敵であります。
コラムにもありますが、なかなかわかりにくい関係ですよね、将棋仲間って。
個人的には、島田さんには、人間としての幸せを掴んでほしいと思います。
いい人だからというのもありますが、このままいくと将棋でタイトルが取れないところまできた後、彼に残るものがないからです。
でも彼はその道を選ばないで今まで生きてきました。
きっとこれからも選ばないでしょう。
そこまでしないと辿り着けない道なのか。
そこまでしても辿り着けない道なのか。
何かを得るためには同等の代価が必要なのか。
両方を掴むのは、欲張りなんでしょうか。
3.ラストスパートに向けて
この連載も長期間にわたり、前の巻から2年の歳月が過ぎています。
連載中に作者の羽海野先生は、お身内を亡くされたり、病気で入院したりと色々な人生の節目を経験されてこられた様です。
私も飼い猫を2月に見送りました。身を切られるほど辛かったです。が、他の猫たちが支えてくれています。先生に新しい出会いが訪れて何よりです。
ベルセルクの例もあり、漫画家さんは我々が思うよりよっぽど重労働のお仕事なのでしょう。
病をおして倒れるまで将棋をさす二階堂や、すべてを捨てて将棋にうちこむ島田の姿が重なります。
心身ともにお大事にしていただき、どうか最後までお話しを紡いでいただけたらと、願っております。
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