明石 白(歴史ライター)

日本史系の書籍ライターです。Web記事も書いてます。noteでは日本の歴史に関連することもそれ以外も書いて楽しんでいます。書くまでの儀式が長い人。方向音痴。よく寝ます。虫を見るのが好きですが、触れません。

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戦国時代の辞世を集め、心を込めて「戦国百人一首」を作る試み

辞世とは死にぎわに残す歌や詩のこと。 仕事で歴史上の有名人についての記事を書くとき、彼らの辞世に触れることがある。 和歌や俳句、漢詩などの専門家じゃなくても、辞世に込められた力に感じ入ったことはある。 それらは、生きるか死ぬかの戦場で戦う武将たちの歌であって、世に有名な『古今和歌集』とか『小倉百人一首』の和歌などと比べてつたなく、優美さなどからはかけ離れているものも多い。 だけど、辞世は普通の詩歌にない重みや緊張感に充ち満ちている。 考えて見れば、死に際の最後の作品だ。 最期

    • 「光る君へ」うろ覚えレビュー《第44話:望月の夜》

      ■さよなら三条天皇病身にあってもなかなか政権を諦めきれなかった三条天皇。 道長一家と深く関わりさえすれば、地位を強固にできると思ったのか、娘の褆子を頼通の嫡妻にする話を道長にもちかけた。 だが、前話でもおわかりのように隆姫以外の妻は欲しくない頼通は、道長に「ノー」を突きつける。 はっきりと天皇に断ることができない道長は、頼通に仮病でやり過ごさせようとする。しかも病の原因はあの藤原伊周の「呪い」なんだって。 死後にもこんなことに使われる伊周はまことにお気の毒である。 卑怯だが

      • 「光る君へ」うろ覚えレビュー《第43話:輝きののちに》

        ■三条天皇が危ない藤原道長との覇権争いで生き生きと張り合ってきた三条天皇だが、ついに彼は病に陥った。視力が衰え、耳も聞こえなくなってきたのだ。 一説によると嗅覚もなくなっていたのだそう(でも、嗅覚についてはドラマにしにくい。「朕の飯は香りがあらへん! まずい!」とかいうのは、なんか違うよね)。 道長はこれ幸いにと三条天皇に譲位を迫る。 言葉遣いは丁寧ながら、結局は目も耳も効かなくなれば仕事ができないので天皇は辞めてくれ、と言い方は直接的だ。 次に天皇となる東宮は道長の孫であ

        • 「光る君へ」うろ覚えレビュー《第42話:川辺の誓い》

          さぁ、さっさと始めよう。 ■三条天皇と道長のシーソーゲーム三条天皇には女御として姸子と娍子がいた。天皇は、まず道長の娘である姸子を「中宮」として昇格させる。道長がそれを断るはずもない。ところが、1ヶ月後に今度は、天皇は道長に対して娍子を「皇后」にしたい、と言った。 一条天皇の時代に、すでに定子という后がいる一条天皇に対し、道長はかなり強硬に長女の彰子を2人目の后にさせた。これが「一帝二后」。その先例を挙げて三条天皇は、それをやらせた左大臣・道長に「異存あらへんやろ?」とい

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          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第41話:揺らぎ》

          ■はじめに第41話のタイトルの「揺らぎ」。これは何を意味するタイトルか。 ドラマの脚本を担当される大石静先生の意図はわからないが、勝手に推測してみた。 この「揺らぎ」とは、表面的には「この世の春」を謳歌するかのような藤原道長だが、実際には彼を中心とする藤原家とその周辺に関わる周囲の人々との関係に少しずつほころびが生じ始めていることを表しているのでは…。 今回はその点を意識して書いてみる。 ■三条天皇はやる気だ三条天皇は、年下の一条天皇に先に即位され、なかなか天皇になれな

