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ZINEを作ろうと思いついてから、はじめて1冊売れるまでの7ヶ月でやったこと


早速もくじから長くてすみません。

この記録は、自分でデータを作って印刷にかけ、ECサイトや書店にて販売するスタイルの人に役立てばいいなと思って書きました!文フリには出していません!

※追記 2024/9/8の文フリ大阪に出展することになったので準備詳細レポnoteはまた別で作ります!

それではどうぞ!



はじめに

2023年10月13日に、BASEを使って開いたオンラインショップから私の制作したZINE「happy hour vol.1」が売れた。初めての売り上げ、700円。

ZINEとは、リトルプレス、ミニコミなどとも言われ、個人制作の小規模出版物で、同人誌のようなものだ。漫画関連は同人誌、アート、音楽、文学はZINEと呼ぶことが多いように個人的には思う。(正確な呼称の分け方は知らない)

わたしは現在フリーランスでライターや人事の仕事をしていて、文章を書いてお金をもらうことは日常的なことだ。けど、それは企業なり個人なりのメッセージを代弁する形での文章で、自分の中から生まれ出た言葉ではない。

そのため、自分の作り出したものに対してお金を支払ってくださる方がいることは感動的な体験で、喜びが大きかった。

けっして容易い道のりではなく、ひとりで作っているゆえの自由さには選択の岐路がいくつも待ち構え、天井の無いクオリティの追求に悩まされた。そしてその度にわたしは自問自答によって何かを選び取り、この1冊が出来上がったのだ。
この軌跡は残しておきたい。もしかしたらそれが今ZINEをつくろうとしている人のお役にも立てるかもしれない。そう考えて、2023年6月にこのnoteの下書きをため始めた。

なお、ZINEの制作・販売準備に7か月もかかったのは合間にサボっていたり、私が全ページデザインの必要な仕様にしたため時間がかかっているせいだ。文章だけでつくるZINEなどだと工程や大変さが変わってくると思うので、その前提でご覧いただたきたい。

メモ程度の言及に留まっている箇所もあるかもしれないが、コメントをいただければ返信や加筆修正はできる限りで行いたいと思っている。12,000文字もあり大変に長いのだが、ZINEづくりに興味のある方にご笑覧いただけると嬉しい。気になるところだけ見ていただくのでも構わない。



本題:ZINEを作ろうと思いついてから、はじめて1冊売れるまでの7ヶ月やったこと


全体の流れ

方針確定
アイデア洗い出し
ラフ画作成
ネーミング確定
台割
取材・制作
入稿・印刷
販売手続き(サイト整備、委託依頼)
販売開始
売れた

お断りしておくと、あくまでわたしの製作体験の一例であり、これがどなたにでもあてはまる最適解ではないと思います。

上記の流れをひとつひとつ説明していこうと思う。



1か月目:そうだ、ZINEをつくろう

ー 2023年3月

なんでZINEを作ろうと思ったのか?

この頃は人生について色々なことを考えていた。20歳から働きはじめ15年経つ35歳の中で趣味への執着が抜けてしまい、それを淋しく感じていた頃でもあった。「何か新しいことをしたい」と強く考えていたのだと思う。

元々、洋裁やアクセサリー作り、お絵描き、料理など、何かを「つくる」ことが好きだったわたしは、最近している中でも「仕事で文章を書く」ことの楽しさを感じていた。そこで本を出したいと思い至ったものの、商業出版は遠い道のりだともちろん理解している。いつか実現できたらもちろん嬉しいが、まずは自分の手でつくり発信してみたいと感じた。取り組みやすいこの時代に感謝し、ライトにやってみようと意思決定した。


コンセプトと方針を決定:誰に、何を、どのように?

では次に、どんなものを作るのか方針を決めようと考えた。自分の書きたいことはなんだ?書けることはなんだ?

