映画ラストマイル-海外という怪異-ネタバレ
それニューヨークだよね?
映画「ラストマイル」にはちょいちょい引っかかるシーンがあった。意図的なものもあるだろうし、そうでないものもあるだろうし…
その中でも海外、海外企業の描写については甘いところが多く、特に舟渡と筧が出会うシーンでワシントンと言いながらニューヨークが出てきたときはびっくりした。(一回しか見てないのだけどそう言ったと記憶してる)
このシーンは予告映像にもあるので、確認することができる。
1:04のところで出てくる映像は明らかにマンハッタン。ワシントンスクエアから凱旋門を望みつつ、5th aveを北に見たところだ。
以下の写真からも映像が一致することがわかる。
予告編にもある空撮のショットでは、ニューヨークで特徴的なブラウンストーンスタイル(かそれを模したもの)が、遠景には高層ビル群が立ち並んでいた。これはニューヨークの特徴的な町並みで、ワシントンではない。そんなこと言わずとも5th aveの西側にあるエンパイアステートビルが映っているので明白な話。なお、あまり知られてないが、ワシントンDCには建物の高さ規制があり、高いビルは建ってないのでこういう光景はない。
なぜこういうずれが生じたかを考えてみたい。Let's check various points!
可能性考察
仮説その1 真実を隠している
アメリカで舟渡と筧が出会うシーンは幻想的に描かれていたので、嘘が混じっている可能性はある。あの出会いとコミュニケーションだけで舟渡が自分の未来をかけて行動したとするにはちょっと弱すぎるからだ。とはいえ、別に嘘をつく必要もない局面なので嘘をつく意味は薄い。ここでは関係性があったことは重要ではあるが、どこで会ったかは全く重要でない。嘘をついて「ワシントン」でと言おうが、正直に「ニューヨーク」でと言おうが展開は変わらないし、何も守れない。
仮説その2 作成上の不備
別の見方として、単に映画作成上の不備の可能性もある。こちらの方が可能性が高いだろう。単純にワシントンとニューヨークなんてどっちでもいい程度の認識だった可能性もある。
さすがにそれは雑過ぎるので、もうちょっと前向きに解釈すると、台本か何かに、「(ニューヨークの)ワシントンスクエアで会った」と書いてあったのをどこかで情報が欠落して「ワシントン」だけ残ってしまったのでは…という仮説もありえる。日本人の大多数はニューヨークにワシントンスクエアがあるなんて知らないだろうから。
仮説その3 Amazon本社を参考にした
もう一つの可能性として、モデルになったAmazon本社はワシントン州シアトルにあるが、普通、シアトル周辺のことを説明するときワシントンとは言わないので、これはこれで変。
Various pointsの余談
ところで、こうやって色々可能性をつぶしていくことをvarious pointsと作中で言ってたけど、これも英語的にはちょっと違和感あって、この言葉は立場や視点の変更を検討するときの意味合いが強いので、可能性の追求の場合は、possibilityとかそういう言葉を使うんじゃないかな…
海外という怪異
この映画は描写が非常に細かく、繊細さをもって描かれているが、事の元凶たる海外企業の描写はお粗末ではある。日本国内の現場の配達員が荷物を雨に濡らさないようにビニールをかける描写があって、これは現場がプライドと気配りをもって仕事をしていることを示す良いシーンだと思うが、Daily fast社でそんなに雄弁なシーンはついぞ描かれなかった。Daily Fast社の経営層は現状の推移を全く無視して、責任者に「言い訳を聞きましょう」と問い詰めるだけでおよそリアリティがない。リスクマネジメント全然できてませんですよねこれは。
ここはもうリアリティとか全然気にしてなくて、外国企業幹部が荒ぶる神や怪異ぐらいの位置付けて、五十嵐や舟渡は怪異と渡りをつける神官と巫女のような有様になっている。Daily fast社自体が、利便性を求めたが故に生まれた妖怪のように書かれているあたり、新世代に見せかけて存外、その骨子は純粋な日本の伝統的なドラマ作りから抜け出せていないようにも見える。
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