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第41話:揺らぎ》

          東京国立博物館の「特別展 はにわ」がおもしろくて。

          現在、上野公園にある東京国立博物館の平成館で、特別展「はにわ」が開催されています。 実は、会期直前の内覧会に参加する機会を得た自分は、トーハク(東京国立博物館)に行ってきました。 数年前にトーハクで開催された「縄文展」で、火焔土器や遮光器土偶に圧倒された経験がありました。今回もあのときの興奮を求めて「特別展 はにわ」に吸い寄せられてきたわけなのです。 「特別展 はにわ」の目玉は、トーハク平成館の入口上部に掲げられた大きなバナーの中心に見える写真の「挂甲の武人」。 今回は

          東京国立博物館の「特別展 はにわ」がおもしろくて。

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第39話+40話:とだえぬ絆+君を置きて》

          ■死んでいった人たち劇中ではすでに何人もの登場人物が死んでいったが、ここにきて、キャラの立った人びとが立て続けに亡くなった。 「生き生き」した話の展開が求められないのは仕方ないか。 【藤原惟規】 藤式部(まひろ)の弟が亡くなった。当初から不思議なテイストのキャラクターであり、よくあんな生真面目な父親・藤原為時の息子に生まれてきたものだと思うような気の良い、あけっぴろげな性格であった。どこか深刻な為時の一家の雰囲気は彼によって救われていた。まさに癒やし的な存在。 学問が苦手

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第39話+40話:とだえぬ絆+君を置きて》

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第38話:まぶしき闇》

          今や敦康親王と敦成親王による東宮(将来天皇となる皇太子)争いがストーリーの中心だ。それは、今は定子Vs彰子であり、伊周Vs道長であり、清少納言Vs紫式部につながる。 ■ナゴンの本音37話の終わりから視聴者を引っ張ってきたナゴン(清少納言)と藤式部(まひろ)との緊迫感ある対決。 とはいっても、好戦的なのはナゴンだけである。 「『源氏の物語』読みましたで。引き込まれましたわ」 「じっとり考えてはって、根がお暗いでんなぁ」 現代でも紫式部と清少納言との性格の違いを対比させると

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第38話:まぶしき闇》

          鳥居景近の辞世 戦国百人一首99

          鳥居景近(?-1573)は、越前国(福井県)の朝倉氏の家臣である。 鳥居家には「与一左衛門尉」を名乗る系統と「兵庫助」を名乗る系統の2つがあり、景近は「兵庫助」を名乗ったとされる。与七という子があった。 朝倉義景の側近として仕え、取次役として外交的役割を果たしていた人物だ。 1573年(天正元年)に朝倉義景の軍は織田信長の軍に敗れたが、その際に自刃した義景の介錯を務めたのが鳥居景近だった。 景近は、主君と同じく六坊賢松寺で自害している。 「先に出かけた小萩の本」を朝倉義景、

          鳥居景近の辞世 戦国百人一首99

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第37話:波紋》

          ■はじめに37話のストーリーでは、登場人物のキャラやクセがしっかり出ている気がした。そこで、今回はドラマに登場するキャラクターをグループに分けて書いてみた。勝手なことを書いているが、ベースは「光る君へが好き」から始まっていることはご理解いただきたい。 ■最近好きになってきたキャラクターエモンこと赤染衛門 エモン先生は素敵だ。かなり前から登場していたのだが、思慮深いし、文学の知識も広く深い。宮仕えするに至る家の事情もあったようだが、彼女はひたすら誠実に土御門家の倫子、そして今

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第37話:波紋》

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第36話:待ち望まれた日》

          ■中宮の懐妊ようやく中宮彰子が懐妊した。 藤原道長も御嶽詣を敢行した甲斐があったというものだ。 しかし、中宮の周囲の人の多くは、「中宮が一条天皇の子を身ごもったこと」を喜ぶばかりで、「家族が増える」とか「夫婦の子が生まれる」とか、現代のカップルが普通に喜ぶポイントとは少しズレている。 皇后や天皇という立場の悲しさみたいなものを感じるのだ。 「仕事」みたいだ。 実際に、跡継ぎを作ることこそが天皇と皇后の「仕事」なんだが。 ■中宮の出産出産があんなに大変なものだとは知らなかった

