(H63) 中国の一帯一路の裏で行われているサイバー空間の戦い-1 (2020.7.3) by 一田和樹 より抜粋加筆しました。
⑴ 「超限戦」としての一帯一路
現在、中国はシルクロード経済圈構想=一帯一路を世界に展開しています。
参加国はすでに120ケ国を超え、
ヨーロッパでもG7の一角であるイタリアが参加した他、ギリシャなども参加しています。
そして、ロシアと手を組んで北極圏を対象にした、
「Ice Silk Road」(2017年11月)構想も進めています。
一帯一路は経済圏構想であるが、
経済活動だけに目を奪われていると本質を見誤ります。
政治、医療、教育、文化、メディア、安全保障など幅広い範囲を網羅しています。
中国が一帯一路で行っているのは、
「超限戦」と呼ばれる「戦争」と考えるべきでしょう。
超限戦とは、
1999年に中国で刊行された『超限戦』という書物で提示された新しい戦争の形のこと。
「あらゆるものが手段となり、あらゆるところに情報が伝わり、あらゆるところが戦場になりうる。
すべての兵器と技術が組み合わされ、戦争と非戦争、軍事と非軍事という全く別の世界の間に横たわっていたすべての境界が打ち破られるのだ」(『超限戦』喬良、王湘穂)
超限戦とは、
戦争のために、軍事、経済、文化などすべてを統合的に利用することです。
軍事主体の戦争は、もはや過去のものとなりました。
もはや軍事と非軍事の区別はない。
そう考えたのは中国だけではなかった。
2014年には、
ロシアの新軍事ドクトリンに超限戦に近い戦争の概念が盛り込まれ、欧米諸国はこれを「ハイブリッド戦」と呼び、世界は否応なしに超限戦/ハイブリッド戦の時代に突入した。
近年のフェイクニュースやネット世論操作も、
超限戦あるいはハイブリッド戦のひとつです。
⑵ あまり知られていない事実を紹介
①一帯一路参加国合計で世界人口の62%、GDPの30%、エネルギー資源の75%(2018年時点)
②中国と一帯一路参加国の人口は世界全体の62%を占め、GDPは世界全体の30%、エネルギー資源の75%(2019年1月)。
③測位衛星を世界でもっとも多く保有、次世代モバイル通信5Gで圧倒的なシェア。
世界で最も多くのAI監視システムを提供、SNS利用者数ランキングトップ10の半分を中国SNSが占める。
一帯一路の一部であるデジタル・シルクロード構想は、
デジタル技術をてこにした世界展開です。
中国のITは現在世界の最先端を走っており、多くの市場を席巻しつつある(ハーバービジネスオンライン、2020年1月)。
④中国において政府と企業、研究機関は一体。
企業や研究機関はこれらを通して、中国政府の強い影響下にあります。
中国には国家情報法があり、
中国のすべての組織と国民は国家情報活動への協力を義務づけられています。
国家情報法により、在中国企業では、
政府へすべての情報が筒抜けだと言われています。