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京劇と愛憎で学ぶ近代中国史 ~覇王別姫~

さらば、わが愛 覇王別姫」のリバイバル上映をテアトル梅田にて鑑賞。

こちらの作品、1993年にカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しています。

私は今、カンヌ関連や、パルムドール受賞作品に興味がムンムンです。

カンヌが気になる理由

先日、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を劇場鑑賞したり、「TITANE」に感動したりしたからです。

苦手そうだから、鑑賞を避けていた「ダンサー・イン・ザ・ダーク」。

これが実に面白かった。

勢いそのままに、これまでの歴代パルムドールを作品を検索してみました。

するとどうでしょう。


ほとんど観たことがないではありませんか…。


もう一度あのレベルの衝撃を!感動を!体験したい!!

と思っていた矢先にテアトル梅田にて劇場鑑賞のチャンスが。

これは、きゃない。観るっきゃない。

はじめに映画について簡単に解説しておきます。

カンヌが泣いた! パルムドール受賞!

まずは、概要から。

「さらば、わが愛覇王別姫」は、1993年カンヌ国際映画祭最高の賞に当たるパルムドールを見事受賞した大河叙事詩である。 あの「ラスト・ エンペラー」 をも越えるスケールと繊細な美学! 国中国の動乱の50年を背景に、愛 の悲劇を力強く描いた。まさに中国人でなければ 描けない素晴らしい作品である」(リベラシオン 紙) など、カンヌに集う全ての映画人 映画ファ ンが絶賛した。 中国系映画の最近の発展は目覚ま しいものがある。 昨年のヴェネチア映画祭で「秋 「菊の物語」 が、 今年のベルリン映画祭で 「ウェデ イング・バンケット」と「香魂女」がそれぞれグ ランプリを受賞。 そして3大国際映画祭の最後を 飾るカンヌ映画祭での「さらば、わが愛 覇王別 姫 パルムドール受賞のニュースは、中国系映画 の勢いを証明するにふさわしい華々しいものであ った。監督たちがリードする中国系映画の 元気が未来の映画地図を変えることは間違いない。

劇場チラシより引用

あらすじ

続いて、あらすじです。

舞台は、 北京 少年時代 孤児や貧民の子供たち が集まる京劇養成所で厳しい訓練を受けながら も、兄弟のように互いにかばいあい慕いあって成 長した2人の役者が主人公である。たくましい。大男の段小樓(トアン・シャオロウ) 張毅(チャ ン・フォンイー)は立て役、華奢な美青年の程衣 (チョンディエイー)=張國榮(レスリー・チャン) は女形として 「覇王別姫」の人気コンビとなる。 日本統治時代 第2次世界大戦、共産党政権樹立、文化大革命と、 動乱の時代の移り変わる時の権力に運命を左右され、もてはやされる2人 そんな中、女形は立て役に少年時代より恋情を抱き続け、 舞台の上でも私生活でも一生をともにしようと念 じていたが、段小菊は娼婦と結婚してしまう。嫉妬と裏切りがうず巻く三角関係に、舞台に、動 乱の中国に生きる人間たちの生きざまを壮大な スケールで描く一大事である。

劇場チラシより引用

感想と押さえておきたい予備知識

ここからは、私の感想と、

ここをつかんでおけば、ストーリーが入ってきやすいという歴史的背景やポイントなどの予備知識も合わせて解説していきます。

感想

約3時間というかなり長めの上映時間でしたが、集中して観られました。

映画の3時間って、確かに長いですが、1924年から1977年の中国激動の時代を劇団員のリアルな目線で追いかけていくと思えば、かなりエクストリームなのではないかと思います。

敗戦から内乱につながり、そして革命暴動に巻き込まれていく。

大事な人を裏切ってしまうにたる理由なのかもしれません。

そんな憎き悲しきメッセージの色濃い映画でありました。

そういった面で、香港映画ならではって感じがよかったです。

また、LGBTQにも一石を投じる内容もよかったです。自然で物語の邪魔にならない程度だったのもとてもいい。

さて、ここからは、映画に登場した中国の歴史や文化について解説していきます!

京劇とは

映画では、少年京劇団に預けられるところから物語が始まります。

そこで過酷な指導を受け、やがて花形役者へと成長していきます。

京劇とはなんぞやをインプットしておくと、より映画の背景が観えてきますよ!