今のわたしはお酒、料理、暮らしに関することは欠かせないだろう。生活の中で趣味の割合が薄れていく中でも、食べることと飲むことへの執着はむしろ強くなっている一方だった。今趣味を聞かれたらまず答えるのは「飲酒」だ。お酒を絡めたコラムやエッセイを書きたい。

そんな筆力自分にあったっけ?わたしはそこまで偏愛的に語れるのか?1冊分の間がもつようなトピックが自分にあるか自信がなかった。わたしのイメージでは、ZINEというのは何かひとつのテーマを偏愛的に掘り下げるというのが王道というイメージだったのだ。(今はそんなことないと考えています)

そこで、お酒・料理を中核にはしつつも、雑誌形式で好きなことを全部詰め込もう!と方針を確定。ここでメインコンセプトと、想定読者像、読後感の設定まで済ませた。いつもライター仕事をするときにすることと同様だ。そして、アパレル販売員をしている時に叩き込まれた、プロダクトを提供する側の人間が常に考えるべき「誰に、何を、どのように?」をフレームワークとした。

メインコンセプト
酒好きによる、酒好きのための、お酒の雑誌

誰に
お酒とそれにまつわる文化、食べることや料理が好きな20後半~40代女性
何を
お酒やごはんが楽しくなるコンテンツやヒント
どのように
雑誌形式で気楽にパラパラとめくれるようなもの
ビール瓶(大)1本飲み終わる間で読み終えることができるような、手軽なボリューム

想定の読後感
ビール飲みたい!
お酒って楽しいよね~
真似したい!

商業的、マーケットインの考え方なので創作ジャンルの方にはこのフレームは不要とも思う。


下書きのラフをつくる:モチベぶちアゲ👆

次に、書きたいことを箇条書きで洗い出した。そこから誌面のラフを紙に描く。紙を折って本のようにパラパラめくれるようにしてイメージを明確にする。

あくまでもアイデア的に気楽にメモ的に

この作業をすることでテンションがググとアップし、創作意欲が搔き立てられた。進める中でコンセプトや方針を調整したり、より固まっていったりした手ごたえもあった。


名前をつける:大切に育てたいという気持ちが芽生える

こうなるともう猪突猛進モードだ。

と、制作に入ろうとしてなんだかこの子に名前が欲しくなった。「ZINE」ではなく、固有名詞で呼びたい。

わたしはいつも記事の執筆をするとき、記事の仮タイトルを先に決めてから本文を書く。記事のタイトルは、読者に”どんな情報/内容を得られる文章なのか”を知らせ、期待を持たせる役割がある。それはすなわち文章の羅針盤となる。掲げたその看板から逸れないように進まねばならない。単位が記事ではなく冊子と大きくなっても同じように方針を定めたい、と考えた。

ふと何気なく、最近お知り合いになってお酒の席をご一緒した先輩ライターのスズキナオさんに、名付け親をお願いしてみよっかな、と思いつき、企画の主旨を説明してラフ画をお見せする。と、数分も待たず先輩が「happyhourとか、どうでしょうか」と発した。名前が決定した。



2か月目:制作について考える

ー 2023年4月


印刷方法を決定:ラクスルで中綴じ印刷にするぞ!

印刷会社に依頼することにした。小規模ならプリンターで刷って自分の手で綴じたり、リソグラフみたいなオシャレな印刷形式で凝った外観にするのも良い。だがわたしのコンセプトは雑誌で、ある程度見た目の楽しさ・分かりやすさ・手に取りやすさを優先させるべきだろうと判断。多少コストが気になるが、今はネットプリントの会社に頼めば思いのほか安くできる。
A5サイズの料金表


判型を決定:A5判にしよう!

