彼女の「発狂」を退治して幸せな夫婦になれた話
すっかり忘れていた。
昔の記憶というのは美化されてしまう。
私は大学生のときに出会った彼女と結婚し、今では4人の子どもに囲まれて暮らしている。
日々、言葉にできないほどの幸せを実感している。
でも決して、最初からこんなに幸せだったわけではない。
付き合っていた頃の彼女は結婚することを強く望み、私は結婚をためらっていた。
その最大の理由は、彼女の「発狂」である。
これを思い出したのはABEMAでやっている「さよならプロポーズ」概略記事を目にしたから。
この話し合いのすれ違い感、お互いが自分の主張をして意地を張っている感、昔の私たちを見ているよう。
(私もこの男性と同じく元ラガーマンなのでそこも勝手に親近感)
私たちにもこんな風にたくさんぶつかって、悩んだときがあったなぁと。
そういえば会社の後輩女性が「女性はみんなヒステリック」と言っていた。
以前は妻だけが異常だと思っていたが、ひょっとすると発狂する女性に悩む男性は意外と多いのかもしれない。
先日の記事で「不満を言えないママ」を謎だらけと書いたが、それもそのはず。
考えるより先に怒りの感情が前面に出るタイプの人が、理解できるわけがない。
しかしながら、このような「言えないタイプの女性」も、もしかしたら根っこにあるものは同じなのかもしれないと思う。
自分の感情を爆発させるか、押し殺すか。
どちらも、感情をうまく表現できないことに変わりはない。
愛情表現やすれ違いに悩む人のヒントになることがあれば嬉しい。
私たち夫婦はどのようにして乗り越えたのか。
思い出しながら書いてみたい。
発狂する彼女
大学2年のときに「ぬるっと」付き合い始めた彼女。
大学4年になり、同棲したい気分ルンルン♪の彼女に対して、私はなかなか踏み切れずにいた。
その最大の理由は、彼女が度々「発狂」するから。
普段はとても楽しい生活なのに、気に入らないことがあると怒り狂う。
顔も怖いし、語気は強いし、大泣きするし、なにより長い時間拘束される。
きっかけは些細なことでも、それまでに溜まった不満が芋づる式に出るわ出るわ。
それらを「そんな些細な事」と口をすべらせた途端、火にガソリンを注いでしまって大爆発の大炎上。
しかもそれが発生するのはいつも旅行から帰る車の中だったり、夜寝る前だったり。
気になることがあると解決せずにはいられない性格なのはわかるけど、このタイミングだとそれまでの楽しい時間が全部台無しになってしまうのが本当に嫌だった。
その1回で終われば別にいいのだが、割と高い頻度で繰り返しそれが発生する。
私はそもそも「キレる」という感覚がよくわからないし、嫌なことはすぐ忘れ、基本的に反省するという発想がない。
彼女からするとそれがまたお怒りポイントなようで、
怒らない・忘れている・反省していない
⇒私のことを本気で考えていない
と勝手に変換される。
明らかな誤変換なのに、それが理解してもらえない。
これから結婚して子どもが生まれたらストレスも当然増えるだろうし、この「発狂タイム」がずっと続くのは気が重いなぁ・・・
私も先の例の男性と同じく、「別れれば楽になれる」と思ったことがないわけではない。
そして、「この同棲でお互い変われるか試してみよう」と大学4年のときに同棲を決断したのである。
私が結婚相手に求めた条件
同棲の前に私は考えた。
どういう人と結婚すべきなんだろう?
そして至った結論は、
「相手の幸せのために自分を変え続けられる関係性を築ける人」
人生の最期は「あなたのおかげで最高の夫婦になれた」と言って死にたい。
結婚して一緒に住み、子どもが生まれ、仕事が忙しくなり、子どもが巣立ち、仕事もいずれはリタイアする。
環境は変わっていくのに、「これが私」を貫かれたら幸せにはなれない。
少しずつでも夫婦で高めあっていけたら、きっと最高の人生になる。
「この人を幸せにするために私に何ができるか?」
これをお互いが考え続けられたら幸せだろうな。
そう思った。
結果的に、私たちはこのときの2年間の同棲で、お互いがいい方向に変わっていることを確信した。
そして、結婚を決めた。
気遣いとか思いやりとか、コミュニケーションのコツとか、大事なことは山ほどあるが、多くの人が見逃しているポイントはこれだと思う。
自分と相手の生い立ちを深掘りする
「ここが嫌だから変えてほしい」と言うのは簡単。
だが、それは相手に我慢を強いることに他ならない。
大事なのは「なぜそのような言動をとるのか」
その背景を探りたい。
親に否定されたり、干渉されたり、比較されたり、関心を持ってもらえなかったり。
人間関係の悩みや生きづらさを抱える人の背景に
「親からの愛情に対する不信感」がある場合が多い。
妻もそうだった。
兄と妹とよく比較され「あんただけ似てない」と言われた
母の命令は絶対で、ご機嫌を伺いながら生活していた
夫婦喧嘩が絶えず、母はよくヒステリックになっていた
そう、妻は愛情表現の仕方を知らなかったのだ。
「これが私」と意固地になるのは、「そのままの私」を愛してもらったことがないからだった。
私の場合、母子家庭で幸い母はまともだったが、環境は過酷だった。
祖父母の口喧嘩が絶えず、私にも罵詈雑言を浴びせた
祖父は自分の意見が絶対正しい人で、聞く耳を持たなかった
祖母は気に入らないことがあると酒を浴びるほど飲み、暴れ狂った
私が怒らないのは性格だと思っていたのだが、違った。
この家では自分の感情を殺さないと生きていけなかったのだ。
