【ショートショート】死神
「おい、目を覚ませ」
その声で目を覚まして辺りを見回すと、そこには信じられない光景が広がっていた。
「なんだ、この岩ばっかりの場所は…」
「ここは冥界。お前、死んだんだよ」
「え、だ、誰だ」
「見たらわかるだろ。死神だ」
確かに死神といったらドクロと黒いマントみたいなイメージはあるけど、なんか思っていたのと違う。多分その理由は、手に大鎌じゃなくてフライパンを持っているからだろう。
「死神って鎌を持ってるイメージなんだけど…」
「あー、なんか人間界ではそのイメージみたいだな。でも、俺下っ端だから」
「え、死神って1人?1体?だけじゃないんだ」
「俺が知るだけでも100はいるよ。で、鎌を持てるのはトップの死神だけ」
死神がたくさんいるのも驚きだが、序列で持つものが変わるのも初耳だ。
「鎌とフライパン以外だと、死神はどんなものを持ってるの?」
「んー、俺の上司は鉄剣とか斧(おの)とか鍬(くわ)とかかな」
「へえ、みんな違うんだ。部下の死神は?」
「釣り針とかお玉とか。ピーラー持ってるやつもいたよ」
死神の世界って面白いな。死んだって聞いたときは、意味が分からなくて落ち込みそうになったけど、こんな世界なら楽しくやっていけそうな気がする。
「じゃあ、まずはこの冥界に住むための契約をしてもらうから。契約の仕方はあの死神に聞いてくれ」
そう紹介された死神を見ると、トングをカチカチしながら僕を待っていた。
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ショートショートとは違いますが、よければぜひ手に取ってみてください😊