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ただのイチファンから見た「ドラゴンズが長年欠くモノ」

写真=ホームランを打って戻ってきた細川を迎えるベンチ。もっともっと盛り上がっていいじゃないか! photo/@matsudragons0411さんのInstagramより

噂には流されない

 成績が低迷すれば、良い話など聞こえてくるはずもない。それがワースト記録更新の連続ともなればなおさらのこと。毎日毎日、監督の責任問題をはじめ、チーム内の不協和音がまことしやかに取り沙汰され、フラストレーション極まったファンをさらに刺激する。もはや暴風雨どころかすっかり巨大ハリケーンが吹き荒れている状態だ。

 1989年、西本聖の移籍に併せて以来35年、ドラゴンズ一筋でいる私ももちろん、この10年あまりは大きなストレスを積み重ねてきた。だが、それにしても目を覆いたくなるような言葉の数々に、むしろ冷静さを取り戻させてもらっている。

 競技は違えどメディアの端くれでもあるがゆえ、「自分が見たもの聴いたこと」しか信じない。「火のない所に煙は立たぬ」とは言うものの、現場にしかわからぬ事情がある。「噂はあくまでも噂」。ドラゴンズを取材する記者も知人にいるが、これに関してはあくまでもイチファンを貫きたいので敢えて訊ねてこなかった。だからここに書くことも、ただのファン、ウォッチャーとして見て感じたことだけである。

たんなるファンが感じる問題点

★バッター編
①チャンスに打てない。チャンスなのにピンチのような挙動をしている
②進塁打を打てない
③犠牲フライを打てないどころか、内野ゴロで得点できるにもかかわらず、それすら打てない
④難しい球に手を出し、甘い球を見逃す。甘い球を仕留めきれずファウルにする
⑤ストレートを打ち返せない。空振り、ファウルが多く、捕えても打球が弱い
⑥打席で粘れない。相手投手に球数を投げさせられず、フォアボールも奪えない
⑦バントをできない。空振り、ファウル多し
⑧走れない。足の速い選手はたくさんいるが、仕掛けない。偽走すらせず、相手にプレッシャーを与えない

★ピッチャー(バッテリー)編
①ストライク先行できない
②ストライクを取れず、フォアボールでランナーをためる。そうして作ったピンチに粘り切れない
③高低を使わない(使えない)
④基本的に外角低めしか使わない

★守備編
①球際が弱い
②お見合いしての落球、パスボールが多い
③送球が悪い
④前に落ちそうだが捕れそうなボールにチャレンジを仕掛けない

 もちろん全員が全員そうではないし、様々な要因が重なって実現できないこともあるだろう(読みが外れたとかポジショニングの問題とかサインとか。頼りない打線に試合前から受けざるをえないプレッシャーとか)。しかし、これだけ挙げられれば、今の順位はおろか、膨大な借金も納得である。

 打てないなら打てないなりにどう得点するか。そこが積み残されたまま。毎年毎年、同じピッチャーに抑えられ、同じバッターに打たれる。良い投手、強打者にやられるのはしかたない面もあるが、相手の心を揺さぶるような工夫が足りない。不調の選手や、ルーキー、昇格したばかりの選手に活躍されてしまう。挙句の果てに、負傷明けの選手のリハビリの場と化している。ナメられたもんだが、ナメられてもしかたない。

 技術的に拙い。もちろんあるだろう。メンタルが弱い。それもそうだろう。でも、戦力が薄いとも思わない。個々の選手が持っている能力を出し切れていないと痛感するからである。
 チーム内で徹底されたものを感じない。まるで選手個々が勝手にプレーしているようで、「打線」が線になっていない。点在したまま。そこは現場スタッフの責任が大きい。

