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採用のミスマッチはなぜ起こるのか

こんにちは。WorkTech研究所の友部です。

労働市場の流動化が高まり、即戦力人材を求めてキャリア採用に積極的に動く企業が増えています。採用難易度も高くなり、必要な人材を採用することのハードルも高くなっています。ざまざまな努力をして採用した社員が早期退職されてしまうことは企業にとって避けたい事象ですし、採用された社員にとっても良いことではありません。

今回は、そういった早期退職につながる「採用のミスマッチ」についてのお話です。採用のミスマッチの要因を紐解くことができれば、企業にとっても働く人にとっても望ましい関係が築けるはずです。

採用のミスマッチとは何か

ここでお話する「採用のミスマッチ」とは、「採用した新入社員と会社とでお互いの期待が合わず、早期退職や不活性が起こってしまうこと」を言います。

こうした「採用のミスマッチ」が企業にどのような影響を及ぼすのか、人事の方や受け入れ部門の方などは感覚的にわかるかもしれません。特にコスト面から見ると影響がわかりやすいです。

例えば、「年収600万の新入社員が早期退職に至った」場合を想定してみます。この場合に早期退職に係るコストは「1,250万円〜2,000万円」と考えられます(WorkTech研究所試算)。このコストには、採用費やエージェントフィーなどの採用するために費やした「採用コスト」、人件費や入社研修にかかる費用など退職者自身に費やした「退職コスト」、不活性化した場合それが周りに与えるネガティブな影響から費やされる「不活性コスト」が含まれます。

ある企業で年間100人採用して1年以内の早期退職率が10%だった場合には年間10人が辞める計算になるので、この企業にとっては少なく見積もっても1億円以上の損失になります。こういったコストの視点からでも、採用のミスマッチを避けることの重要さが伝わるかと思います。

適切な早期退職率についての考え方は以下のnoteで書いておりまで参考にしていただければ。

期待でつながる会社と従業員の関係性

採用のミスマッチの要因について紐解く前に、会社と従業員の関係性について話す必要があります。

働く人の価値観の多様になっていることや、企業としても終身雇用の維持が難しくなるなどの影響もあり、会社と従業員との関係性は大きく変わりつつあります。かつては会社と従業員の関係性は主・従に近い関係性がありましたが、近年では対等な関係性になりつつあります。

「会社が働く人を選ぶ」、のではなく、「会社も働く人もお互いに選び、選ばれる」関係性です。

この関係性においては、会社と従業員は、お互いの期待を対等に満たし合う関係であることが望ましいです。「会社が従業員に期待するもの」「従業員が会社に期待するもの」とそれぞれ持っており、それを満たし合うことで関係が成り立ちます。これがエンゲージメントが高い状態、ということもできます。

会社と従業員の「期待」のつながり

新しく入ってきた新入社員にとってこのバランスが崩れている時には、採用のミスマッチが起こっている可能性が高い、と考えられます。

会社が従業員に期待するものはシンプルで、従業員が期待される成果をあげることが主なものとなります。一方で、従業員が会社に期待するものは多様化しています。働く人が会社に期待するのは「働いて給料をもらう」だけではありません。働く人それぞれが人生において大事にするものが様々で「どのように働くのか」が影響するため、会社に期待するものが人によって異なります。

では、「会社から従業員への期待」「従業員から会社への期待」それぞれについて深堀りをし、なぜミスマッチが起こるのか、について考えてみます。

「会社から従業員への期待」と「ズレ」

会社が従業員に期待するものは先程も書いた通り主に成果であり、「パフォーマンス」を中心とした振る舞いとなります。

例えば、「期待される業務遂行能力があるか」「自身への期待役割と責任を理解しているか」「周囲と適切なコミュニケーションを取りコラボレーションできているか」などです。組織として成果を出す場面において、与えられた役割を全うできているか、に焦点を当てます。

よって、会社から従業員への期待がズレる場合には、大きく分けて以下の2つの事象が起こっています。

  • 新入社員採用時の「能力の見極め不足」

  • 能力はあるものの、「能力を活用できる環境」ではない

「能力の見極め不足」が起こる要因としては、「採用における評価項目・評価基準が不適切」「面接官による評価基準のブレ」があげられます。主に、採用フローにおける不備が原因です。