サイズについてはかなり迷った。気軽に手に取ることができ、他のZINEと一緒に陳列しやすいA5にしたかったのだが、情報をたくさん盛り込んだ雑誌形式にするなら小さく見にくい。どうしよう。

迷い、いろんなZINEを見てみようと大阪のミニコミ専門書店シカクへうかがい、色々なものを手に取りお買いものをして実物検証もしてみた。
そして最終的にはコンセプトに立ち戻った。ZINEと読者の接し方をすでに設計しているじゃないか。
ビールを楽しんでいる時に楽しんで欲しいな、とイメージすると、飲み屋にも持って行きやすいようカバンに入れやすいサイズでありたい。テーブルの上で邪魔にならないように、片手でもめくりやすいように。A5判に落ち着いた。


制作方法を決定:Illustratorを使って自分でデザインするぞ!

次に制作方法を決めた。
総合的に検討した結果、わたしはIllustratorを使用して自分で制作することにした。

※Illustrator……Adobeの有料ソフト。プランによって金額は異なるが、1月単位でも使えるし、無料版もあったはず。確か。わたしはもともと年単位で使用契約をしていた。

他に出た候補と検討内容は以下の通り。

Canva
無料。仕事でバナーなどをつくるのにたまに利用していて、使い勝手の良さは知っていた。基本的にはアカウントを取って、写真や文章などの入れたい要素を並べるだけ。フォントも豊富。JPEGやPDFなど他データへの書き出しが容易だったり、レイアウトのテンプレートが充実しているのも便利だ。だが、テンプレを使用すると自由度が低くなり、イチから作るには機能が物足りない(もしくは使いこなせていない)。

InDesign
Illustratorと同じAdobeの有料ソフト。(無料もあるかも)書籍制作・デザインならこのソフトを使う方が大半と聞くし、プロ然の仕上がりが期待できる。ページの型を作ってそこに文章を流し込めば全ページの体裁が整ってくれるのだ。だがわたしは雑誌形式である。写真を多用しページごとにデザインが大幅に違う想定なのであまりフィットしない。

Word、PowerPointなどのおなじみツール
どれも使い慣れているし、ラクスルはこのデータ形式でも受け入れてくれる親切さなのでここからスタートするのが良いのかもしれない。しかし、ソフトの本来の用途はドキュメントとプレゼンテーションであり、全体の仕上がりをレベルアップさせるには明らかに機能的に物足りない。

デザイナーさんに頼む
(この場合使用ソフトは入稿さえできれば相手の使用ツールでOK)
正直、予算があるならこれが最適解だ。餅は餅屋。ツールやカメラがどれだけ進化しようともやはりプロのお仕事が間違いない。
一応比較のために見積もりを取ってみたが、1ページ数千円~数万円と幅がある。ココナラなどで探せば激安で請け負ってくれる方もいるだろうけど。予算オーバーで無理だった。

ほか、手書きなどの力技もアリ。

結論

  • 想定30ページ数で素材も多いことを考えると、限られた予算は取材や印刷に使いたい

  • 幸い、わたしはデザイン関連の仕事は苦じゃなかった

  • Illustratorは仕事でもたまに使用していて操作ができた

  • デザインがうまくく行くかの心配はあったが、まあひとまずやってみようの精神で

  • ラクスルに冊子用のIllustratorテンプレートがあり、基本の印刷ミスは防げそう

だが今振り返ると多少無理をしてでもプロの力を借りた方がアカ抜けた仕上がりとなり、売れ幅が変わったような気もする。文章を紙媒体で掲載するうえでの基本ルールを知らず、恥ずかしいミスや秩序の不在などが起こった。制作は楽しかったが苦労もした。デザインが苦な人、ソフトの操作ができない人は絶対的にプロに依頼することをおすすめする。


ここからいよいよ制作が始まる。すでに作ってあるラフに沿ってページ制作に着手をしよう!こうなれば後はやるだけ!



