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この一枚 #26 『★(Blackstar)』 デヴィッド・ボウイ(2016)

この1月でデヴィッド・ボウイの死から9年が経過。その死の2日前、2016年1月8日にリリースされた『★(Blackstar)』は彼の遺作となります。
『★』にはダニー・マッキャスリンやマーク・ジュリアナらのジャズ・ミュージシャンが起用されており、それも驚きでした。彼らはどんな経緯で起用されたのか?
彼らを推挙したジャズ作曲家、マリア・シュナイダーやトニー・ヴィスコンティなども含む人間模様を辿りつつ探りました。


デヴィッド・ボウイの死

リリースの2日後に死す

2016年1月8日にリリースされた『★ (Blackstar)』は、 デヴィッド・ボウイの遺作として世に知られています。
リリースは彼の誕生日1月8日ですが、69歳になったその2日後に彼が亡くなったと言う衝撃的な知らせが世界を駆け巡ったのです。

『★ (Black Star)』

あれから9年、今年も1月10日になるとデヴィッド・ボウイの命日として、彼の追悼がX上に溢れます。

Blackstarという不吉なタイトルと重苦しいサウンド。
「死」のイメージが強過ぎて、暫くは本作と向き合うことは不可能でした。
2015年11月に先行配信されたタイトル曲の★ (Blackstar)のビデオの不気味さがそれに拍車をかけました。
Something happened on the day he died(それは彼が死んだ日に起こった)と難解で死の暗喩に包まれた歌詞。

『★ (Blackstar)』への軌跡

この『★(Blackstar)』の3年前の2013年3月、「ボウイは事実上引退した」と言う言説が流れる中、10年間の沈黙を破り「The Next Day」がリリースされました。イギリスにおいては、アルバム・チャートで20年ぶりに1位を獲得、アメリカのアルバム・チャートでも、『Let's Dance』の最高位4位を上回る2位と言う成功を収めたのです。

しかし、翌年2014年半ば、ボウイは肝臓癌と診断されます。これは彼の死まで公表はされていません。
11月には新しいコンピレーションアルバム「Nothing Has Changed」がリリースされました。
ここには新曲一曲が含まれ、それは癌診断の直後2014年7月24日に録音されたボウイとジャズ作曲家マリア・シュナイダーとの共作Sue (Or in a Season of Crime)です。シュナイダーのオーケストラと共に録音されたこの曲は『★ (Blackstar)』にも再録されますが、『★(Blackstar)』へのプロローグとなるのです。

そして半年後2015年に入り1月から秘密裡に『★(Blackstar)』が録音されたのです。
プロデュースはボウイの長年の盟友トニー・ヴィスコンティが務めました。

トニー・ヴィスコンティ

翌年『★ (Blackstar)』は発売されるとアメリカで初登場1位となりますが、ボウイにとっては初の全米1位の快挙となります。
そして我々はほぼ同時に彼の訃報を聞くのでした。

『★ (Blackstar)』アナログ盤

癌闘病とジャズ・ミュージシャンの起用

本作の特徴。それはボウイの癌闘病中に録音されたことです。
ヴィスコンティによると、癌については1年前の『★』のレコーディングをする時に知ったそうです。
「彼は化学療法を終えたばかりで、眉毛も髪の毛もまったくなかった」
録音が終わる2015年の中頃には容態は良くなったらしいが、11月に再発。
体全体に癌が転移しており、翌々月には悲劇的な最後を迎えます。

それ以前にヴィスコンティは歌詞のトーンに気付き「これをお別れのアルバムとして作ったんだね」とボウイに言ったそうですが、ボウイは、ただ笑っただけでした。
Look up, I’m in heaven”(私は天国にいる)等々、本作には「死を予感」させる歌詞が散りばめられたのです。
本作のADジョナサン・バーンブルックは『★』は、闘病中だったボウイからの「別れの贈り物」であり、誰もが迎える死という概念がこのアルバムのアートワークには表れているとも語ります。

そして次の特徴。
『★』には新世代ジャズの精鋭がバンド丸ごと起用されました。
サックスプレーヤーのダニー・マッキャスリンが率いるカルテットをそのまま起用。 ドラムにマーク・ジュリアナ、ベースにティム・ルフェーヴル、キーボードにジェイソン・リンドナーと言う不動のメンバーでアルバムを通し録音されたのです。
ボウイがジャズミュージシャンを本格的に起用するのも初ですが、バンド(グループ)をそのまま起用するのも初めてかと思います。
またロック歌手がジャズグループを丸ごと起用するのも異例のことでした。

