奇跡の油
ワインは葡萄ではない。
そしてギーもミルクではない。
結婚式や様々な儀式で焚いてある火にギーを少したらす。繁栄や潤い、幸福を祈ってすることらしい。ワインも様々な儀式などで使われていることを思えばギーとワインは似ているのではないだろうか。
ギー(Ghee)とはインドを中心にアフリカや南アジア、中東などで広く使われている油の一種で原料は牛や水牛のミルクである。バターともよく似ているがバターと違うところは含まれている水分をより無くしていることで上質な脂質とタンパク質が残り、体や健康に良いといわれている。
ギーの歴史は古く、何千年も前から歌い継がれている話にギーも登場する。創造神であるブラフマーが手をすり合わせてこの世で初めてのギーを作った。そしてそのギーを炎の中に注ぎ込み自分の子どもたちを作った。故にヒンズー教では神の食べ物とも言われ、儀式などで神聖な火にギーをたらすのであろう。
消化を助けたり、腸内環境を良くしたり、免疫力を上げたり、体力を上げたりと調べるとギーの効能はたくさん出てくる。とにかくか体には良いのであろう。そして黄金の秘薬、万能薬としてアーユルヴェーダでは重宝されている。食べる以外にも、体に塗ったり、髪に塗ったりとその効果、効能を様々な形で取り入れているようだ。
なんとなく、小さい頃から身近にあったギーだが、どことなく大切にしまってありほんの少し焼きたてのチャパティに塗ったりと、出来上がったダールやカレーに少しかけたりしていたような気がする。しまってあるところからは自分でだしてきてはいけないような気がしたのは、どこでみたか忘れてしまったが幼い頃に見たクリシュナ神の絵の影響であろう。幼いクリシュナ神はギーが大好きで母の目を盗んではギーをくすねていたそうである。それを見つかり、木に縄で縛られてしまうが、逃げ出そうとして木を折ってしまう。折った木から登場したのが長いあいだ何かの呪縛で木にされていた美しい神であった。
何をしても人々のためになるから神なのか、神だからそうなのかはわからないが、私の頭の中でギーを思い浮かべると必ずセットで登場するのがクリシュナ神である。
神をも虜にする奇跡の油「ギー」。スパイスや塩では出せない旨味を料理に足してくれる魔法の一滴。
紀元前1500年にはサンスクリットの文献にギーは登場するらしいが、もしかしたら本当に神様が作ったのかもしれない。