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中央移籍前の安藤勝己の貴重なエピソードが豊富〜狩野洋一「天才騎手」を読んだ。
またしても古めの本のご紹介。
狩野洋一著「天才騎手」。1999年出版の本で、安藤勝己元騎手の中央移籍前のエピソードや、東海地区の伝説的ジョッキー、故・坂本敏美騎手のエピソードが豊富。
ドキュメントと思って読んでいたら、あとがきで「内容はフィクション」と説明がされている。ただ、ほぼドキュメントと思っていいのではないだろうか?(この部分は実話、この部分はフィクション、と明確に説明はされていない。)
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騎手名、競走馬名はどれも実名、レース内容やその結果も事実の通りだと思うので、おそらく、アンカツが喫茶店の女の子とデートしたり、プロポーズするシーンが描かれているところが、フィクションにあたる部分なのかもしれない。(ただ、それも著者がアンカツへの取材で聞いた話を元に書いているのかも?)
ある意味、デートのシーンが自分にとっては貴重だった。。
アンカツが笠松時代に騎乗していたオグリキャップやフェートノーザン、トミシノポルンガとのエピソードや、それより過去に遡り、どのように騎手を志したか、実兄である安藤光彰(アンミツ)とともに成長した見習い騎手時代、新人時代の話も貴重。
また、今はなくなってしまった地方競馬場(大分の中津競馬場など)に関する描写も出てきて、なんだか以前に読んだ山口瞳の「草競馬流浪記」を読み返したくなった。。
作品の構成としては、1995年の春の牝馬クラシック戦線に、地方所属のまま挑んだライデンリーダーのオークスに臨む場面が冒頭に描かれ、そこから過去に戻り、アンカツの成長物語が描かれ、ラストにオークスの結果が描かれる形となっている。
1995年といえば、個人的に競馬に入れ込んでいく時期だった。
ライデンリーダーのこともよく覚えている。
ただ、オークスでなぜ1番人気となったのか、当時初心者にも関わらず、何か不可解な気持ちがしたものだった。適性的に無理だろう、と当時思った。
しかしその気持ちは、この本を読むことで、「ああ、多くのファンの夢がライデンリーダーとアンカツに託されていたんだな。」と思えた。
あまり万人向けにおすすめできる本ではないものの、競馬ファンにはおすすめできます。
(本書の中で紹介される、昭和58年の坂本敏美騎手の勝率.341・連対率.515に驚きました。著者が考える「天才騎手」は、坂本敏美、安藤勝己、武豊、福永洋一、この4人だそうです。)