ダニー・マッキャスリン・カルテット:ジェイソン・リンドナー、ティム・ルフェーブル、ダニー・マッキャスリン、マーク・ジュリアナ

参加した精鋭達

参加したのはスタンダードなジャズを演奏する伝統的なジャズミュージシャンでもなく、Steely Danの作品に参加するようなスタジオ・ミュージシャンでもありません。
起用したのは当時新世代ジャズと呼ばれたミュージシャン達で、ジャズにこだわらず他ジャンルも取り入れた先鋭的なサウンドで、ジャズ界では知られた存在でも世間的には無名でした。
この新世代ジャズ・ムーブメントは、2012年にロバート・グラスパーがリリースした「Black Radio」が起源とも言われます。

ロバート・グラスパーカマシ・ワシントンサンダーキャットら黒人ミュージシャンが切り開いたジャンルとも言えます。
2015年の3月にリリースされた、ラッパーのケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』には、この3人が参加したことでも話題となります。
今作『★』のプロデューサーであるトニー・ヴィスコンティによれば、『★』の録音期間この『To Pimp a Butterfly』を皆でよく聴いていたそうです。

To Pimp a Butterfly

一方白人側の代表格が今やグラミーの常連となったSnarky Puppyや『★』に参加したダニー・マッキャスリンマークジュリアナらとなります。
黒人側がヒップホップやR&Bの要素をジャズと融合させ、白人側はテクノ、エレクトロ、フォーク等の要素との融合を図ります。

では、『★』に参加した精鋭たちを紹介します。
リーダー格のサックスのダニー・マッキャスリンは、1966年生まれ。
マイケル・ブレッカーの後継としてステップス・アヘッドに加入。その後は多くのリーダー作をリリースしており過去3回グラミー賞ノミネート。
『★』には当時の彼のクインテットがそのまま参加しています。

Donny McCaslin

ドラムスのマークジュリアナは今年のグラミーにもノミネートされている、今世界で最も注目を集めているドラマーです。
正統的なジャズクインテットと並行して、BEAT MUSICというエレクトロニクスのプロジェクトも展開しており、ドラマーの枠を超えて作曲家としての力量も備えています。

Mark Guiliana

マーク・ジュリアナについては以下の記事が詳しいです。

唯一ロックの心得のあるベースのティム・ルフェーブルは、バンドの演奏をリードする存在。
彼は2013年よりテデスキ・トラックス・バンドのベーシストでもあり、最近のスティーリー・ダンのドラマー、キース・カーロックとのトリオでも知られています。
本作と並行してテデスキ・トラックス・バンドの新作(Let Me Get By)も録音しており、NYとフロリダを行き来していました。

Tim Lefebvre

トニー・ヴィスコンティに「ジェイソン(リンドナー)はまさに天の恵みだったよ。彼に斬新なコードを与えても、ジャズの感性をもってそれを音にするんだ」と言わしめたのは、鍵盤のジェイソン・リンドナーNow Vs. Nowというエレクトロニカ系のバンドでも活動。

Jason Lindner

Side1

『★』の録音

そして『★』は2015年1月、2月、3月に各月1週間づつレコーディングセッションが行われました。
参加したのはダニー・マッキャスリンとそのカルテットの4人。
ボウイの作成したデモに合わせて4人はリハーサルをして当日を迎えます。
4人の演奏に合わせてボウイは歌い、ライブ形式で録音されたため、臨調感と緊張感が持ち味となります。
(周囲の音を拾ったためボーカルは後日再録)

★ (Blackstar)

タイトル曲のBlackstar(1-1)はグレゴリア聖歌をイメージし、ボウイのボーカルを五層に重ねており、人の声ではなく宇宙からの声のように響きます。そしてボウイが打ち込んだブレイクビーツを、ジュリアナが人力で再現。
唯一ヴィスコンティのスコアによるストリングスも含まれます。
本曲は2つの曲を合体させていて、不気味な前半から後半は希望の未来を感じるような開放感のあるメロディとなる展開が流石。

'Tis a Pity She Was a Whore

'Tis a Pity She Was a Whore(1-2)は2024年にシングルSue (Or in a Season of Crime)のB面としてリリースされました。全ての楽器をボウイが演奏した数少ない曲の一つです。

