ジョッキーってこんな人たち〜藤岡佑介「JOCKEY × JOCKEY」を読んだ。(ジョッキー対談集)
「JOCKEY X JOCKEY」トップ騎手11人と本気で語る競馬の話
JRAの藤岡佑介騎手がホストを務め、武豊、クリストフ・ルメールを始めとしたトップジョッキーたちとの対談をまとめたものです。
だいぶ前に読み終えてはいたのですが、最近読み返してみました。
ネット競馬のコンテンツを書籍化したものなので、実は無料でかなりの部分読めるのですが、武豊との対談は書籍化にあたり特別収録したもので、この本じゃないと読めないようです。
この本の何がポイントかというと、現役騎手がホストとなり、次々とトップジョッキーをゲストに呼び、騎手同士で気心が知れた中とはいえ普段なかなか話さないような、レース中に何を考えているとか、そもそもレースに対して、競馬に対して、どういう気持ちで臨んでいるのか、色んな立場の騎手の考え方について対談の中で明かされている、というところでしょうか。
こういう対談集は、ありそうでなかった気がします。
こういう対談が可能なのは、藤岡佑介騎手の人柄によるものな気がします。
いかにも優しそうな性格に見える藤岡騎手(↓)。
藤岡騎手が声を掛ければ、騎手仲間は快く応えてくれるのかも知れません。
福永騎手との対談
対談の中身ですが、みな、それぞれの面白さはあるのですが、改めて読み直してみて、この記事では福永騎手との対談で面白かった点を2つだけ挙げたいと思います。
1.スタート上手の秘訣については、お金を積んでも・・
競馬ファンの間では、福永騎手のスタートの上手さは有名ですが、この対談でもこの話題に触れている部分があります。
藤岡騎手が、スタートのコツを教えてもらえるなら、「お金を積んでもいいくらい。」と言うのに対し、福永騎手は、引退してからならいくらでも教えてあげる、とはぐらかします。
対談は和気あいあいの雰囲気で行われますが、このへんはさすがにシビア。
騎手にとっての職人技、長年の試行錯誤を経て掴んだコツは企業秘密、そうやすやすとは教えられないのでしょう。(このへんは、競馬ファンとしては騎手の間で馴れ合いがないと言うことで逆にホッとしたりもしました。)
2.茶化すような野次で、発信が嫌になった・・
これは、福永騎手がチャンピオンズカップでケイティブレイブに乗り、11着に敗れた後にコメントを求められたときに、「直線に向くと西日が当たって、それを嫌がっている感じだった。」と答えたというのですが、福永騎手の意図としては、こういう要因で馬が力を発揮できないこともある、という有益な情報としてファンに伝えたかったそうです。
にも関わらず、その後、パドックでファンから「今日は西日は大丈夫かぁ〜?」と茶化すような野次が飛んできた、ということで、福永騎手としては良かれと思って行った情報発信に対するリアクションがこんなことになるのなら、「もういいや。」という気持ちになってしまったそう。
こんなふうに茶化されるなら、関係者だけに話せばいいか、という気持ちになってしまったそうです。
・・この対談は、2019年3月に行われ、この時点で福永騎手は、自分達ジョッキーの責務と思い積極的に行ってきた情報発信について、今後はジョッキー人生の残り時間も考え、自分が楽しむことに専念したい、と話しています。メディアとの距離を少し取りたい、とも話していました。
心無いファンの野次が情報発信のモチベーション低下に繋がってしまったのだとしたら、とても残念。。
現役ジョッキーの情報発信について
しかし福永騎手、実際にはカンテレのコンテンツを通じて今もかなり積極的に情報発信してくれています。
■教えて!福永先生
このコンテンツー「教えて!福永先生」は、2021年の主要G1(天皇賞・春や、ダービー、有馬記念、安田記念など。)の直前に配信されていたもので、現役ジョッキーの目から、出走馬の位置どりや展開についての見解を語ってくれるもの。
出走馬の脚質や癖、ライバル騎手の性格や騎乗スタイルに対するジャッジは的確で、この配信は必ずチェックしていました。(今年はG1毎に見解を話すような形ではなく、配信回ごとにテーマを設けて話すような形になるそう。)
「メディアと距離を取りたい」と言っていた福永騎手が、継続してこのような形で情報発信してくれるのは、入場制限が続く中でファンに対してできることをやってくれているのかなと、ありがたいと思っています。
また、藤岡騎手の対談も引き続きネット競馬で続いており、去年大ブレイクした横山武史騎手や、コントレイルやラヴズオンリーユーの矢作調教師、今年開業予定の蛯名正義調教師などとの対談も読むことができます。
競馬ファンとして、楽しめるし、勉強になる(=新しい角度から競馬を見ることができるようになる)ので、是非つづいて欲しいコンテンツです。
追記:藤岡兄弟対談
この本の出版以降に実現した、佑介騎手と実弟で先日逝去された康太騎手の対談もネット競馬で見られるので、リンクを貼っておきます。
康太騎手、安らかに。