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うつ病患者における「着替え」についての考察

着替えは複雑な思考と動作を要する重大タスク

着替えるって意外と大変。だけどとても大切なことだと今の私は思う。体を動かすのがやっとの状態の人には着替えはとてもハードルが高い。だから無理にやらなくていい。でもできたら自慢していい。そのくらい大変なことなんだ。

たかが着替え、されど着替え。着替えるという一言にはすごくさまざまな思考や動作が含まれている。
まず、今日は何をするかによって動きやすさや見た目を考え、そして気候に合わせて適切な服を選ばなければならない。服を取りに行かなくちゃいけないし、洗濯も必要だ。適切な服がなければ買わなきゃいけない。
そして実際に着替えるという動作。そもそも体を起こすのだってやっとの状態なのに着替えるなんてすごい大変だ。

経過別にみた着替えの重要性

私はこれまでの数年間で「元気な状態」→「うつ病になりかけの状態(抑うつ状態)」→「わりと重めのうつ病の急性期」→「うつ病の回復期(今ここ)」という4つの状態を経験してきた。もちろん各状態の中でも気分や体調の波はあるけれど、大きく分けて4つだという意味だ。

「わりと重めのうつ病の急性期」のときは着替えができない日もあった。一日中パジャマで布団にいる。体を起こして何とか食事をとるとしても(一時期は母に文字通り食べ物を口に突っ込まれていた)それはパジャマでいい。それでいい。生きているだけで頑張ってる。それで十分。
でももし着替えることができたらそれはすごく素晴らしいことだ。着替えた報告をしてくれた人には可愛いスタンプ送っちゃう。そのくらい尊敬できる。着替えるということは。

「元気な状態」では着替えは普通にできる。何ともないことだ。日曜日くらいは一日中パジャマで、という時があってもいい。それは元気だから。

「うつ病になりかけの状態(抑うつ状態)」と「うつ病の回復期」の2つに関して私は「毎日着替えること」を目標にするのがいいと感じる。「着替える」という一見カンタンだけど実は複雑で大変な動作。これをすることがうつ病になりかけの人のこれ以上の悪化の予防や、うつ病から回復しかけている人のさらなる回復の促進になると考える。根拠はまだない。
もちろん調子が悪い日はできなくてもいいけれど、「着替える」ということ(何曜日だろうが予定がなかろうが)そのものを目標にして、それができたら自分を思いっきり褒め称えよう。

うつ病の予防や回復における着替えの意義

着替えという行動が抑うつ状態の悪化やうつ病の回復には良い働きをするのではないか、と私は自分の経験から感じている。そして日曜日でどこにも出かける予定がなくても着替えるほうがいいと考えている。その理由について私なりの考えを述べるとしよう。

前述の通り、着替えというのはうつ病あるいはそれに近い状態の人にとって非常にハードルの高い行動だ。それだけにできた時の喜びは半端ない。「よく頑張った!」と1日の壮大なタスクを終えたと勝ち誇っていいくらいだ。

「着替えること」自体の凄さとは別に、さまざまな副次的効果ーー着替えることによってもたらされる良い効果ーーもある。
うつ病および抑うつ状態では大抵の場合、一日の中で体調に変動がある。典型的なのは、朝は体調が悪く夕方に向けて気分が上がってくるというパターンだ。
朝は死にそうな気分でも夕方気分が上がってきてちょっと出かけてもいいかなという気分になることはよくある。そういうときにパジャマだと……。出かけるまでのハードルが一個ある。
あ、出かけようと思ったけどパジャマだった、もう夕方だし今から着替えると洗濯物が増えるだけだし面倒だな、じゃ、出かけるのはやめてこのままの格好で過ごそう。そういうふうになりがちだ。

その点で、朝なんとか着替えをして(別に服はなんでもいい。近所に散歩に出かけても見苦しくない程度の服でいいのだ)おくと、夕方、気分が上がったときにスッと出かけられる。そして「出かけることができた」という達成感を味わえる。さらには、せっかく出かけるならたまには化粧でもしてみるか、帰ったらまあお風呂にでも入るか。どんどんと次の行動につながる。

行動をする(活動量が上がる)ということはより質の良い睡眠につながるし体力の向上にもつながる。別に出かけられなくたっていいけど、せっかく着替えたなら〇〇をしてみようか。そんな気分になれると思う(もちろん急性期の時は無理しないでね)。

こうなるとどんどんと正のスパイラルに向かえる。その出発点、やる気スイッチは「朝、(特に用事はなくても)とりあえず(適当な服でいいから)着替える」ということだ。

逆に朝着替えないということは、せっかく入りかけたスイッチを固めてしまうことにつながる。とりあえず「朝(じゃなくてもいいけどできれば昼までに)着替える」。これを目標にするのはいいことだと私は思う。

自己肯定感の高揚とメンタル不調のサインとしての有用性

達成感、頑張った感ーー難しくいうと「自己肯定感」ーーというのはうつ病の予防や回復にとって重要な要素だ。「着替えることができた」ということ、そして更なる達成感「出かけられた」「お風呂に入れた」「よく眠れた」などなどを味わうことは自己肯定感のアップに繋がる。

そう……、だから朝起きたらまずは着替えよう! 少なくとも私はそうしている。朝ごはんよりまず着替え。トイレよりまず着替え。食べることやトイレのほうが大事そうだけど、まず着替えよう。

人間、食べたくなったりトイレに行きたくなったら這ってでも結局はどうにかなるものだ。一方、着替えは一見どうでもいいことだから後回しにしがちである。けれど後回しにすることで他のいろんなこと(着替えよりもっとハードルの高いこと)もつい後回しになってしまう。そうすると睡眠の質は下がるし、食事もお風呂もどうでも良くなって、しまいには生きていることがどうでも良くなってくるような経験を私はしてきた。

とりあえず今夜から、お布団の横には手の届く範囲に翌日着る物を置いておくことを勧める。起きた勢いそのままの流れで着替えもやっちゃうのだ。服を選ぶのは朝のどんよりした気分では無理だ。夜のまだ調子のいいうちに着替えを準備しておく。

別に毎日同じような格好でいい。洗濯したものをそのまま布団の横に投げておくだけでいいのだ。畳まずに広げておいてそれを何日か着て、臭くなったら洗濯機に突っ込んで干してそれをまた布団の横にでも広げておいて着る。そうすれば畳む・しまうという面倒な作業は必要ない。

「朝着替えること」は一見どうでもいいことだけど、それはすごく大切なこと。朝着替えられなくなってきたらそれは不調のサイン。意識して自分のメンタルをケアしよう。そして「朝着替えること」ができるくらいの体調を保つように心がけてほしい。
うつ病の回復期できちんと通院・服薬以外にやったほうがいいなと私が思うことは「朝着替えること」。ただこれだけ。あとは気の向くままに過ごせばそれでいい。

※上記はあくまで筆者の体験に基づく考察であり、科学的根拠はありません。

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