これをリメイクして改めてバンドで録音し直して、『★』に収録。
最初に録音されたトラックの1つで、バックトラックは、2015年1月5日にニューヨークのマジックショップで録音されました。ボウイを含め、全員が同じ部屋にいて一緒に演奏したライブ感が伝わります。
ボウイはマッキャスリンの2012年作『Casting for Gravity』から本曲のインスピレーションを得ています。同作は『★』と同メンバーで録音されており、ボウイにはAlpha and Omegaが念頭にあったようです。

Lazarus

Lazarus(A-3)ではデモになかったベースのイントロをルフェーブルが提案し、ボウイは受け入れます。
俺は天国にいる」という歌詞から始まるこの曲、ビデオで眼帯をしたボウイも衝撃的でした。

またボウイの死後、ダニー・マッキャスリン・カルテットは『★ 』録音と同一メンバーでTiny Desk Concertに出演しLazarusを演奏します。
8:00ら辺でLazarusは演奏されますが、ボウイがそこにいるかのような熱演に身震いがします。

マリア・シュナイダー

ボウイからの電話

一旦時は話は2014年に遡ります。
実はダニー・マッキャスリンマーク・ジュリアナらとボウイとの邂逅に、大きな役割を果たしたキーパーソンがいます。
それがジャズ作編曲家でありMaria Schneider Orchestraの主宰であるマリア・シュナイダーです。
現在、64歳の彼女はジャズオーケストラの第一人者でグラミー賞を10回受賞しています。

Maria Schneider

2006年以降のマリア・シュナイダーのコンサートの客席に、ボウイの姿を見かけたそうですが、その辺りから目を付けていたのでしょう。
2014年頃シュナイダーに、突然ボウイ本人から電話で共演のオファーが来たと言います。
「地下鉄に乗っていたら、デヴィッドからの電話。思わず隣の人に、デヴィッド・ボウイが私に電話してきた!と話しちゃうぐらい驚いた」

2014年5月にはボウイとトニー・ヴィスコンティがマンハッタンのBirdlandを訪れ、マリア・シュナイダー・オーケストラの演奏を見学します。

マリア・シュナイダーとのコラボ

その後ボウイは作りかけていたSue (Or in a Season of Crime)の原曲をシュナイダーに聴かせて「明るいので、もっと曲を暗くしてくれ」と依頼し、2人の共作として曲は完成します。
この頃に彼は肝臓癌を告知されますが、「暗くしてくれ」という依頼は暗示的でもあります。

そしてSue (Or in a Season of Crime)は2014年11月にボウイのコンピアルバム「Nothing Has Changed」に収録され、シングルとしてリリースされます。シュナイダーとの共作による新しい音の創造が公開されたのです。
翌年シュナイダーは本曲でグラミー賞 最優秀編曲賞、インストゥルメンタル&ボーカル賞を受賞します。

シュナイダーとボウイ

Sue (Or in a Season of Crime)/David Bowie&Maria Schneider Orchestra
ボウイがオーケストラと一緒にスタジオで演奏するシーンも含む映像

ボウイから届いたメール

Sue (Or in a Season of Crime)の録音はマリア・シュナイダー・オーケストラと共に2014年7月24日に実行されました。
ここにはオーケストラと共に翌年の『★ 』の録音に参加する3人のミュージシャンが参加します。
サックスのダニー・マッキャスリンとギタリストのベン・モンダー
そしてオーケストラのメンバーではないものの参加したのが、マッキャスリンのグループのドラマーのマーク・ジュリアナでした。

それに先立つ5月、NYのBar 55ダニー・マッキャスリン・クインテットの演奏を観に、ボウイ自身がシュナイダーと共に訪れます。
次作の共演者としてシュナイダーがマッキャスリンを推薦し、ライブを観るために訪れたのです。
ダニー・マッキャスリン・クインテットのメンバーはマッキャスリンに、『★ 』の録音に参加したマーク・ジュリアナ、ベースにティム・ルフェーヴル、キーボードにジェイソン・リンドナーです。

ダニー・マッキャスリン・クインテット(Bar 55)

「デヴィッドはもっとマリア(シュナイダー)とやりたかったみたいだけど、マリアは自身のアルバムのレコーディングがあったので、僕らを推薦してくれて、そうしたらデヴィッドが僕らがいつもやってるライヴハウスに見に来てくれたんだ」(ダニー・マッキャスリン)

