『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
もっと本が読みたくなる、そんな気持ちにさせてくれる本でした。
京大卒の作家、書評家である三宅香帆さんの著書だ。
現代人の働き方の話かな、と思いながら読み始めた。
この本は労働と読書の歴史を振り返りながら、現代の私たちが働きながら本を読むことに苦痛を感じている理由を明らかにしている。
以前にも「マッチョは自己啓発本が好き」というテーマでnoteを書いたが、自己啓発本に関する歴史も書いてあった。
以下は大まかな流れだ。
日本の近代化の過程で、国家が青年たちに立身出世を追求させた。この流れを受けて「修養」という名の自己啓発が流行った。
修養の流れを受けて、青年たちの間に立身出世の手段として「教養」を重視する傾向が生まれた。
戦前〜戦後にはサラリーマンが日本に生まれた。読書はサラリーマンへの娯楽的な立ち位置となった。
その後、バブル崩壊後の日本では労働環境が変化し、情報社会が到来するなかで、自己啓発書が売れるようになった。これは、自分の意図していない知識を頭に入れる余裕のない人が増えたため。
自己啓発書の特徴は「ノイズを除去する」姿勢にある。つまり自分のコントローラブルな行動・心持ちのみを意識し、社会・他人といったアンコントローラブルな要素を捨て置くことになる。
確かにこれまで、数多くの自己啓発本を読んできましたが、『7つの習慣』とか有名どころは全て自分のコントローラブルな領域に集中しましょうという話題だった。
読書という趣味は自分の予想できないような内容が飛び込んでくることがある。いわば、アンコントローラブルな趣味になる。
だから現代人は「本を読む」という行為をしない。読んだとしても、自己啓発本がメイン。本を読む時間は働くこと、生きていくことに対するノイズになるからだ。無駄無駄無駄。
そう考える人が多い中、自分は積極的に読書をしている。本屋では、自己啓発本を手に取りそうになるけど、グッと我慢している。読書のアンコントローラブルな部分に面白みを覚えるし、読書家はやはり懐が深い印象がある。
読書を通じて、他人の思考回路をトレースできるからなんじゃないかなと思う。