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タイトルバックが消えたあと…

続きがありました。

映画館を出て、駅に向かうデッキを歩いていた時、少し前を行く二人の男性のうち、お一人の、前屈み気味に歩く、ほっそりしたおみ足の運びに、ピンときたのです。

通路を右手に折れた所で立ち止まったお二人に、思わず「失礼ですが…」と、声掛けをしてしまいました。

踊る姿や、役を演じる時の、鋼のような空気感を纏うこともなく、華奢でシャイな雰囲気の横顔には半信半疑でした。

田中泯氏を庇うように、「違います。」と仰った優しそうな丸いお顔は、マスクと眼鏡をしてらしたけれど、後でサイトで見た犬童監督でした。

翌日、ヒューマントラスト有楽町で、犬童監督と田中泯氏の舞台挨拶の予定があったことを知り、やはりあのおふたりだったんだと確信しています。

「泯さんのように自分の中にこどもをちゃんと持っている人が大人だと思います。」と監督は対談で話しておられますが、お二人の後ろ姿は、夢中になって遊んだあと、とぼとぼと家路を辿る少年二人に見えました。

いきなり話しかけるなど、何と無粋なことだったかと、反省しましたが、どうせなら「大変失礼しました。」の代わりに「有難うございました。」と言うべきでした。人違いで不審に思われたにしても。伝えたかったのは、それだけでしたから。

素のままにゆっくりと、言葉を交わすことなく、並んで歩くお二人の後ろ姿が、「名付けようのない踊り」のタイトルバックに続く映像になって、脳裏に残ります。

反省を込めて。



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