3か月目:なんか飽きて何もしなかった

ー 2023年5月

準備と構想に気合を入れ過ぎて実制作にあまり手を付けられず。

なにかを始める時ってさ、考えている時が一番楽しいよね。特にこういう作りもの系。ここで重要なことをお伝えします。

制作を始める際には必ず締め切りを設定して自分を追い込みましょう。



4か月目:制作を進められる体制に追い込む

ー 2023年6月

これじゃイカン!と4か月目、なんとかハートに火がついた。(つけた)
そもそも進め方がフワッとしてるからイカンのじゃ!と制作の進行管理をすることに。というか、世の中のZINEの作り方記事などではどれも進行管理の重要さに触れている。先々月、何を調べていたのかわたしは。


台割をつくる:助走

冊子の設計図のようなものだ。表紙から裏表紙まで、どのページに何を配置するのか図形で書きだして全体像やページ構成を把握する。わたしは1か月目の下書きのラフを作った時点であらかた決まっていたので、改めてダミー本をつくる気持ちで取り組んだ。

以下の記事が分かりやすかったな。

こんな感じで作った。

コンテンツとその並び順を視覚的に考える作業。テキストだけでもできるが、わたしは図にして手を動かしながらアレコレ考えていた。


進捗管理表をつくる:現状を見える化するのだ

次に、必要なページと、制作工程を表にしてどこまで進んだか管理をはじめた。

4か月目時点のわたしは少し作業しただけで「もう50%くらいできたので来月入稿かな~」とのたまっていたのだが、表にして管理したら5%進捗だったことが判明した。10倍の差異が生まれている。我ながら仰天だ。仕事でも見積もりの甘さに定評のあるわたしだが、ここまでとは。

これは完了時点のもの。これを台割と兼用しても良いと思う。

縦方向にコンテンツを並べ、横軸に工程ごとのチェック欄をつくる。ラフ、Illustratorベース作成、体裁整え完了、誤字脱字最終確認、ノンブル(ページ番号)入れ……という具合だ。完了したところに済マークを記載し管理する。「あれってどこまで進んだっけ?」といちいち重い制作データを開いて確認しなくても良いので便利だ。

わたしは知人に寄稿をしてもらったり、掲載許可をもらったりの工程もあったので、その進行管理もメモしたりしていた。


ラフを具体的につくり込む:何度目やねん!の下書き作業

実際の雑誌レイアウトなどを参考に下絵を作った。何度ラフを作っているのだ、という話なのだがこれまでとは一応違うことをしているとご理解いただきたい。

デザイン関連全般に言えることなのだが、いざ紙面をつくろうと思った時にPCに座ってはじめて「さぁどうしよう」はかなり危険だ。なので、ここくらいまで下書きを作って、PC上の作業は清書だけ、とするのがベスト。

本誌を見るとこのレイアウトが清書されているのが分かる。左端の表紙だけ様変わりしているのだが。

これを全ページ分つくった。

雑誌や誌面のデザインは初めてだったので、手持ちの雑誌を総動員して、良いなと感じたページにふせんを貼りまくって参考にした。良いと感じた写真の使い方、あしらい、文章量や配置など、見れば見るほど自分でデザインすることにしたのを後悔した。おそらくこの工程が一番時間かかったのではないか……??


素材を準備:写真、文章、あしらいに使うイラストや図形

前項にてつくったレイアウトはあくまで型で、この中に配置される文章や写真がコンテンツのメインだ。それぞれに適した状態になるように制作・準備・加工する。

・文章:大枠の文字数を算出し、執筆。通読してリライトし、文章量やテイストを調整。新規書き下ろしではなく過去noteから持ってくるのはテキストデータに直し同じく通読・リライト・チェック。

写真:様々な端末に散らばる写真を、できるだけ大きなサイズの状態でかき集め、適切な状態に加工する。加工には主にPhotoshopを使ったが、無料ソフトでじゅうぶん。

イラスト・図形:パンダのイラストは手書きで制作。(20体くらい書いた…)ほかはイラストACや写真ACの有料会員になり調達した。

さあ~役者は揃った!ここまで来たらあとはひたすら清書を進めるだけ!