●皇帝の誕生日をきっかけに誕生
中国伝統の舞台芸能である京劇。起源は18世紀、皇帝の80歳の祝賀のために安徽(あんき)省の4つの劇団が北京にやってきて、大人気を博したのがはじまりといわれています。その後、国内の地方劇や民間芸能の影響を受けながら発展していきました。演目は、歌とセリフを中心とした「文劇(ぶんげき)」と、立ち回りが見せ場となる「武劇(ぶげき)」に分かれます。いずれも、歌唱・セリフ・しぐさ・立ち回りからなる総合芸術です。

●「歌」も重要な要素
京劇の世界では「無字不歌(ウーズブーグー)(字があれば必ず歌う)」と言われています。人物の感情、対話、心の中の独白等を唱(チャン)(歌)で表現することが多いためです。娘役は地声と裏声を、青年役は主に裏声を、年齢を重ねた人物役は地声を使って歌います。京胡(きょうこ)という弦楽器や銅鑼(どら)といった民族楽器の生伴奏と共に朗々と響く歌声は、芝居の核ともいえるパートであり、京劇がチャイニーズオペラと呼ばれるゆえんです。

●京劇の舞台
劇場では舞台装置がほとんどなく、「一卓二椅(イージュオアルイー)」(一つの机と二脚の椅子)でベッドや山を表したり、車輪の描かれた旗で車を表したりして、最小限の道具で情景を表現します。観客が想像することで舞台が完成するのです。

https://www.kissport.or.jp/column/theatre/7/

皇帝への献上として産まれた劇で、

地声や裏声を使った歌も重要な鑑賞ポイントで、

舞台装置が少ないため、観客の想像をもって完成する劇なのですね。


覇王別姫ってどんな劇?

映画の中でも、師匠による解説がありますが、あらすじを詳しく解説しておきます!

超シンプルに言うと、読んで字のごとく。

覇王れるお話。

覇王別姫 あらすじ

秦末、楚の項羽と漢の劉邦は秦後の覇を争います。漢軍の元帥・韓信が李佐車に、項羽をだまして投降させよう、そのためにまず兵をこちらにおびきよせよと命じます。
項羽は自分の力を過信し、周りが止めるのも聞かないで大軍を率いて九里山に進軍します。ところがそこには漢の大軍が待ち伏せていました。こうして項羽軍は垓下で漢軍に包囲されてしまいます。

夜中、四方八方から楚の歌が聞こえてきます。包囲している漢軍の兵士が歌っているのです。この場面が故事成語「四面楚歌」の由来です。

「自軍の兵士がこんなにも漢側に寝返ったのか」と項羽は戦意を失い、愛馬・騅すいをなで愛姫・虞美人と別れの杯を交わします。激情に心を揺さぶられた項羽はこう歌います。
『垓下の歌』(現代語訳)
山をすっぽ抜くような力があり、気力は天下を蓋うほどだったのに、時の運を失い愛馬の騅も動こうとしない。騅が動いてくれないのにどうしたらいいのだろう。虞よ虞よ、お前をどうしたものだろう。

当時負けた側の女性は必ず相手側の捕虜になります。項羽は辛さをこらえて虞美人に

「お前は生き延びて漢王・劉邦に尽くしなさい」と諭します。

これを聞いた虞美人は断り、自ら剣に伏してしまいます。

その後項羽は兵を率いて包囲を突破しますが、多勢に無勢で敗走し、わずかな兵とともに烏江(うこう)にたどり着きます。

そこの船頭から捲土重来を期すようにと励まされるのですが、亡くなった兵士の親たちに合わせる顔がない、と言って断りここで自らの剣で最期を遂げます。

http://chugokugo-script.net/story/haoubekki.html

項羽と劉邦のお話だったのですね。(映画観たのにわかりませんでした…)

虞美人が自害する理由もよくわかりました!


日本統治時代と文化大革命

こちらの内容は、ややナーバスな内容ですので、ブログにて解説動画を掲載します。アヘンや日本統治時代、文化大革命など、3つの動画でかなり理解が深まります。

https://www.three-minutes-philosophy.com/sarabawagaai/

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます!

「さらば、わが愛 覇王別姫」について解説しました。激動の近代中国史が非常によくわかる名作です。長くても、ぜひ挑戦してみてほしいです!

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