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実務(戦略コンサル)と学問(文学部哲学科)の狭間

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最近の記事

映画感想:「マルコヴィッチの穴」

カオスで有りながらも調和の取れた、芸術・哲学的な美しい映画 7と1/2階という不思議な空間やマルコヴィッチの頭の中はオズの魔法使いの世界観なおとぎ話的な夢心地の空間でありつつも、終始リアルを感じさせられる映画だった 自己意識、主観と客観、自己同一性、健在意識と潜在意識、自由意志、人間と動物の違い、人形と人間の違い、などの難しいテーマが絡む哲学的な映画ではあったものの、音楽や演出、ストーリーが劇的、かつ均整に構成されていたために最後までのめり込むことができた マルコヴィッ

    • 映画感想:「気狂いピエロ」

      夢心地のリアリティ。普段私たちは生きているのか、夢見てるのか 映画鑑賞経験がそれほど多いわけではなく審美眼を持たない私にはこの映画が傑作と呼ばれている所以を完全に理解することはできていないが、 「生きる」ということの持つ空想/物語的な側面を、映画という非現実的な世界/夢想的な演出から逆に現実に引き戻すことで実感できるようになっている映画なのかなと、以下のようなところから感じた フェルディナンとマリアンヌが一夜を過ごしたあとあまりにも唐突に人が死んでいたため、少し面食らう

      • 読書感想:「友達・棒になった男」(安部工房)①(友達)

        あらすじ (wikipediaより) 一人暮らしの男のアパートに突然と闖入してきた奇妙な一家が笑顔で隣人愛を唱え、親切心の連帯で孤独の思想を駆逐し殺してしまう物語。 男の部屋を侵略する一家の疑いを知らぬ善意が、怪物化してゆくブラックユーモアの中に、現代社会の人間の生の構造や他者との関係性が描かれている。 得体の知れない気味悪さで重心が崩れた心に正拳突きを浴びせてくる本 読書後の率直な感想は「わからない」「なんだこれ」である。 どう解釈すべきなのか。そもそも解釈を加えず、

        • 映画感想 : 「ピアノ・レッスン」

          生に向かう醜さと死に向かう華麗さの対比が美しい映画 美しい映画だった。 エイダの容姿、ピアノの音色、砂浜、エイダの指と指づかい、沈み行く中でも決然としたエイダの顔、沈黙を貫くエイダの身振りや表情は綺麗であり、 男たちや現地民の容姿、ピアノそれ自体の外観、泥道、切断されたエイダの指から雨の中ほと走る血と指の欠けた右手、やはり生きようと海中で改めて決意し水上に浮上しようと潜ろうとするエイダの表情、最後に発話の練習をするエイダの声にならないような声は醜かった。 綺麗なものは「死」

        • 映画感想:「マルコヴィッチの穴」

        • 映画感想:「気狂いピエロ」

        • 読書感想:「友達・棒になった男」(安部工房)①(友達)

        • 映画感想 : 「ピアノ・レッスン」

          「センスはいいが突き抜けられない」人たちのための論壇③

          前回までのおさらい: 何事も80点まではすぐ行けるがその先で詰まる事の多い人は、言語化力がボトルネックになっているのではないか 仮にそうだとした場合、言語化力を高めることで残りの20点を獲得でき、「器用貧乏」の限界を越えられるのではないか この場合の「言語化力」とは、「物事の細部を正確に言葉で表す能力」である 「細部を正確に言葉で表す」能力を引き上げるためには、そもそも細部に関心のピントを合わせられるようになることが重要 このシリーズの締めくくりとして、今回は「細部

          「センスはいいが突き抜けられない」人たちのための論壇③

          読書感想 : 「天才の世界」(湯川秀樹)

          https://www.amazon.co.jp/天才の世界-知恵の森文庫-t-ゆ-1-1/dp/4334785204 あらすじ創造性について探究していた湯川・市川両教授が、4名の「天才」(弘法大師、石川啄木、ゴーゴリ、ニュートン)を題材に、インタビュー形式で彼らの「天才」性を解き明かしていく本。 読後感想「天才」が語る異分野の「天才」の手触り感あるエピソード 湯川秀樹教授という「天才」が認める「天才」4名についての幼少期の原体験から生育過程での出来事、そして彼らを天才

          読書感想 : 「天才の世界」(湯川秀樹)

          「センスはいいが突き抜けられない」人たちのための論壇②

          前回のおさらい: 何事も80点まではすぐ行けるがその先で詰まる事の多い人は、言語化力がボトルネックになっているのではないか 仮にそうだとした場合、言語化力を高めることで残りの20点を獲得でき、「器用貧乏」の限界を越えられるのではないか 前回はこのような話をした上で、「言語化力」とは何か、「言語化力」を高める方法は何かを考えることを宿題とした。 この場合の「言語化力」とは、「物事の細部を正確に言葉で表す能力」である 「言語化力」の意味するところを字義通りに捉えて見ると

          「センスはいいが突き抜けられない」人たちのための論壇②

          「センスはいいが突き抜けられない」人たちのための論壇①

          何事も80点まではすぐ行けるがその先で詰まる事の多い人は、言語化力がボトルネックになっているのではないか 最近私は「言語化」というキーワードに思いを馳せることが多い。 その直接のきっかけは職場で上司から「使う言葉がぼやっとしている」「言語化」との指摘を受けたことである。 しかしこれを端緒に言語化についてあれこれと考えているうちに、実は 職場でメモや下書きベースでおおよその方向性を議論する際には特に問題は起こらないが、最終的な完成版の資料を上司に確認してもらう際には細部の記

          「センスはいいが突き抜けられない」人たちのための論壇①