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第36話:待ち望まれた日》

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第34話+35話:目覚め+中宮の涙》

          ■ストーリ中に起きたエピソードは実話か?今回も2話をくっつけてのレビューとなってしまった。 どうまとめようかと考えたが、出てきたエピソードについてそれが実話かどうかを中心に考えてみようと思う。 ■興福寺との争い興福寺別当の定澄が3000人の僧を引き連れて藤原道長が代表する朝廷を脅した。道長の武人源頼親とその配下当麻為頼による所領の争いが原因だ。興福寺は藤原氏の氏寺だというのに藤原氏のトップである道長を脅すことになったが、道長は脅しに屈することはなかった。屈していたらそんな場

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第34話+35話:目覚め+中宮の涙》

          『みんなが知りたい! 日本刀のすべて』重版出来!!

          ちょっと前に書かせていただいた日本刀の本なんですけど、重版かかりました! いや、ホントに。 実は、日本史専門ライターとなってたぶん5年ほど(いい加減)なのですが、未熟なあたしはこれまで「重版」とは縁がなくて。 こんなこともあるのですね。 編集者さんからご連絡をいただいたときには、「へ?」となりました。 まだ7月後半に出たばかりの本で重版かかるのは、ちょっと驚きです。 あまりに嬉しくて今日はnoteに自慢しに来たんですよ。 この本は、カラーだし、いちいちふりがな振ってるし、

          『みんなが知りたい! 日本刀のすべて』重版出来!!

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第33話:式部誕生》

          ■女子寮のような内裏での共同生活前回、まひろが内裏にやってきたとき、ボーリングのピンのトップのボジションで待ち受けていた女。女官のリーダーっぽい彼女は、宮の宣旨だと自分で名乗った。実在の人物である。 中宮彰子に仕えるにふさわしい教養に溢れた美女だったらしい。 ドラマではなかなかの貫禄で、まひろを「藤式部」と呼ぶことにしたと宣言した。 前回のドラマにおけるカメラワークでは、宮の宣旨が女番長みたいな存在感を醸し出していたが、実際はそこまで露骨な意地悪さは見られなかった。 まひろが

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第33話:式部誕生》

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第32話:誰がために書く》

          ■不快なり。藤原伊周&隆家Bro.一体どうしたことでしょう。 藤原定子はかわいそうな后であった。あたしがイメージしていた女性とは描かれ方が少し違っていたが、「一条天皇をたぶらかした女」のように扱われる今回の大河ドラマのストーリーは、ちょっとお気の毒な気がしている。 そして、定子亡き後の藤原伊周&隆家兄弟が最近大きな顔で内裏をウロウロしている。 まず、伊周は一条天皇のちからを借りて脩子内親王の裳着の儀式、そして公卿たちによる合同会議である陣定にも参加。もうちょっと素直にとい

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第32話:誰がために書く》

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第30話+31話:つながる言の葉+月の下で》

          やはり、登場人物のセリフ(関西風変換つき)を追いながらレビューしてみる。 ■「10年の寿命と引き換えにしてええで」by 道長1004年(寛弘元年)の干ばつとはそれほどひどいものだったのか。 実際に道長が書いた『御堂関白記』には、安倍晴明が雨乞いをして実際に雨が降ったと記録に残っている。そういうところ、晴明はうまい陰陽師だ。 もちろん、道長は実際には 「自分の10年の寿命と引き換えにしてええで」 などとは言ってない。 こういうセリフが、今回のドラマにおける道長のいい人ぶりを

          「光る君へ」うろ覚えレビュー《第30話+31話:つながる言の葉+月の下で》