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映画ラストマイル-2.7m/sに関する超どうでもいい考察-ネタバレ
MIU404とアンナチュラルを少ししか見てないのでラストマイル見る資格無いかなーと思ってたんですが、面白そうだったので思い切って観てきました!
めっちゃ面白かったです!
DAILY FAST社がAmazonを指しているのは明らかなのでアマプラに来るかは甚だ怪しいですね…逆にネトフリには来るかも?!
主人公の舟渡エレナ(満島ひかり)がスーパービジネスパーソンと見せかけて、情理の両面を持ったキャラクターとして描かれていて斬新でした。合理に徹しきれないし、情にも振り切れないなんとも複雑なキャラクターでした。
最初に梨本孔(岡田将生)と握手するとき左手だったので、最初、相手が左利きなのを見て、左手を出す観察眼良いキャラアピールかと思ったんですが、単に人づきあいが不器用な人表現だったんですかね?
あ!MIU404とアンナチュラル見てなくても十分面白かったです
(以下ネタバレ)
DAILY FAST社は超合理主義守銭奴企業として描かれているわけですが、結局はここまで非人道的に厳しくやらないと金は稼げないという話でもありました。いかにカスタマーセントリックがマジックワードであっても、ブルーパスの労働者は酷使されても、配送業者は摺りつぶされても、品質にこだわった電機メーカーは潰れても、最終的には超合理主義のデリファスが少女の願いを叶えてハッピーエンドだったのは…割り切れないものがありました。
合理至上主義への反発の成果が荷物当たり20円と爆弾を防いだ洗濯機というのは良いような悪いような…日本的こだわりの良さというよりは終戦後のギブミーチョコレートみたいな敗戦属国感がないでもありません。
2.7m/s->◎ 70kg読み解き
劇中でコンベアのスピードが2.7m/sで、耐荷重が70kgと語られていたけども、これがわかったようなわからないような。輪が二重になってたので最初、ターゲットとして、丸を二重にしたのかと思ってた。でもどうもゼロらしい。
2.7m/sが早めに歩くスピードとも語られてたので、そこからひも解くと、以下のように符合する。
2.7m/s…ベルトコンベアの速度…自分が投身自殺した時のスピード
70kg…ベルトコンベア耐荷重…自分の体重
0…物流を止める…自分の命を止める
このようなダブルミーニングがあったとすると、最後の0が二重になっていたことにも意味が出てくるわけです。すごい!なんというメッセージ!
2.7m/s->◎ 70kg気になったところ
山崎は計算したのか
しかし、落ち着いて考えてみるとこれは色々おかしい。これは鍵を差し込めないほどに憔悴してる人間が考えることじゃない!これはいわゆる「死ぬ間際にそんな複雑なダイイングメッセージ残さないよ問題」である。
例えば、仮に小走りで投身自殺してベルトコンベアに激突するためには、高さを計算しておく必要がある。物理でおなじみの水平投射問題である。ターゲットのベルトコンベアまで、目測で5メートルというところだろうか。8メートルくらいあったようにも見えるが、仮に計算が楽な5.4メートルと仮定しよう。
問題 初速2.7m/sで水平に物体Yが投射されたとき、5.4メートル先のベルトコンベアに落ちるにはどれくらいの高さから落ちれば良いか?
y=1/2gt^2
x=vt
g=9.8,v=2.7, x=5.4としてt=2, y=18.6m
山崎の狙いを成功させるためには、18.6m=約6階建てのビルの高さが必要である。劇中ではもうちょっと低いような気がしたが、とにかくある程度の高さが必要で、ちゃんと計算しないとこの数字が出てこない。
テーブルを使った踏切初速は?
上記の計算では、初速2.7m/sで計算したが、そもそもテーブルの上で2.7m/sを狙って出すことは極めて難しい。人間が自身の体を狙った数字で動かすというのはスポーツマンでも難しいだろう。まして自分の命を懸けた局面ならなおさらだ。実際にはあるモーションを仮定して、そのルーティーンでどれだけスピードが出るかを計測して実行したほうがよほど楽だ。
劇中で山崎が敢行したテーブルを使った踏切でどれくらいのスピードが出るのか想定してみよう。実際にやってみないとわからないし、命がかかった局面なので思惑通りうまくできるとも思えないが、立ち幅跳びのデータをもとにして考えてみる。
小学六年生男子の立ち幅跳び水平初速度(Vx)=2.68(±0.31)
https://yamanashi.repo.nii.ac.jp/record/1550/files/KJ00004947011.pdf
これが2.7m/secに近い。成人男性の山崎が、立ち幅跳びではなく、ステップを踏んだとすると2.7m/s以上は出ている可能性が高い。
山崎の狙いを実現するためには、事前にテーブル上で練習をし、初速を計算したうえで、高さを設定する必要があることになる。
コンベアのスピードが2.7m/sっておかしくない?
劇中でベルトコンベアと言われてたような気がするのだが、あれは物流でよく使われるローラーコンベアである。ローラーコンベアは荷物の加重で動くので、速度が一定ではない。なので2.7m/sを象徴的に使うのは無理がある。物流としての目標スループットが2.7m/sというなら、わからないでもないのだが…稼働率が変動している以上、そのスループットも2.7m/sで安定はしないはずなので、これも結構微妙な話ではある。
耐荷重が70kgだったらなんだというのか
耐荷重とはいうものの、その質量が静止した状態で乗っかていることを指すので、高さから速度をもって激突したら耐荷重は関係ない。
踏切2.7m/s、コンベアまでの距離5.4mを仮定すると、落下時の速度は68.7km/hであり、なかなかのものだ。こうなると70kgと一緒に70km/hも書いておくとよりわかりやすいかもしれない。
体重が70kgというのは良いが、コンベアの耐荷重が70kgという情報は蛇足か偶然の符号だ。そんなに耐荷重に意味を持たせたいなら、山崎は飛び降りるのではなく、コンベアの上に静々と載って抗議すべきだったのだ。
山崎がやったであろうこと
具体的に順を追ってまとめてみよう。山崎のやったことを実現するには、以下のステップが必要になる
ブラックフライデーの前に物流を止めようと考える
(何故か)コンベアのスピード・あるいは目標スループットが一定であり、それを知る(事前に知ってても良い)
1つのテーブルで加速するスピードを練習し、初速を知る
コンベアまでの距離を計測する
必要な高さを計算する
ダブルミーニングめいたメッセージを残す
飛び降り決行
自分の死に向けてこれだけのステップを憔悴しきった状態でこなせるとは山崎は相当に優秀な人間だったに違いない。後で「バカなことをした」と後悔するのもまたわかろうというものではないか。