そして後日「一緒に録音できたら夢のようだ」と言うメールが、ボウイ本人からダニー・マッキャスリンに届いたのです。

ダニー・マッキャスリンとボウイ

マッキャスリンはボウイについて、
「デヴィッドはとにかく温かく、フレンドリーで寛容、それにすごく感じが良くて、とにかく素晴らしい人なんだ。大スターなのにまったく偉ぶることもなく、そしてスターだからこそそういった温かくて寛容な部分が顕著で、とにかくワンダフルな人だったよ」
と語ります。

またヴィスコンティは「ミュージシャンを選ぶのはほとんどの場合デヴィッドでした」と語るように、「Young Americans」の時も「Let's Dance」ナイル・ロジャースを起用したのも全てボウイ本人で、今回も自分の嗅覚で彼らを発掘したのです。

ボウイとジャズ

『★ 』でジャズミュージシャンを起用したと言う事実に、当初はボウイとジャズが結び付かず違和感を感じました。

だが意外にもボウイが最初に手にした楽器はサックスで、8歳から演奏し始めています。そして最初に加入したバンドではサックス担当でした。
そしてジョン・コルトレーンエリック・ドルフィーを愛聴しており、特にバリトン・サックスのジェリー・マリガンに憧れていました。

それ故か彼のレコードではサックスは欠かせない存在で魅力的なソロはサックスが多かった様に感じます。セッションミュージシャンを使うだけでなく、自らレコーディングで吹くこともありました。
Young Americans」のタイトル曲がデヴィッド・サンボーンの見事なサックスソロから始まるなど、サックスの魅力を熟知していた様です。

そして1985年には「Falcon and the Snowman(コードネームはファルコン)」のサウンドトラックでパット・メセニーと共演しており、名の知れたジャズミュージシャンとの共演はこれが初となります。

10代の多感な時期にジャズのサックスプレーヤーに憧れ、バンド活動の始まりがサックス・プレーヤーであったことを考えれば、サックスプレーヤーのダニー・マッキャスリンのグループとの共演に「夢のようだ」と言ってしまうのも納得ができるのです。

彼は最後の作品で若き日のルーツに返ったとみることもできます。

ダニー・マッキャスリンはボウイのジャズ好きについて語ります。
「ジャズ・ミュージシャンをよく知っていると感じた。チャーリー・パーカーやチャールズ・ミンガス、ジョン・コルトレーンなど、数多くの偉大なミュージシャンについても話したね。とにかく根っからのジャズ好きだった」

Side2

ボウイによるデモ

マーク・ジュリアナによると全ての曲にはボウイによるデモがあったそうで、彼らと出会ってから録音までの半年間に作成されたのでしょう。
デヴィッドは全部の曲のデモを制作してきて、そこにはドラム・パートも含まれていたので、なるべくそれと同じ演奏になるように努力したし、もし彼が僕なりのドラム・パートを求めたらできるだけクリエイティヴな演奏になるようにベストを尽くしたよ」(マーク・ジュリアナ)

そして後にマリア・シュナイダー・オーケストラのメンバーであった、ギタリストのベン・モンダーも加わり追加録音を施します。

ベン・モンダー

Sue(Or in a Season of Crime)

2014年にシュナイダーと録音したSue(Or in a Season of Crime)(2-1)をバンドスタイルで再録します。
ボウイはもう少しエッジと緊迫感が欲しいと考え、ドラムのジュリアナはシンプルに、速く演奏しました。
ジュリアナは「このトラックのエネルギーは本当に特別です。」と語るように数あるボウイの曲の中でも最高に緊迫感漂う演奏となります。

Dollar Days

Dollar Days(2-3)はデモがない唯一の曲で、ボウイがスタジオでギターを弾き歌いながら教えてくれたそうです。
彼が初期のフォークシンガー時代に戻ったようでニック・ドレイクのようでもあります。演奏もスローなフォークロック調で控え目ですが、マッキャスリンのサックスソロとベン・モンダーのギターソロは聴きものです。
そして継ぎ目なくメドレーのようにラストの次曲へと続きます。