5か月目:エンジンかかった!制作をガシガシ進める

ー 2023年7月


Illustratorを使った清書作業:モストオブたいへん作業祭

ここからは揃ったものをIllustrator上に集結させ、見た目を整えればOKである。いや、かんたんな言い方をしてしまったがものすごく大変な作業だった。つくづく、デザインを入れる人はプロにおまかせすることをオススメしたい……!!!

こういう状態から↓↓

ラクスルの入稿テンプレートである。基本の注意事項が書いてあってべんり

上記のラフを見ながらこうやって配置していき↓↓

フォントひとつ選ぶのもたいへん( ;∀;)

こうやって入稿状態までととのえる↓↓

何時間でも迷うことができ、キリがない

24P分これを繰り返しやる。それのみっちゃのみなんだけど、これが大変なんだ……トホホ。
難しいのが、このクオリティの追求には天井がないこと。ある程度で諦めるか、満足するまで時間をかけまくるかの2択なのだ。わたしほぼ全ページ満足度60%でくじけた。やはり、プロに任せるべきだった。でもなあ、予算が……(二度目)


入稿前の確認作業①:校正

再度通読し、誤字脱字、行間や文字間、句読点の位置など細かい部分を調整する。ここも素人仕事で、印刷後にミスを大量に発見して落ち込むポイントだ。プロにお願いとは行かずとも、この時点で誰か他人に見てもらうと良いかもしれない。


入稿前の確認作業②:寄稿者・協力者に記載内容に問題がないか確認する

①が完了した時点を最終稿とし、それを各所で掲載前チェックに出す。PDF出力し確認を依頼した。

皆さま、その折は快くご協力いただきありがとうございました。


入稿前の確認作業③:権利問題について改めて確認し考える

今回使用した文・写真・イラストはわたしに著作権があるものがほとんどだったが、写真に写り込んでいる人々やものの姿、フリー素材の利用規約、一部使用していた他者に帰属する素材について、本当に使用して大丈夫なのかを最後にもう一度確認した。

・素材サイトの利用規約を落ち着いてちゃんと読む
・権利保有者にテキストにて確認完了メッセージをもらう
・心配なことがひとつあったので、弁護士の有料相談にも事前確認しておいた

弁護士確認まではしなくても!という些細な事象だったのかもしれないが、権利問題は結構こわいのと、職業柄、法務関連には慎重すぎるくらいがちょうど良いと思っているので、ここまでした。「弁護士 無料相談」と検索するとチャット形式、TEL形式などいろいろ質問できるサービスが出てくる。



6か月目:いよいよ印刷&販売準備

ー 2023年8月

試し刷り:コンビニを往復する羽目に

地味にここも大変だった。わたしは自宅にプリンターがないので、コンビニを往復することになる。
はじめはPDFやJPEGに出力したデータをUSBメモリやスマホに入れて往復していたが、最終的にはセブンイレブンのネット予約が超絶便利だったので、ご近所にセブンがある方には激推ししたい。

会員登録不要で、ネット上でデータを預けて、コンビニのコピー機で番号かQRコードをかざすだけ。かんたん-!

なお、言及すると長くなるのでコンパクトに記すが、Illustratorで作成したデータを実物サイズで印刷・確認する、という作業が地味に難しく何度もくじけそうになった。この作業に関しては確実にWordやPowerPointが便利だよなぁ。Illustratorでもスムーズにできるのかもしれないけど。絶対トンボ含んだサイズで印刷されちゃって、結局解決方法が不明なままだった。結果、ラクスルの入稿テンプレートを使わないファイルはうまく印刷できた。(ラクスルさんのせいではなく、わたしのスキル不足のためである)

印刷したものを自分で一読し修正を入れ、最後の最後に名付け親スズキナオ先輩にも見てもらって世に出せる代物かご判断いただいた。超絶優しいひとなので、ポジティブなフィードバックをたくさんいただき調子に乗れた。


