(H56) 世界はアフターコロナ政策で水素関連の投資増大-2 (2020.7.27) by 中尾真二 より加筆抜粋しました。
⑸ アフターコロナ政策で水素関連の投資増大
---:海外ではFCVについてどんな動きがありますか?
手嶋氏:欧州ではアフターコロナを見据えた政策で、水素関連の投資増大が目立っています。
ドイツ政府は、1兆円規模の投資を表明。
欧州では、大型トラックや長距離輸送では、
FCVへのシフトが進んでいると見ています。
米国では、カリフォルニア州は2023年に商用車にもZEV規制を適用する予定ですので、トラック、バスも電動化を進めないと規制をクリアすることができません。
中国でも、同様な動きがみられ、FCバスの市販化が始まっています。
インドも、TataがFC大型トラックの開発・普及を進めようとしています。
OEMの動きとしては、ヒュンダイが活発です。
クラス8の大型トラックの開発に加え、財閥という企業体を生かし、非常用電源や鉄道など自動車以外にも燃料電池を導入しようとしています。
⑹ 商用車はEVとFCVの両方で
手嶋氏:排気量の大きい大型トラックは、
CO2の排出量でいうと車両全体の排出量の70%を占めるといわれています。
各国の環境規制の達成には、
大型トラック・バスの電動化が不可欠です。
都市部や中距離まではEVで対応できるかもしれませんが、大陸横断など長距離となるとFCVのメリットが生きてきます。
各社ともにEV、FCVと固定するのではなく、
両方を用途に応じて展開できる戦略を考えているのではないでしょうか。
⑺ 2040年グリーン水素でLCAの課題解決
---:FCVの課題として、LCAの問題があると思います。
水素を作るためのエネルギー消費を考えると、ライフサイクルでのCO2排出量はEVよりも増えるという試算もあります。
この点の克服方法は?
手嶋氏:長距離輸送の大型トラックでは、
FCVのほうがEVより優位性を発揮できる領域が多いと思います。
現状、水素生成に天然ガスが多く使われているため、LCAは課題のひとつとなっています。
風力や太陽光による自然エネルギー由来のグリーン電力を使うことで、「グリーン水素」を増やせば問題をクリアできると思っています。
⑻ 水素社会に乗用車のFCVは必須
---:FCVは、商用車、大型トラック、バスとの親和性が高いように思います。
その中でトヨタが乗用車であるMIRAIを作る意味。
戦略的な位置づけは?
手嶋氏:水素社会の実現、FCVの普及を考えたとき、
台数比で100倍くらい多い乗用車のFCVは必要と考えています。
水素ステーションの普及、インフラ整備でも、燃料電池乗用車の存在は無視できないはずです。
トヨタは乗用車のメーカーでもあります。
これを無視してFCVの普及はないと思っています。
最近、SDGsが話題ですが、
水素社会の到来が重要なポイントになる予感がします。