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三流マーケターの皆さまに贈る、生成AIとの向き合い方
当時シリーズAのスタートアップHubbleにマーケティング責任者としてジョインする以前、新卒から10年ほど勤務した電通でのこと。
競合プレゼンや大型ピッチの前は、クライアントに提案する新しい価値やコンセプトを言語化するために、チーム全員で朝まで唸り合ってたことを思い出す。全員が真剣にアイデアを出し合って、それをぶつけ合って、何度も壁にぶつかりながら、最後に「これだ!」という瞬間を掴む。
あのエネルギーの総量は凄まじくて、胸を張って『創造する仕事』と呼べるものだったと思う。
マーケティングの本質である、「『事業やサービスが提供するソリューション』と『消費者やユーザーの期待する価値』を繋ぐもの」を発見し伝えるために、チーム全員のエネルギーと視点を結集する必要があった。
もちろんそのプロセスには限界もあった。時間も人数も必要だったし、限られた視点でしか物事を見られないことも多かった。
それが、今。生成AIの登場で、たった一人であの「チームの総力戦」を再現できる時代がやってきたんじゃないか、そう思う。
生成AIを使うと、膨大な量のアイデアを短時間で生み出せる。それはまるで、10人のチームが朝まで議論していたプロセスを、一人で何百回も試行するようなものだ。これは単なる効率化の話じゃない。マーケティングの本質に踏み込むための鍵となった「エネルギーの集中」が、一人でも擬似的に実現できるようになったってことだ。
ここで注意したいのが生成AIが大量に生み出したアウトプットから最適なアウトプットを『選ぶ』だけでは、結局のところ既存の枠組み以下の「三流」の結果に終わる可能性が高いということ。
多くのマーケターが生成AI時代のマーケターの必須スキルてして「選ぶ力」の重要性を説いている。いかにマーケティング業務の中でAIに代替できる業務があるかをリストアップし、それはどういったスクリプトを投げればその業務がAIに置き換わるのか、結果として業務効率化できるエクセレントなオペレーションを構築できるのか躍起になって解説している。
そして私に言わせればこの状況が、偽者マーケターが跋扈する日本の現状を示している。いかに早く大量の候補をAIに生成させても、生成AIの出すアイディアがイマイチなら、選ばれるものは当然イマイチであり、イマイチの成果しか事業や顧客に提供できない。そんな方法を恥ずかしげも無く若者にマーケティングとして紹介している人間が多過ぎる。お前らが日頃から言っている顧客ファースト、消費者ファーストとは何か、もう一度考えてみてほしい。
AIのアウトプットは当然与えられた指示やテーマに依存するため、AIが何を生成するかは、人間がAIに何を問い、どのような枠組みで考えさせるかにかかっている。一流のアウトプットを生むためにはAIにどんな問いを投げかけるか、この力が必要だ。
固定概念を疑い、枠を超えた視点から問いを作ることができなければ、AIが返す答えもまた凡庸なものに留まる。AIにただ「これを考えて」と投げるだけでは、深いアウトプットは得られない。むしろ、「自分ではまだ言葉にできていない感覚」をAIに伝えることで、AIはその曖昧さを起点に新しい切り口を提案してくれる。
つまり人間がまず自分の中にある違和感や曖昧な感覚に気づき、それを言語化する力が求められている。自分が本当に伝えたいものや求めているものを、AIに対して開示しなければ、AIはその断片を拾って広げることができない。それが、生成AIを使いこなす上で欠かせない「問いを作る力」だ。AIは、与えられたテーマや指示の枠を超えることができない。だからこそ、自分の中にある固定概念を疑い、それを破壊創造するプロセスをAIとともにするのだ。そのために必要なのは、自分自身の違和感や未整理な感覚をAIに開示する力だ。
たとえば、あるファッションブランドのブランドマーケターが「働く女性に自分らしさを感じてもらえる服」を世の中に提案したい場合、普通にAIに投げると、「現代女性のライフスタイルに寄り添う」「多忙な日常を支える」といった、平凡な案が返ってくるだろう。
なので、まずAIと固定概念を壊すために、自己開示を行う。
「「自分らしくいられる服」を届けたくてコンセプト設計に悩んでるのよ。でも正直「自分らしい」って表現は使い古されてるじゃん?だからもうターゲットに刺さらないのよ。でも本当に届けたいのはただのキャッチコピーに止まらない、本当の『自分らしさ』なのよ。これを言葉にするにはどうしたら良い?」
のような感じ。自分の思っていることをそのまま言う。
するとAIからは、
「自分に戻る服』、『他者から解放される服』『視線から解放される服』『自分の心地よい時間を作る服』や、『見せるためじゃない、感じるための服』といった「自分らしさ」という言葉のインターフェースのさらに一歩奥にある切り口が提案される。
その中から、さらにたとえば「視線」「時間」「他者と自分の対比」など気になった点で同じように自分の中で曖昧な部分を深掘りしていけば、コンセプトの核が生まれる。
ざっくりとした例だが、生成AIを使いこなすために必要なのは、「選ぶ力」だけでなく、「新しい概念を切り拓く意思を持った、自己開示力」だということ。
自分が何に悩んでいるのかをAIに自己開示し、「自分らしさ」という表面的な言葉のインターフェースを破壊し、その奥にある本質に潜るための問いをAIに投げかけ、一緒にDiveDeepして、切り口を提示してもらいながら共に創造を繰り返す。
そのためには切り口を作る呼水となる「『問い』を投げかける力」が必要だ。。自分の違和感や未整理の思考をAIに正直にぶつけることで、AIは新しい切り口を提案できる。そのために生成AI時代では自分が抱える曖昧な感覚や矛盾を認識し、それをAIに伝える力が人間には強く求められる。
これこそが生成AI時代のマーケーターに求められるスキルだと、私は思う。
それがなければ、AIはよくある答えを出すだけのよく喋る三流コタツ記事ライターと変わらない。問いの質が変われば、AIが生み出すアウトプットも一流へと進化する。
やるか、やるか、やるか。