
棚の本:狼の幸せ
「狼の幸せ」は、北イタリア、モンテ・ローザ山麓のふもとの集落フォンターナ・フレッダが舞台の小説です。作者は、パオロ・コニェッティ。
現在、同じ作者の「帰れない山」が映画館で公開中です。
くまとら便り
本屋さんで「狼の幸せ」を見つけました。
表紙はアルプスの山の絵。
カバーのそでには、山男風の男性作家の写真と、作家が1978年にミラノに生まれ、「帰れない山」でイタリアの文学賞を受賞したこと、恋愛小説を構想して本書を記したことが書かれていました。
山男風のイタリア人男性作家が書く、アルプスの恋愛小説。
棚主と、一番関係が薄い本のような気がしました。
ブックマンションの棚主を始めたのは、自分一人では手に取らない本を読んでみたかったからで(長い間、小説もほとんど読めていませんでした)、あえて接点がなさそうな小説を、選びました。
そう、完全に自由な選択のはずでした。
がしかし。少し前に読んだ滝口悠生の「ラーメンカレー」は、そういえば、イタリア旅行の話や、窓目くんが恋する話で、明らかに、ダイレクトに、その影響しか受けていませんでした。
しかも、偶然にも窓目くんが恋をしたのはシルヴィで、「狼の幸せ」で人生に疲れた主人公ファウストが恋仲になるのは、シルヴィアという若い女性なんですよ。
わたくしの自由意志とは。
さて、「狼の幸せ」は全部で36章あり、短編小説のように、1章ずつゆっくり味わいながら、それぞれの物語を読み進めることができます。
恋愛の要素は予想より少なめで、モンテ・ローザ山麓の自然やフォンターナ・フレッダの人々の暮らしが、静かな筆致で描かれています。
映画「帰れない山」の予告編を見ていただくと、モンテ・ローザ山麓の雰囲気をより味わっていただけるのではないかな、と思います。
そのほかのことー食い意地編
山の男たちは、主人公が働くレストランでも決まったものしか頼まないので、グルメ小説では決してないのです。
ただ、時折出てくる食べ物の記述に、どうしても興味を惹かれて、メモしてしまいました。
「大量のサルシッチャを簡単に油抜きする方法」
「パンを一枚切ると、オリーブのパテを塗ってから、トーマチーズをひとかけら載せた」
「生トマトと山羊の乳のリコッタチーズに野生のタイムを和えたオレッキエッテパスタ」
「焼き栗」
「マリオ風じゃがいも」
「サンブーカはアニス系の甘いリキュールで、好みでコーヒーに」
「フォンデュソースのタリアテッレパスタ」
ーああ、これ、きっとあれですね。
この前の「ラーメンカレー」の選書だって、タイトルからしてダイレクトに、棚主の食い意地が働いていますね。明らかに。
書いてみると、後から分かることがあります。