エネルギッシュさが欠けている

 長年、最も不思議でならないのは、エネルギッシュさに欠けていることだ。プレーぶりはもちろんだけれども、いちばん疑問で不満なのは、ベンチのムード。負けているときはそうなってしまうのもわかる(本当は負けているときこそ活気を出すべきだ)が、勝っているとき、得点したとき、抑えたときすらそうなのは異常である。
 ホームランを打った選手を迎えるとき、ピンチを脱した投手やファインプレーした野手を迎えるときも、何だかしらけた雰囲気で、ただ手を出しているだけ(にしか見えない)。最強のプロフェッショナル集団で、各自が高度なプレーを当たり前のように黙々とこなしていたあの黄金時代でさえ、もっとエネルギッシュに出迎えていたというのに。

「黙々と無表情でプレーする」あの時代のスタイルだけが伝統として残っている感じだが、そもそもそれは彼らが真のプロフェッショナルだったからこそサマになっていたのであって、若年齢化した今の選手たちが真似しても、それはただたんに「覇気がない」ように映ってしまうだけだ。
 ひょっとしたら、彼らはもっと明るく振る舞いたいのに、何かが邪魔をしているとしたら、時代錯誤にも程がある。同様に最下位にいながらも、毎試合(たとえ負けても)観る者を魅了するファイターズと実に対照的だ。

必要なのはチームリーダー

 先日、落合博満さんが一刀両断して話題となった「チームの核の不在」。これは長年のドラゴンズファンならば誰もがずっと感じていたはずだ。「キャプテン」でも「選手会長」でもない。チームを牽引するリーダー。強いチームには必ず存在するもの。それが「主力選手」と合致しているのが理想だが、そうでなくともチームをまとめられる人はいる。野球に限らず、会社等の組織には絶対に必要な存在。2人以上集まれば、必ずなければならない存在だ。

 現在のドラゴンズで挙げるとすれば投手は大野雄大。彼の不在(しかし陰から支えているのは知られている)は痛い。だが、野手のリーダーは残念ながらいない。最年長で実績も充分の大島洋平がそれに値するが、性格的にそうでないことは傍から見ていてもよくわかる。それを責めているのでなく、人には適材適所があるのだからしかたない。
 もう、この際、年齢は関係ない。プレーヤーとしても性格的にも岡林勇希にそうあってほしいが、グラウンドでの彼は自重(遠慮?)しているように見える。年上にもモノ申せそうな(投手への声掛けは本当に素晴らしい)龍空は、プレーに物足りなさがあって、本人もそれを気にしているようで、やはり小さくなって見える(本当はそんなもの関係ないのだが)。

 木下拓哉と宇佐見真吾。「扇の要」というポジションもさることながら性格も明るく、やはり適任だと思うが、木下は自分のことで手いっぱい、宇佐見は移籍してきたばかりという遠慮がやはりありそうだ(このドラゴンズに染まってほしくないものだ)。

 石川昂弥と細川成也。ドラゴンズの未来を背負うべき強打者だが、実質1年目の彼らに要職を負わせるのは酷だろう。

 一気に若返りを図ったチーム作りは大英断で素晴らしいが、リーダー欠如、この問題を放置したことだけが不満である。シーズンを折り返してだいぶ経ち、ようやく「若手だけでなく、中堅・ベテランとの融合が大事」と気づいたようだが、それならばかえすがえすも「松田宣浩」獲得に乗り出さなかったのがいまだに残念でならない。地元に縁もあって、リーダーとしての資質もすべて備えている。彼ほど適任はいなかった。

 現在のドラゴンズのように長く低迷していたタイガースを変えた金本知憲。カープの4番という欠かせない主力だった彼を、星野仙一監督が口説きに口説いて引き抜いた。
 事情があってタイガースに移籍した新井貴浩は、カープファンに「裏切者」と罵られる中で出戻ったものの、リーダーとしての資質を存分に発揮してV3を牽引。プレーだけでなく全身全霊で若い選手やファンを惹きつけた。

 彼らのようなチームリーダーの獲得、または出現。ベンチのムード。ここが改善されれば、必ずドラゴンズは変われる。

 球団が「強いチーム作り」を本気で目指す。もちろんこれが大前提。球団や現場スタッフが「ベンチの雰囲気作り」を阻害するようなことがあるのだとしたら、まったく話にならない。低迷は続くどころか、さらに堕ちるだろう。

#野球が好き
#スポーツ観戦記

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