値段について考える:700円に決定

(2024/1/28加筆)
何を判断材料に値付けを考えればいいのか分からなかったので、一応こんなことを考えたよ、ということを並べる。

・販売されているZINEはボリューム問わず1,000円前後が多い
・安くても500円弱くらい
・印刷コストは約180円/1冊
・経費はざっくり100円弱/1冊(梱包資材やポスターやポップの準備、BASEの販売手数料、本屋さんへの納品時送料など)
・制作コストは自作なので0円だが、かなりの工数を費やしているのでいったん考えたくないと度外視することに確定

制作コストを考えたら完全に赤字なんだよん☆

以上のことから、手軽に手に取ってもらうには500円にしようかと考えていた。はじめての制作で自信がなかったし、雑誌というフォーマットでコンテンツの一部は時間の経過によって情報価値がなくなるものだったためだ。(星占い)

だが、実際には販売価格から何十%の委託費がかかるなど利幅は思いのほか減ってしまうし、利益を出して設けたいと考えているわけではないけど趣味として続けていきたいと思うと、あまり低い価格は今後しんどい。(印刷費くらいはまかないたい)
なにより、自信はないけど作ったもののことは好きだったので、手に取りやすさは大事にしつつも安売りはしないようにしよう、と700円に着地した。


完成:ラクスルに入稿

いよいよ入稿だ。ラクスルにデータを送信し、規格や使用用紙を指定してクレジットカードで料金を払う。これまでの制作工程から考えると驚くほどスムーズに、とてもあっけなく終わる。
なお、ビビリな私はひとまず30部を注文し、印刷結果に問題がないことを確認し安心したのちに販売用として100部追加で印刷をかけた。(今思うと別に不要な手間だったと思う)

用紙にこだわりたい人、ネット上の注文ではイメージつかない人はラクスルで紙見本を取り寄せるのがオススメだ。無料で用紙の見本を自宅まで届けてくれる。わたしはこれで安心して用紙を決定させることができた。

さて、ここからはラクスルさんが印刷を頑張ってくださっている間の販売準備である。


SNS告知開始:気持ちも盛り上げていこう!

この入稿周辺で開始したのが、SNS告知だ。特に強く反響をもらったわけではないが、発売に向けて自分の気持ちを盛り上げるのにとても良い効果があったと思う。

こんな感じ↓
本文はモザイクで隠して、どんなコンテンツを後悔するのかだけ公開していた。まあ誰もいいねはしていないが。


サイトの準備:紹介ページはNotion、カート機能はBASE

わたしはZINE取り扱い系本屋への委託だけではなく、オリジナルの販売サイトも設けたいと考えていた。買ってくれた人を直接距離近く把握したいし、そんなに大幅な手間でもないので販売窓口は多い方が良いと考えたためだ。

※だが、わたしはこういう煩雑なものの管理に普段からしている職業の人で、過去にECサイトを抱える企業に勤めていたりネットイベントの開催経験から、流れや準備・配慮すべきことを把握していたからこその「大幅な手間ではない」であり、本気ではじめて触れる人にはかなり大変だと思う、と添えておく。

▼紹介ページNotion

メモアプリのNotionを使ってZINEの特設紹介ページを作った。と言っても簡単に紹介文を並べただけの簡素なつくりだ。ただ意外とこの紹介ページを作っておくことで、本屋さんへの営業や人への紹介がとてもしやすくなったのであって良かった。
Notionは無料。本当に便利なサービスでいつも感動している。わたしはポートフォリオもこれを使っている。Web公開は設定ひとつで簡単にできる。何も難しいことはない。

なお、ここでは紹介できないが購入者限定サイトとアンケートフォームも準備した。特にアンケートは、読み手の方の率直なご意見が欲しいと思い慎重に設計した。ご回答いただいた内容はとてもありがたいお言葉と勉強になるご意見であふれており宝物になるので、これからZINEを作る人はどうにかして感想を受け取る仕組みを設けると良いと思う。

