ウオッカ◎はドストエフスキーが乗り移った?〜「孤独の◎は永遠にー成駿伝」を読んだ。
2016年8月に亡くなった競馬評論家・清水成駿さんを偲び作られた本、「孤独の◎は永遠にー成駿伝」を読み終わった。
亡くなった当時の東スポ、とってあった。
東スポに連載されていた「馬単三國志」は毎回楽しみにしていた。
この連載は2003年から始まったそう。しかし、それ以前、競馬専門誌「一馬」に所属していた頃から、独自の予想理論で人気薄の馬に敢然と本命印「◎」を打ち、競馬ファンに人気があった。
競馬ファンのみならず、業界の周囲の人にも慕われていたのだろう。じゃなければ、こういう本は刊行されないと思う。
この本では、成駿氏の印の根拠が語られる競馬コラムが多く収録され、また、生前に交流のあった競馬評論家が氏との思い出を語っている。
氏の予想では、この本にも再三出てくるが、1998年のダービー、14番人気・ボールドエンペラーを本命にした予想(結果2着)が有名。
実力馬であり、結果勝ち馬にもなったスペシャルウィークを本命にし、相手の一頭(印で言うなら△)としてボールドエンペラーを拾う予想ではない、ボールドエンペラーに◎を打ったところが、なかなか他の人にはできない、氏ならではの攻めの予想だと思う。
あとは、2007年のダービー、牝馬のウオッカ(3番人気、単勝10.5倍)本命。
この本に、ウオッカ本命の根拠を解説するコラムが収録されていた。
ここからどのようにダービーの予想につなげていくのだろう、と読者の方が心配になる書き出し。(氏の文章は、こう言うのが多くて、好きだった。)
このコラムで、氏はこのあと、ドストエフスキーを救う女性(『賭博者』の速記者であり、のちに妻となるアンナ)の名を出し、こう続ける。
この後に、ようやくウオッカ本命の根拠が語られる。
この年の牡馬・牝馬の混合戦の結果から、ダービーでライバルとなるフサイチオウオーやアドマイヤオーラを相手にしても十分勝負になる、といくつかの傍証を書き連ねていく。
正直、印がどう、というよりも、成駿氏の文章に惹きつけられ読んでいたと思う。
個人的には競馬新聞の印だけを見てもしょうがないので、印とセットで文章を読み、なんとなく響くところがあってようやくその予想を参考にする。
なので、文章を重視している。
最近、東スポに田原元騎手が登場するようになった。
このコラムもけっこう好き。
去年のチャンピオンズカップのソダシ無印は、「え?なんで沢尻エリカ?」「反抗期の不良娘?」と見出しに引きつけられてしまった。
あと、中村均元調教師のコラムも好き。(ボールドエンペラーを管理していた調教師であり、この成駿氏の本にも登場する。)
競馬を始めていた頃はエイトを買っていたけど、成駿氏の時代から、東スポに乗り換えてしまった。そういうファンは、結構いるのでは?
ところで、最後にこれは余談だけど、成駿氏が亡くなったのは2016年の8月4日。
この業界の人は、ダービーが終わると力尽きて亡くなってしまうことが多いような気がする。(成駿氏は、この年のダービーでマカヒキを本命にし的中させ、その後力尽きてしまった。)
なんとなく気になったので、少し調べてみると、
作家の山口瞳さんは、1995年8月30日に亡くなっている。
同じく作家の岩川隆さんは、2001年の7月15日に亡くなっている。
演出家の武市好古さんは、1992年の8月6日に亡くなっていた。
英文学者でレーシングプログラムに「馬名プロファイル」を連載していた柳瀬尚紀さんは、2016年の7月30日に亡くなっている。
作家の藤島泰輔さん(ランニングフリーの馬主さん)も、1997年の6月28日に亡くなっている。
同じく作家の虫明亜呂無さんも、1991年の6月15日が命日だった。
そして、社台グループの創業者、吉田善哉さんも、1993年の8月13日に亡くなっている。
どうしてだろう。
「今年のダービーまではなんとか・・」と生きる気力を振り絞るのかもしれない。
もちろん、競馬好きの人、みんながみんな、ではなくて、
寺山修司さんは、1983年の5月4日、ダービーの直前に亡くなっている。Wikipediaにも書いてあるが、ミスターシービーと吉永正人の勝利を、報知新聞の競馬コラムで「確信している。」とまで書いていたというのだから、見ることが叶わなかったのはさぞ無念だっただろう。。
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