見出し画像

【論文読了】経営者交代成功の条件

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2024年10月号の特集は、経営者交代成功の条件でした。

どんな経営者でも世代交代のときはきます。また昨今は後継者不足の抽象画企業が多いという問題がありますね。

あるいは新しいポジションに就いたときも、前任者から交代して引き受けることになりますね。

今月号では大企業の経営者の世代交代をテーマとしています。引継ぐものが沢山ある中で、どう上手くやるのか気になるところです。


よいサクセッションは、よい企業でしか起こらない

出世欲の強い人は社長にしない方がいい

社長と言えば一番出世した人が就くポジションです。しかし若い頃から出世が第一という意識の人は経営者に向いていないという話が最初に出てきます。

理由は企業はみんなで成果を出すからですね。自分が勝って地位を手に入れるという考えの人は、あまり上の地位に就けない方がいいと私は考えます。

外部人材より内部人材を社長にする

また外部からやってきた経営者についても触れられています。真っ先に思い付くのはプロ経営者です。

アメリカでも多く、日本でも多少は見かけるプロ経営者の場合、外部からやってきてCEOになります。これは抵抗があるわけですね。変革やリストラなど大きな転換期では有効なこともありえますが。

通常はやっぱり内部の事情を知ることが大事ですから、内部で時間をかけて発掘していくことになるのですね。

突出した人材を発掘する

ところでこのインタビューでは、突出した人材は育成ではなく発掘になるそうです。なぜなら突出した人材は勝手に育つからです。自ら学ぶことが普通だからですね。

発掘のために新規事業提案制度やMVPのような表彰制度、人前でプレゼンする機会などを用意するわけです。突出した人材が目立つ機会を作るわけですね。

もう1つ気付いていなかったのが、ボトムアップよりトップアップという話です。会社の底上げが重要と思っていましたが、上位層をさらに高めていく方が、ボトム層も上がるんですね。

むしろ上位層を高めて、その知識や技術を中位・下位へ伝えていく方がいいのかもなと思いました。上位層がハイレベルなら、中位・下位が目指すロールモデルもできますし。

そういえば社内イベントで、例えばコンテストやハッカソン、記事執筆などがあれば、名乗り出る人とそうでない人がいますよね。そういう活動でも、人材の発掘ができるんだなと思いました。

新CEOは権力と影響力をどう使いこなすべきか

CEO交代が失敗する主な理由は、新リーダーが権力と影響力のダイナミクスを上手くマネジメントできないからだという論文です。

引継ぎ期の後継者の行動次第で、後継者が立場を失って現CEOが慰留されるか、継承が成功するか大きく分かれるそうです。

案件単位の引継ぎだと、そんなに時間は取りません。しかし組織の上位層の引継ぎには時間がかかります。だからこそ慎重に時間をかけてやることがあるのですね。

この論文では次のようなやり方が紹介されています。

  • 断定的な説得(事実で断言する)

  • アメとムチを使う

  • 文化に合ったやり方、すなわち工学系や科学系の会社なら事実と理論で説得するなど

  • 敵対者へ対応する

  • 自信満々になるより謙虚になる

敵対者への対応は悩ましいですね。なぜなら後継者の考えに反対の人もいれば、自分がCEOになりたかったという出世欲の強い人もいるからです。

こういう人たちに全社的な利益をハッキリと伝える必要があるようです。しかし出世欲が強い人は、抵抗したり辞めたりしそうですね。

私はプロジェクトのトップしかやったことがありませんが、出世欲の強い同僚に反発されたことはあります。わざと足を引っ張るようなことをされました。

この論文を読んでいると、取締役や現場のスターなど、社内で影響力を持っている人と関係を築いて味方にしておくことが重要なようです。これはとても納得できます。

こういうのは社内政治なわけですが、数十人以上の組織ともなれば派閥や仲の良し悪しも出てきますので、敵対者たちと一人で戦うのは無理です。

それに協力者を増やした方が、仕事もスムーズに行きます。一人で何でもやろうとしてはいけませんね。

信頼を勝ち得たリーダーは3年目に飛躍する

ステークホルダーからの信頼獲得には2年かかり、そこまでにやったことで3年目から実績に差が出るという論文です。

新任CEOの多くは、いや多くの人は新しいポジションに就任すると意気込んで、すぐに成果を出そうとします。それにCEOというと結果を出さなければ解任されてしまいます。

しかし業績はすぐには変わりません。だから短距離走ではなくマラソンなのです。

だから時間をかけて(とはいっても2年くらいで)、自分の考えを伝えたり、業績が行き詰っている会社では文化を再構築したり、やることとやらないことを選択したりします。

自分が考えていることを何度も伝えるという話も出てきます。

そういえばDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューには経営者へのインタビューがよく出てきますが、「何度も伝えました」という話もよく出てきますね。

CEOがうちの会社をこうしていきたいと語ることで、従業員は自分が所属する会社がどこへ向かおうとしているのかが解ります。先行き不透明な会社よりも、夢やビジョンがある会社の方が勿論いいですよね。

その他にも従業員から意見を集めるという話も出てきます。

CEOが意気込んで、トップダウンで自分がやりたいことだけ押し付けると、やらされている感が取締役や管理職に出てしまうでしょう。それが現場にも伝染してしまう可能性もあるでしょう。

こうやってみると、CEOの仕事は個人のパフォーマンスとは大きくかけ離れていることが解ります。方向性を示すことや意見を吸い上げること、調整事などが多いと感じます。

退任を控えたCEOが直面する5つの分岐点

最後は退任するCEOの心情や行動に着目した論文です。

CEOの継承に関しては私は全く知りません。そこでちょっと気になったことを挙げてみます。

  • 継承プロセスはCEOが始めることが83%もある。

  • 後継CEOが就任前に前CEOが退職するケースが多い。

  • 継承が済むと前CEOは脇に追いやられる。

  • 退任後の計画を立てておくことが重要

  • 個人のアイデンティティと会社や役職を強く結びつけないことが重要

意外にも、そろそろ次の人に任せようと言い出すのはCEOなんですね。でも他に言い出せる人もいなそうですね。

しかし後継CEOが就任前に前CEOを退任させるか、継承プロセスから締め出す例が多いそうです。引き継ぐべきことが多いはずなのにです。これでは次のCEOも困りますね。

継承が済むと前CEOが脇に追いやられるのは仕方ないでしょう。もう過去の人ですから。会社によっては会長→顧問または相談役として影響力を発揮し続けることもありそうですが。

脇に追いやられるからこそ、退任後の計画と個人のアイデンティティが重要なわけですね。会社を出て役職を失って、仕事も終えて、何をしようか?ということです。

継承と言えば後継者にちゃんと引き継ぐことが重要視されますが、前任者は失うものが大きいわけです。しかし会社が考慮してあげることでもなさそうです。自分で決めておく必要がありますね。

終わりに

リクルートの例では突出した人材を見つけ出す話がありました。人材を発掘しつつ育てられるような仕組みを考えたいところです。

他の論文では、社内政治みたいではあるものの、協力者を集めることで仕事を上手く回せるようになることの重要性を感じますね。

そして最後の論文では、引継ぎをしっかりやり終えることと、役目を終えたら次のステップをよく考えることの重要性を感じます。

重要なことは、仕事内容だけ引き継ぐことではなく、関係者との関係構築を引き継ぎ期間にしておくことなんだなと感じました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?