▽参考までに、よかったら設問だけでも見てね↓
ZINE happy hour vol.1読者アンケート
※読者以外の方の回答はお控えくださいm(__)m

▽こういうのもつくった↓
happy hourまたはその著者へのお言葉投げ処
※購入などはしていないが何かコメントしたい人のための受け入れ窓口。お気軽にどうぞ


▼BASEのSHOP

まあでも、わざわざNotionにページを設けないでも、BASEの中の商品紹介やABOUTページもあるので、こちらだけに集約してもいいかもしれない。メンテナンス大変だし。だた、今後商品を追加していきたい、などページごとの役割を分けたりするのには別でもいいかも、という程度。

販売モールはBASEにするのか、minne、SUZURIと色々候補はあったが、この頃にはZINEの準備に疲れており、あまり比較せず、民主主義的に利用者が一番多いBASEにした。今後悔などもしていないので、みんな別にコレでいいのでは?という気もちにもなっている。

なお、上記のBASE SHOPは30分くらいで作ることができた。(文章などの素材はすでに手元にあった前提で)マジで簡単!BASEすご!最近のサービス本当にすごい!サイト完成時は在庫を0にしておき、印刷が完了するのを待った。


委託の準備:つまり本屋さんへの営業活動だ

ZINEは全国の書店に流通させるハードルがとても高い。一般の書籍につういているISBNコードが無いためだ。(これがあれば第一関門クリアという感じだろうか)印刷部数が少なくてもこのコードを発行してくれるサービスは存在し、意外と安いので取得してもいいのだが、まあスモールスタートということで今回はあくまでZINEとして界隈での流通から目指すことにした。

ZINEを扱う本屋さんへ依頼をする流れは以下の通りだ。

1. ZINEを扱っている本屋さんを探す
2. 委託を受け付けているか、可能ならルールを確認
3. ルールに則って依頼
4. 条件の交渉、発送
5. 精算

少しだけ上記について補足しておこうと思う。

1.ZINEを扱っている本屋さんを探す
これはネットで検索すれば簡単に見つかるし、ZINEは「雑貨」という扱いをしているところが多いので、意外と雑貨屋さんやカフェなどに扱いがあることも。
わたしは先輩にアドバイスいただき、すでに近しいテーマのZINEを扱っている書店さんをピックアップした。加えて酒の穴の本を取り扱っている書店という条件もプラスし、完全一致している書店の優先度を高めてアプローチしようとリスト作りをした。

2.委託を受け付けているか、可能ならルールを確認
意外と申請ルールや窓口が無い本屋も多い。ルールがあるところはかなり丁寧に記載してくれているので、その通りに従う。無い場合はお問合せフォームやSNSのDMを使ってコンタクトを取ることに。

3.ルールに則って依頼
「こんな本を作った、扱ってもらえないか、条件はコレコレで考えている(もしくは貴店の基準でOK)良かったら見本を送る」ということをなるべく誠実に伝える。この時にZINE特設サイトや、見本PDFの限定公開をしておいたものが役に立った。
(見本PDFは、GoogleドライブにPDFをアップしURLをシェアしたもの。権限設定に注意してね。)

4.条件の交渉、発送
条件についてはほぼ「貴店の基準にお任せ」としている。書店から、基準がないのでご希望を、と言われたら委託形式で7割、というのがわたしの基準だ。(委託して売れた分だけ精算の委託、書店が在庫を買い取ってくれる買い切りの2種が主だと思う。)
あと、発送するときに販促品をつけると喜んでくれる書店が多かったように思う。ポスター、POP、見本誌(ビニールカバーをかけたもの)、見本誌に付けるステッカーなど。

5.精算
精算の時期・方法についても、ほぼ「貴店の基準にお任せ」方式を取っている。



7か月目:刷り上がり、いよいよ販売開始!

ー 2023年9月

刷り上がり!!:いよいよ発送・在庫解禁ダ!!!