怒りの感情や嫌な記憶を消す能力は、この家で生きる術として身につけたものであったと、妻と会話するなかで気付かされた。
別に隠していたわけではないけれど、なかったことにしようとしていたのかもしれない。
たぶん、自分だけでは気付けなかったと思う。
パートナーの気に食わない言動も、背景を知ると理解できる。
自分の言動も、過去と繋がっているんだと理解できるようになる。
これまでよく生きてくれたと感謝し、
生い立ちから表出する言動を尊重し、
これからは2人で乗り越えようと寄り添う姿勢をもちたい。
親に対して、認めてもらいたい、見返したい、褒めてほしい。
こういう感情を抱くのは、親に依存しており自立できていない証拠。
これまで「絶対的な存在」だった親から脱却しないと幸せにはなれないと思う。
生い立ちは親との関係だけではない。
友人関係、先生との関係、大人との関係などすべてが現在に繋がっている。
何を得て、何を失ったのか
何を信じ、何に裏切られたのか
何を求め、何を我慢してきたのか
何を叶え、何を叶えられなかったのか
何を大切にしてきて、何を大切にしてもらえなかったのか
相手を理解するために話さないといけないことは山ほどある。
こういった話を繰り返すなかで、私たちは夫婦で敵対することなく、意地を張ることなく、不満をため込むことなく、建設的な議論ができる関係になっていった。
私たちは過去と決別し、新たに2人で生きていく決意をともにした。
ある日突然そうなったわけではない。
お互い少しずつ成長してきたのだ。
下の記事で紹介した東京の友人は、実は4人のうち2人が離婚しており、「神旦那が現れてほしい」「ベテランパパのクローンがほしい」と言っていたが、当然そんなものは現れない。
私のクローンがいたとしても、また一から関係を築き上げていくことに変わりはない。
理不尽さを再現してみる
発狂する相手に対して有効だった方法を一つ紹介したい。
ユーモアをもって自分の愚かさに気付いてもらう作戦だ。
キャラにもよるし、相手の機嫌とかタイミングが大事なので、少し難易度は高いかもしれない。
例えば、靴下の脱ぎっぱなしを発見すると発狂する彼女の場合、相手がちょっと衣類を脱ぎっぱなしにしたタイミングで、発狂する彼女のモノマネをしてみる。
「なんで脱ぎっぱなしなの!?なんですぐに洗濯機に持って行かないの!?何回言ったらわかるの!?」
と、わかりやすく変顔をしながら一気にまくしたてる。
「いや、そこまでひどくないやろwww
・・・え?もっとひどい?www」
と笑わせたらこっちのもの。
結局人間というのは、自分から変わろうと思わないと変われない。
「発狂する自分」を客観視すると、その愚かさに気付いてもらえる。
実はこれ、子育てにも使える。
ブチギレ発狂マックスの娘の再現を、娘の機嫌がいいときにしてみる。
「いやだ!」と叫びながら床を何回も足でドンドンしたり床に崩れ落ちたりしてみる。
なるべくみんなに見てもらって、「いつもの次女じゃん!」ってツッコんでもらう。
これも、本人が笑えば成功。
急にはなくならないが、程度は緩和されていく。
夫婦関係も子育ても、人間関係の改善にはユーモアが大切なんだと思う。
新しく生まれた感情
妻の変化を感じると、私にこれまで感じたことがない感情が生まれた。
「愛おしい」という感情だ。
高校生までによくある
「ドキドキしすぎて心臓が口から飛び出しちゃいそう❤」
みたいな感情ではなくなった。
「大切にしてあげたい」「幸せにしてあげたい」と相手を思いやる感情になった。
もしかすると、冒頭に紹介したカップルはここに至っていないのかもしれない。
お互いの生い立ちについて話したことがない夫婦は、私の周りにもかなり多い。
私たちは生い立ちを知ることの重要性をよく理解しているので、すぐ聞いてしまうのだが、
「なんでそんなこと聞くの!?旦那にも話したことない」
というようなリアクションが返ってくることが多い。
社会人になって、ゆっくり話す時間が取れない、そもそも関わりたくないという状況であれば、さっさとカウンセリングに行った方がいい。
幸せな人生のリスタートは早い方がいい。
幸せになる勇気をもってほしい。
正論のぶつけ合いだけでは相手は変わらない。
お互いの生い立ちを理解せず、愛おしいという感情すら生まれていないのであれば、夫婦はまだスタートラインにも立てていないのかもしれない。
私たちもこんな幸せな未来が待っているとは想像もしていなかった。
冒頭のカップルも、きっとここから始められる。
そしてお互いのことを思いやれる幸せな夫婦にきっとなれる。
私たちがそうであったように。
<今回のポイント>
相手の幸せのために自分を変えられる関係性を築く
人間関係の悩みや生きづらさを抱える人の背景に「親からの愛情に対する不信感」がある場合が多い
「絶対的な存在」だった親から脱却しないと幸せにはなれない
自分と相手の生い立ちを深掘りする
過去と決別し、新たに2人で生きていく決意をともにする
神旦那もベテランパパのクローンも現れない
理不尽さを再現して自分の愚かさに気付いてもらう
愛おしいとは「大切にしてあげたい」「幸せにしてあげたい」と相手を思いやる感情
2人だけで改善できなければカウンセリングに行く
今回の記事で、幸せな関係を築ける夫婦が増えてくれると嬉しいです。
またねー。
ベテランパパ
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