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#ss
Fishbowl with mirror surface【SS】
青いばかりの中、ぼくらは存在していた。
複数のぼくら。色んなぼくら。
そこは、ぼくらがいっぱいで少しだけ息苦しかった。
そんなある日、ぼくは、『ぼくら』の中からすくわれた。
『ぼくら』から、『ぼく』になった。
青い場所よりも狭く、だけど広い。息苦しさもない。
ぼくは、
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
どこまで廻っても追ってくる、『ぼく』を見つめながら進む。
『ぼく』とは
あおい鳥のゆくえ【SS】
その人はいつも路地裏で膝を抱えていた。
普段は夕方、いつもすぐ傍の大通りで賑やかに芸を披露している。そんな人。僕はそれを、いつもスクールの行きに少しだけ目にしては、時間に追い立てられ名残惜しく通り過ぎる。
手品やジャグリング、あるいはその両方で自在なパフォーマンスを披露していて。
繰り広げられた珍しい見世物に人はよく足を止めたが、活気を失ったように人の集まらない日もあった。殊に、彼が初めて
まさか先を越されるなんてね
いつか別れが来ると知っていた。
求婚し、されて番になり、子を無し血を繋いでいくことを良しとするだけの生き物。
同じ「生」を持ち、違う「種」に産まれただけ。
「やあ、元気かい」
朝になるとそう言って窓を開けて、彼は私を迎えてくれる。
夕刻なんとなく帰りそびれた私を見つけると部屋に入れてくれた。一緒に寝たこともある。
私が小さかった頃、怪我をした私を手当てしてくれた彼はまだ少年の色を残し
手折ってしまえたらどんなにか
窓の外を小さな花弁が無数に舞っている。
そんな様をぼんやりと見つめていた。
「あなたの好きな花はなんですか」
不意に隣で足を止めた人が言う。
私はその人をちらりと横目で見て、また、外に戻した。
「花は嫌いです」
「どうしてですか」
「いくら希っても、その姿を留めておけないから」
隣に立った人が少しだけ空気を揺らす。
笑ったのだと、思った。
「それでもまた、来年咲きますよ」
触れる
満たされなかったものは
「お腹が空いてるの」
彼女が呟いたので、僕はポケットから飴玉を取り出す。
人形のような表情で、暗い瞳が差し出したそれに一瞥をくれる。
つまらなさげに顔を背けて、要らない。と吐き捨てた。
彼女が受け取らなかった飴玉を僕は口に放り込む。
「食べたいと思っていたものを目の前で食べられる気持ちって、今の君にわかるかしら」
ちらりと視線を送られて、僕は口の中の飴玉をうまく舐められない。
静まり返