【エッセイ】ノー・スモーキン・ビリー
この「ビリー」を名乗るようになって、ずいぶん経ちます。思い返すと、実際のところ、20年を超えているなんて。年取ったなー。まあ、生きているのだから年を重ねるのは仕方がない。
そもそもは学生の頃の愛称でした。僕だけ呼称がなく、姓で呼ばれていたんですけど、「キャラクターや外見と、ありふれた姓がしっくりこない」ということになって、冒頭にお借りした動画、ミッシェル・ガン・エレファントというバンドの「スモーキン・ビリー」という曲から、「ビリー」と名づけられたことがきっかけです。
いまはもう卒煙しているんですけど、学生のときから、いまや時効ということで告白すると、未成年のときからヘビースモーカーだったんです。赤のマルボロを一日に2箱、多くなると3箱を空にしてしまうくらいには。
ビリーというのは呼びやすいし、覚えてもらいやすい。本名をもじった名義もあるし、いくつかの名義で生きているんですけど、結局、「ビリー」を名乗っていることが多いんです。
あれやこれやがありまして、姓は使いにくい、とは言え、公式な場所では本名を使うしかないわけですが、そうでないなら、だいたいはビリーで生活しています。ビリー歴も長くなって、本名を知らない人も増えてきた。
いっそ、ビリーでいいやって思っています。
ビリー。ビリーさん。ビリーくん。ビリーちゃん。
そう呼ばれることに慣れてしまったし、自分でもなかなか気に入っている。
「おいで、ビリー」なんて、なんだか犬でも呼んでるんじゃないかと思うけど、気取ってなくて、適当でいい。たいそうな名前なんていらない。身軽で気楽で、呼びやすいと思ってもらえたらいい。
いい歳をして、長めの髪にパーマをして、ビリーを名乗る男。ロングコート。うん。大変に不審者。どういうわけか、道ゆくいろんな人に話しかけられる不審者なんです。歩いてるだけなのに、なぜか、農家さんにトマトをいただいたり、コンビニのお姉さんに「ビール飲んでー」と缶ビールをいただいたり。
「話しかけやすいタイプじゃないのにね」と、美容師さんにまで言われるんですけど、物珍しいのか、不思議によく声をかけてもらうんですよね。とても嬉しいし、ありがたいと思う。ひと休みされている農家の方に、昼間からビール誘われたりなんて、なかなか面白い経験だと思います。
ミッシェル・ガン・エレファントはすごかった。古い話なんですが、昔は「洋楽コンプレックス」なんて言われて、日本のロックは、音楽は、アメリカやイギリスのものより格下と考えられて(照れや謙遜もなくはなかっただろうけど)、海外のグループを好むほうがカッコいいような、通ぶれるような、ある種の錯覚があったんです。
国内アーティストと海外アーティストが並ぶ、フジロック・フェスティバルでも、イエローモンキーは敗退してしまい(彼らこそ、洋楽コンプレックスそのものの国産バンドかもしれない)、その翌年、ミッシェルはまるで気負わず、普段通りのプレイで、人々を熱狂させたんです。あの瞬間、日本のロックがアメリカやイギリスのロックを超えたのだと思う。ミッシェルのサウンドは圧倒的だった。スピード、パワー、リズムの切れ味。「チバ文学」と言われた、独特の言語感覚による世界観。
ミッシェルは見た目もカッコ良かった。細身の黒のスーツ。長身痩躯。ギターのアベさんなんて、188センチの10頭身が鬼気迫る表情で、じゃんじゃんとコードを鳴らす姿は、鬼とまで形容された。
アメリカやイギリス、フランスでもツアーを敢行して、本当の意味で海外進出を果たしていた。
ミュージック・ステーションの「伝説の夜」が有名かもしれませんね。ロシアのアイドルがドタキャンして、代わりに現れたミッシェルが颯爽と2曲目を演奏して盛り上がった、あのバンド。彼らは演奏に自信のある実力派なので、カラオケなんていらない。派手な演出もいらない。楽器があれば、すぐにプレイできた。
……って。脱線しました。ビリーという愛称について書いていたはずなのに。
いま聴いてもカッコいいけれど、本当にたまにしか聴かないんですよね。いまの音楽を聴いてるほうが楽しいし、新しいものが好きだから。
ほら。着地点を考えずに書いてるから、わけがわからなくなる。なんの話だっけ。ですよ。書いてる本人が。
よし。そろそろ終わります。今日もガンダム観ます。「水星の魔女」の主題歌の、YOASOBIの「祝福」って、キャリアハイになるくらいの名曲なんじゃないでしょうか。それでは。
Call me Billy.
photograph and words by billy.
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