「能力を活用できる環境」がない要因としては、様々な理由があげられます。

  • 明確な期待役割を提示できていない

  • 受け入れ現場へ新入社員に関する情報共有が不足している

  • 上司や同僚との相性の不和

  • コンディションのキャッチアップ不足

「明確な期待役割を提示できていない」といったケースでは、とりあえず優秀そうなので採用したものの、明確にお願いできる仕事がない、ということが起こります。また、「受け入れ現場へ新入社員に関する情報共有が不足している」というケースでは、採用面接時に伝えたことや懸念点などが現場に共有されておらず、オンボーディングがうまくいかない、といったようなことが生じます。

また、「上司や同僚との相性の不和」も、本人が能力を持っているにも関わらず活用できない、ということにつながります。「コンディションのキャッチアップ不足」なども要因となります。入社されたばかりのオンボーディング期間にいる方はコンディションが目まぐるしく変わるので、その状況変化が捉えられてないと、適切な対応ができないこともあります。

「従業員から会社への期待」と「ズレ」

従業員の方々が会社へ期待するものは多様化しているものの、会社が提供できるものは限られています。会社が提供できるものがいわゆる「社風」「カルチャー」と呼ばれるものです。

この「社風」「カルチャー」といったものが、退職理由のアンケートなどでも要因の上位に上がります。会社が提供できるものとその従業員が欲しいものがズレているので、ミスマッチ、が起こっていると考えられます。

従業員から会社への期待がズレる理由は一つで、「会社に対する誤った期待を認識させている」というものです。「最初からできない」ということがわかっていれば期待をしないですが、「できないことをできる」と見せているとそこに期待が発生し、できないとわかった時に大きく失望させることにつながります。

会社に対する誤った期待を持たせる傾向にあるのは、「給与や報酬に関する期待」「働く環境に関する期待」「人間関係に関する期待」などです。これらに対して働く人それぞれが期待するものが異なるなか、採用フローや入社後のオリエンテーションなどでコミュニケーションミスが起こると、ズレを発生させてしまいます。

こういった、誤った期待をさせてしまうコミュニケーションミスには、以下のようなものがあります。

  • 採用時に、現場の実態と乖離した訴求を行っている

  • 要件が曖昧な状態で採用活動を行っている

  • 現場への新入社員に関する情報共有が不足している

  • 新入社員に対するコミュニケーションが不足している

採用難易度が上がる中どうしても採用したい方がいる時に、アトラクトを含めて会社の良いところばかり話してしまうケースがあります。また、採用担当者が現場の現状を知らず、適切な情報共有ができていないケースもあります。

「採用すること」をゴールにするとこういったことを行いがちですが、採用のミスマッチを起こさずスムーズなオンボーディングを実現するためにも、良いところは良いものとして伝えたうえで、現場の実態についてある程度は正直に話す、ということも採用時のコミュニケーションでは重要になるでしょう。

採用のミスマッチの要因の整理

採用のミスマッチの要因は、採用フローと受け入れ体制、従業員の期待と会社の期待で整理すると以下のようになります。

採用のミスマッチの要因整理

これらの要因に対して、適切に対処していくことが、採用のミスマッチの解決の一番の近道となります。ただ、こういった「採用のミスマッチ」にまつわる課題はどういった組織でも解消されず続いてしまうことがあります。採用部門と現場の間で情報共有がなされず、採用のミスマッチの原因分析については議論が空中戦になり、採用と現場で責任の押し付け合いになる傾向が強いからです。

「採用のミスマッチ」は採用部門だけの問題でも、受け入れ部門だけの問題でもありません。要因が複雑に入り組む中、課題を切り分け各部門が責任を持って対処していくことが重要です。課題を切り分けるためには、正しい一次情報を蓄積する仕組みが必要です。これがないために、採用の課題と受け入れ現場での課題の切り分けができず、解決策の実行が手遅れになることもあります。

今回は採用のミスマッチについて書かせていただきました。採用のミスマッチの要因の根っこにあるのは会社と従業員のお互いの期待です。期待についてはこちらのnoteでも書いておりますので興味ある方は御覧ください。

人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方など、ビズリーチWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、お声がけいただければと思います。






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