塔の中の姫君【短編小説】
<月曜日>
“良い魔女”は、どことなく目の焦点が定まらぬ様子で、何かをずっと考えているようだった。ラプンツェルは、彼女が窓に目をやるたびに、胸の中に蟠るもやが次第に色を濃くして、しまいには息を詰まらせるような気がしたけれど、それを口に出すと不安がはっきり形をとる気がして黙っていた。
良い魔女はそれに気がついたのかどうか。にっこり笑うとラプンツェルの長い黒髪を丁寧にブラシでとかしながら歌うように言うのだ。
「今日はどの本を読もうか? 将棋でもいいし、絵を描くのも、折り紙や