トラペジウム-ネタバレ感想-サイコパス成長譚1
普通なら絶対見ないアイドルアニメ映画なのですが、トレーラーの不穏な空気にひかれて観ました。
刺さった。サイコパス要素ある自分には幼きサイコパスクソ野郎東ゆうの物語がどうしょうもなく刺さってしまった。
この物語が万人に受け入れられるとは到底思えない。不器用さが売りの青春小説でもここまで明確なサイコパス野郎が主人公なことは少ないと思う。だって感情移入できないもの。
東西南北のキャッチーさを出すためだけに、人を集めて、個人の感情ガン無視で突き進む前半は、作戦ガバガバに見えるわりにはうまくいきすぎていたりするのだが、サイコパスな人は確率を上げる種まきをして、人を誘導したりすることをやるので、これはこれでリアリティあると思う。
そもそも東ゆうはハイスペックな人間で、美人で、スタイルもよく、高校生時点で大人と普通に社会人的に会話ができるほどに頭が良く、英語も堪能、意欲も野望もある。そもそもこれだけのことをやらかして西南北が許してしまうあたり、尋常でないカリスマ性がある。
ただし、人の感情理解や共感性だけは無い。こういう資質は生来的で、なかなか変わらないものではあるが、行動は別だ。現実のサイコパス風味な人は、常に破滅的な行動を繰り返す人と、持ち前の頭の良さで、ある程度人間の反応や共感性を学習して、やたら外面のいい人に分かれる。前者は社会から疎外されていくが、後者は社会の中心や頂点に向かう。
東ゆうは後者だ。最後の諦めが悪いんだと宣言するシーンは、ハッピーエンド風味で良いような感じにしているが、私には怪物誕生のシーンに見えてしまった。様々な才能を持った怪物が、人の心まで理解してしまったのだ。あぁ恐ろしい。古今どの映画でも、怪物誕生のシーンは常に美しい。
謝罪と和解の後、東は思いやりある、共感性高い人間になれたろうか?私はなれたとは思わない。最後のシーンで、東西南北の各人はそれぞれの未来を叶えた。東はなりたかったアイドルになったのか?アイドルにもなれたろうが、なによりも、自分の人格と業を肯定した怪物のような人間、自分らしい自分になったのではないかと思う。インタビューシーンでも息をするように嘘をついていた。そこには何の躊躇もないだろう。
おぞましくも、美しく、エグく、儚い映画でした。
青春映画的風景に怪物が登場するサイコスリラー映画くらいのつもりで見たらいいのではないでしょうか。私にとっては良い映画でした。
(続き)
おまけ
華鳥さん実家が太いからって海外ボランティアに勤しむのもえぐい話っすね。絶対自分で稼いでないだろ…