I Can't Give Everything Away

意図的にもダークに染められた本作のクロージングトラックI Can't Give Everything Away(2-4)は、それらを払拭するように軽快で未来感の溢れる名曲。Pet Shop Boysのようなシンセポップにも感じる爽やかなオープニング。ボウイは「LOW」のA New Career in a New Townみたいなハーモニカソロを披露します。
「私はすべてを与え切ることはできない」と言う彼の最期のメッセージが込められています。
本曲のバッキングトラックは、後半の2015年3月21日にMagic Shopスタジオで録音されました。
鍵盤のジェイソン・リンドナーは「とにかく壮大な曲。壮大な感覚。トランス状態のような感じです。」と褒めちぎります。遅れて参加したギターのベン・モンダーも当日の録音に参加しました。
ボウイはバックトラックの録音中に共に歌い、唯一ボーカルの一部は最終バージョンでもそのまま残されました。

このビデオ監督ジョナサン・バーンブルックの「私たちは生まれつき楽観的な種族であり、享受した素晴らしいものを祝福するんだ。」と言う言葉を最後に引用します。

『★』、その余波

ジャズらしさのないサウンド

本作のプロデュースのトニー・ヴィスコンティによると本作は「ロックンロールを避けることが目標だったんだ」と語ります。
また、ジャズミュージシャンを起用しながら、サウンドにはジャズの要素は微塵もありません。
ヴィスコンティとボウイの意図は「ジャズミュージシャンにロックを演奏させる」ことだったと思われますが、ありがちなフュージョンや黒人的なノリを感じさせない所がボウイの真骨頂です。
富田ラボ氏も「ジャズっぽいハーモニーとか、ほぼゼロじゃないかな。普通の人が前情報なしで聴いたら、ジャズに関係があるとは思わないよね」と評しています。

「亡くなる1週間前に『★』の続きを作ろうと話していた。もちろん楽しみだったし、その段階では、僕も、そして恐らく彼も、あと数ヶ月は生きると思っていた。」ともヴィスコンティは語ります。

マリア・シュナイダーはボウイとの仕事の後、「またコラボレーションできたら、間違いなく楽しいわ」「彼がまたやりたいと言うなら、私も喜んでそうするわ。…どうなるかはわからないわ。」と述べ、次作は彼女とのコラボも予想されましたが、叶わぬ希望となりました。

LOWとの相関関係

その後に放送された「デヴィッド・ボウイ~最後の5年間」には、マリア・シュナイダーダニーマッキャスリンマークジュリアナトニーヴィスコンティなど本作に関わる重要人物が総出です。
『★』の背景を知るには最適な必見映像です。

この作品では本作と「Low」との相関関係が語られますが、特にB面のインストナンバーとは水面下でリンクしているようです。
2016年10月にリリースされたダニーマッキャスリンの『Beyond Now』は『★』と同じメンバーで録音されます。そこでは「Low」の中からWarszawaをカバーしていますが、ボウイとの共演による影響を感じます。

「★」は、2017年2月に発表されたグラミー賞で5部門を受賞。
ベスト・ロック・パフォーマンスを受賞したときにはダニーマッキャスリンマーク・ジュリアナ、ジェイソン・リンドナー、ティム・ルフェーブルが亡きデヴィッド・ボウイの代わりに受賞スピーチを行なったのです。
彼らが単なるセッションミュージシャンではなく、本作のコラボレーターだった証だと思います。
そして何よりもボウイの遺作にして最高傑作に最大限貢献したミュージシャンとして、彼らも語り継がれるでしょう。

『★』を深く知るための音源リスト

Donny McCaslin
Casting for Gravity(2012)
『★』以前の作品だが、『★』と同じメンバーで録音された。マリア・シュナイダーはボウイに本作を手渡し、マッキャスリンと共演するよう提案。これを下地にしてボウイは『★』を制作します。

Beyond Now(2016)
『★』後に『★』と同じメンバーで録音され、2曲のボウイのカバーを含む。『★』の続編と言うべき作品。

Mark Guiliana
Beat Music
(2014)
録音前にボウイはジュリアナについて知るためにこれを聴いていて、録音の際にそれをジュリアナに伝えると、彼は深く感動した。

Jersey(2017)
ジュリアナのジャズプロジェクトMark Guiliana Jazz Quartet。ボウイのカバーWhere Are We Now?収録。

Tedeschi Trucks Band(Tim Lefebvre)
Let Me Get By(2016)
Tim Lefebvre
在籍時の『Let Me Get By』。ボウイの「Hunky Dory」収録のOh! You Pretty Thingsをカバー。

Maria Schneider
彼女は配信を否定しているため、Spotifyのベストを。

David Bowie
No Plan
(2017)
『★』のアウトテイク3曲収録。2のNo Planは必聴。



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