届いた!刷り上がった本、100部!興奮してしまったがこれからが大切だ、さぁ届けるのだ。販売まわりを進めていく。

届いたぜ……


まずは本屋への営業活動を実働へ

先月にピックアップした本屋さんに順次連絡をしていく。お眼鏡にかなわない、ご多忙などの理由で返信が返ってこないことも想定していた。返信率は30%くらいかなと予想していたが、80%ほどだった。意外で嬉しい誤算。
※上記は発売当初の数字、2024年1月現在は50%ほど

本屋さんへの納品は以下のように行った。

・発送はレターパックで(追跡できるし普通郵便より早い)
・商品はビニールでくるむ
・納品書と請求書を同梱(時々失念して大変だった)
・簡単な送付状をつける

なお、ただ発送するだけなら楽だったのだが、わたしは初版分にオマケをつけていたのでそのラッピング作業も重なりかなり大変だった……!

左はポスター(A4)、右は初版オマケにつけるPOP。

マイショップへの在庫アップ

次にマイショップ、BASEの在庫情報を10にしてみる。更新すれば、これでもう販売は開始だ。保存ボタンを押す時、ちょっとドキドキした。

BASEの画面。画面は在庫1だが、これを10にして更新した。


お世話になっている方への献本

取材にご協力いただいた方、ぜひ読んでいただきたい方、営業先などあらゆる場所にも発送した。こちらは封筒にて、手紙を添えて普通郵便で。ただ、送りたい人が多すぎ&思っていたより本屋さんからの取り扱い可返信が多かったのですでに在庫危うく、いまだに送れていない人もいる……!本当に申し訳ない限りである。
見積もりの甘さ第2回目。


販売開始!SNS発信:色んな人に読んでもらえますように

さぁ、ここまでお膳立てが整ったらお次は販売開始を知らせよう。ZINEをつくり販売開始した旨をあらゆるSNSにて告知した。Twitter、Instagram、Facebook、スレッズ。

こんな感じである↓↓

ツイートに誤字があるけど、まあ許してちょ。


SNS発信から1時間、1冊お買い上げが😭😭

BASEから通知が来た。happyhourを買ってくださった方がいた。ジーンと来た。うわー作った本が売れたよ!!

不思議なもので1冊売れるとちょろちょろと売れていき、販売開始からほどなくして手元の在庫分は旅立っていった。なんと嬉しいことか……!

とはいえすぐに我にも返る。ZINE周りの情報に敏感な方々は目が肥えておられる感度の高い方ばかりだ。楽しんでいただけるかの不安も同時におぼえる。分かっていたことでもあるが、届ける時は本当にドキドキした。

お嫁に行く我が子。購入者者さんに楽しんでもらうんだよ……




と、ここまでがZINEを作ろうと思い立ってから、1冊お買い求めいただくまでの、長い長い道のりでした。そのぶん文章も超超長くなりました。

もしここまで読んでくださった方がおられたら本当にありがとうございます。

乱筆でまとまり切っていない情報もあったことと思いますが、ご参考にしていただける箇所があれば嬉しいです。

もし記載されていないことで知りたいことや追記・修正の依頼があるようであれば、コメントやご連絡いただければできる限りで対応したいと考えていますので、ぜひお気軽に話しかけてくださいませ。

気が向いた方、もし投げ銭的にサポートいただけるようであればいただけると泣いて喜びます。次のZINE制作の企画中なので、その制作費にあてさせていただきます。


※2024/8/10追記
9/8に大阪で実施する文学フリマに出展することになりました。新作ZINEを作りながら出店準備をしているので、また同じように詳細をレポったnoteも書けたらいいなと思っています。2024年中には……!!


なお、ふだんこのnoteでは日記をつけておりまして、フリーランスライターとして働き、日々酒を飲み料理をつくり食べるさまを記録しています。ハピ泡に併せてそちらもぜひよろしくお願いいたします。

お読みいただきありがとうございました。

はしお


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はしお
もし投げ銭的にサポートいただけたら泣いて喜びます!いただいたサポートは次回ZINEの制作費にあてさせていただきますm(__)m